つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

静嘉堂の曜変天目

朝起きては論文を読み書きし、昼は患者を診察し、夜はレクチャーの準備や撮影をする。そんな生活ばかりをしていると、気がつけば生活のすべてが仕事に占拠されてしまう。そのこと自体は大きな苦痛になっていないものの、少しばかり疲れを感じることもあるし…

English Writing in the Sciences

いまの職場ではボスから自己研鑽に関するさまざまなtipsを教えていただいている。その一環で、異動間もないある日に英語力を磨く方法としてCourseraの "Writing in the Sciences" を受講することを勧められたのだが、その当時は新しい職場に慣れるのにも必死…

タイムカプセル

茨城県土浦市の小学校に通っていたが、6年生のときにタイムカプセルを埋め込もうという話がクラスで出てきた。タイムカプセルを埋め込むこと自体には当時の吾輩もまったく反対でなく、むしろ面白そうだと思っていたのだが、「いつこのタイムカプセルを開ける…

ベンチャー企業

雷門を横目に、人形焼きの甘い匂いや雷おこしを売る快活な声を通り抜ける。そのまま路地裏に入っていくと、そこには一軒のコンビニがある。コンビニの周りには使われていないビルなどが雑然と立ち並んでおり、あまり人気がない。地図で目的地を確認し直すと…

「バイキン屋。」も軌道に乗ってきた?

2023年8月に「バイキン屋。」をやり始めてから約半年、YouTubeチャンネルの登録者数は340名くらいに留まっていて、こちらはまだ収益化できていない状況ではあるのだが、1日1~2人くらいのペースで登録者がじわじわ増えている状況である。なんやかんやで視聴者…

けむり

恐らくだが、この世に完全無欠の喫茶店は存在しない。というのも、心を深く沈められるような落ち着きのある喫茶店にはたいてい灰皿があるのだ。完成度の高い喫茶店ほどにこの手の問題を抱えているものだから、評判の良さげな喫茶店に行くときは細心の注意を…

Strategic positioningとorganizational capability

最近はいろいろな場所に顔を出しては、「戦略家ごっこ」をやっている。自分は経営学をちゃんと学んだことがなく、あくまで図書館で本を乱読して身に着けたものであるから、「戦略家」というには程遠く、せいぜい「ごっこ」程度のお遊びなのだ。いろいろな場…

新たなる椅子

News Picksパブリッシングから出版されている書籍には面白いものが多い。どうにもならず絶望するしかない現代社会において、いかにして生き延びるか。理想論に奔ることなく、地に足のついた知恵を授けてくれる書籍が多いのだ。なるほど、これから引退するシ…

年末年始のツワモノたち

大学病院の給料は極めて薄給である。いまでこそポストに就いているので、東大病院や筑波大病院にいた頃よりも待遇が圧倒的に良くなっているとはいえ、やはり大学病院ならではの薄給であることに変わりはない。その上、大学病院は難度の高い症例を集中的に引…

誰とは言わぬ、プリンシプルのある人々

アカデミズムに身を置く立場ゆえに、様々な人々のレクチャーを聴く機会がある。各業界の新進気鋭の若手によるレクチャーには、新しい知見が数多く散りばめられており、これはこれでなかなか楽しいものだ。「明日の診療に生かせるトリビア」を学ぶと、ちょっ…

クリック・ケミストリー

New England Journal of Medicine (NEJM) は言うまでもなく臨床医学雑誌である。しかし、時々 Clinical Implications of Basic Research と称して、臨床応用を期待される基礎医学分野の知見が簡潔に紹介されていることがある。正直なところ、いくら分かりや…

Treatable,されど untreatable

地方病院での総合診療科で勤務していると、入院する患者さんの半分が誤嚥性肺炎である。誤嚥性肺炎が半分、尿路感染症が1/4くらい、その他が1/4くらい。もっとも、誤嚥性肺炎も尿路感染症もいずれも除外診断だから、後から違う病気が判明することも少なくは…

リスクモデルと個々の患者

学生時代、東大病院の細菌検査室によく通っては恩師のT医師から色々な臨床にまつわる教えを受けていたが、その中で特に印象に残っている教えとして「スコアリング・ツールを使えば、目の前の患者が病気を抱えているかの目安にはなるかもしれないが、実際に識…

吾輩のサムネイル革命

YouTuberをはじめてから約4か月になる。マニアックな内容ばかりを扱っているせいでなかなか視聴数は伸びないものの、チャンネル登録者数は240名くらい。扱っている内容の専門性の高さを考えれば、そこそこ善戦している方かもしれない。ちょうど時期を同じく…

手水場の紅葉を眺めて臥せる床

茨城県内で勤務するようになってからは比較的健康に過ごしているのだが、久しぶりに我が家の手水場に紅葉を散らすことになってしまい、多忙による五臓六腑の負担を実感することになった。少しばかり休養する必要があると思い、最近は仕事がない時は努めて臥…

意志と表象としての世界について

読書の中でも、哲学書は敬遠されがちである。言葉遣いが難しいし、分厚いし、読んでいると堂々巡りしているような気持ちになる。なかなか実用的な教訓を得られないということで、結局手が伸びてしまうのはハウツー本のように即効性のある書籍だったり、小説…

二十万といえども

最近、良い話があった。大学病院の勤務医は安い給与を補填するために、往々にして他の病院に外勤、つまりはアルバイトに行っていることが多いのだが、その関連で高額の日勤案件を紹介していただいたのだった。やはり肩書きが「専攻医」なのか「臨床助教」な…

医療の葛藤

医者になってからというもの、日々の仕事が鬱との戦いである。毎朝起きては、自分自身に「今日はやれるか? —— あぁ……今日はまだ大丈夫だ」と自問自答しながら敷布団を折り畳むところから1日がスタートする。幸いにして、初期研修中のごく半年と後期研修中の…

「いき」という、和のエッセンス

原色が三つであることを証明するのは難しい。色の専門家であればなにかしらの知見があるのかもしれないが、少なくとも非専門家からしてみたらまったく想像もつかない。このように数多くのバリエーションの中から数少ない本質を拾い上げるのは極めて困難な作…

大きな志。そして小さな日常。—— 司馬遼太郎

文豪の書いた本を読もうと思い立ったとき、何から読み始めたらよいものか迷ってしまうことがよくあるだろう。自分も大学生時代に三島由紀夫の小説をよく読んでいたのだが、読もうと思い立ったときに何から読めばよいものか、最初は途方に暮れたものだ。 身近…

心の奥底に一杯の茶

「怠慢」といえば、自分ほどこの言葉が相応しい人間は他にいないだろうと常々思う。生まれてからずっと怠慢な生き方を続けてきていただけに、このことには自覚的であり、新しい職場に赴任する際には「自分は怠慢である」と繰り返しアピールすることを忘れな…

なぜ後進との学会準備が捗らないのか

医者の三大業務といえば、臨床・研究・教育である。このうち、自身の適性を教育 ≥ 研究 > 臨床と認識しているわけだが、比較的得意な教育においても悩みを抱えることがある。教育のどこが難しいかというと、もともとの士気が高い後進を育てて世界へと飛躍さ…

新鮮なる古習慣

東京医科大学茨城医療センターに赴任してからの大きな変化をひとつ挙げるとしたら、1週間が異様に短く感じられるようになったことだろうか。どうしても創業期の診療科だから、マンパワー不足による予測不可能な事態も度々生じるわけで、日々ピンチに直面して…

久しぶりの対面LIVE!

バイキン屋さんは(バイキン屋さんを名乗るだいぶ以前から)オンラインでのレクチャーをたくさんしてきたのだが、やっぱり一番好きなのは対面式のレクチャーである。というのも、「抗菌薬物語」の原型だったレクチャーは(しつこいかもしれないけど)東大病…

くわがた

騒騒しい夏が終わった。それでも朝が忙しいのは秋も変わらずだ。普段通りに論文を読んで、遅刻ギリギリで玄関を蹴破るように家を出ると、目の前に虫が腹を見せてジタバタしている。ゴキブリか、それとも季節外れのカナブンか。なんとなくカナブンっぽいと思…

The Lab:研究倫理講習会に見るリーダーの激務

自分は大学病院ばかりを梯子しているようなキャリアになっていて、意味の分からない経歴になってしまっているわけだが、こうやって色々な大学病院を転々とするのもなかなか面白いなと思い始めている。というのも、例えば研究倫理講習会ひとつをとっても、大…

YouTuberとしての技量を上げねば!

「バイキン屋。」としてYouTuber活動をはじめて3週間。毎週土曜日 or 日曜日に「抗菌薬物語シリーズ」を投稿し、その合間に定期的に「質問箱」を投稿するようになったわけだが、段々とAviUtlでの動画編集作業にも慣れてきたし、少しずつ集めてきた効果音のス…

まったく、今どきの若者は……

筑波大学から東京医科大学に異動する頃から、筑波大学などの意欲ある学生さんを集めて、論文の読み方やLetter to the Editorの執筆方法を定期的に教えることにしている。学生さんに気に入った研究論文を適当に持ってきてもらって、その論文の問題点や周辺事…

生命科学から人生を捉える

つくば市立中央図書館の「返却本コーナー」を結構気に入っている。予約待ちの本がそこに並ぶことは絶対にありえないのだが、人気の高い本が並んでいることが多いからだ。図書館に行くとつい、自分の読みたいジャンルの本棚のところに向かってしまうことが多…

たとえ「良医」になれずとも

聖路加のベテランの先生の書かれた、患者さんとの心温まる交流の物語集『内科医の私と患者さんの物語』(医学書院)を読んだ。がん末期の患者さんが家族の結婚式に参加したいということで、聖路加国際病院の中で模擬結婚式を挙げた話などを読んでいると、自…