つくばホスピタリストの奮闘記!

筑波大学附属病院 病院総合内科に所属する専攻医によるブログです。まだ創設間もない病院総合内科での活動を発信していきます!!

医学生の間にガチ勉するのなら

こんにちは。COVID-19流行の荒波に飲まれているItoです (ItoがCOVID-19と本格的に戦い始めたのが2020年1月23日のことだったので、今日からあと1か月で1周年記念になりますね……)。今週の前半は、外勤中に発生した飲み会クラスターの対応に追われることになったり、本拠地で病棟管理を1人でやっている日に新患を7人受け持ったりと、かなりしんどい日々でしたが、周囲のご協力もあって病院総合内科も何とか持ちこたえている状況です。お忙しいところにも関わらず、当科の負担を肩代わりしていただいている皆様に、この場を借りて感謝申し上げます。また、飲み会に行きたいところを我慢していただいている一般の皆様も、ありがとうございます。皆様が「飲み会などの集まりに決して行かない」というアクションを起こすだけでも、医療現場に対する大きな支援になります。閉塞感の続く日々かとは思いますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

近況はここまでにして、前回のブログでは感染症講義の話をしたのですが、実はその講義には続きがありました筑波大学の学生さんが何人か講義室に残っていて、「医者になる準備として、学生時代どう過ごすのが良いか」と質問をいただいたので、1時間ばかり先輩風を吹かせながら補講っぽいことをしていました。医師経験4年目のクセに偉そうなことを……とは、内なるItoの声。

 

まず、医師国家試験やOSCEで学んだことが実臨床で役に立つかという問題。答えは、half yes, half noといったところでしょうか。国試をギリギリで合格するようなラインだと正直なところ役に立たないと思います。ただ、お釣りが出るレベルで勉強しておくと、common diseaseを中心に診ている初期研修医の間はあまり役に立たないかもしれませんが、rare diseaseも真正面から診ないといけなくなる後期研修医以降はそれなりに役に立ちます。「一度も聞いたことのない疾患」と「忘れたけどどこかで聞いたことのある疾患」との差は、恐怖心を拭えるという意味では結構大きいです。知識の再インプットも割と楽ですしね。

 

身体診察は患者さんを診る上で基本中の基本です (というか、診察しない臨床医は臨床医と呼ぶに値しません)。OSCEのレベルをすっ飛ばして検査依存の医師になってしまうと、診断出来ない疾患が出たり (感染症なら帯状疱疹前立腺炎など)、無駄な医療費がかかったりと、結構な不利益になります。逆に身体診察が上手ければ鑑別診断リストの質が高くなるので、検査プランを効率よく組み立てることができて気持ちいいものです。あと、お腹を触って一瞬で虫垂炎を診断する外科医の先生ってカッコいいですよね! 丁寧にお腹の診察を繰り返していると、虫垂炎 (非穿孔例)、回盲部炎、憩室炎の三者を診察だけで結構区別できるようになるので、上を目指すのならたくさん患者さんのお腹を触ると良いです。そして、今の話に少しでも心が動いた学生の皆さんには山中先生の『医学生からの診断推論』(羊土社) を強くお勧めしておきます。山中先生の本は、読んでいるとグイグイ引き込まれて元気になることが多いです。 

それに、聴診器を胸に当てることで凄く安心する患者さんも中にはいるので、診察手技自体が治療的な価値を持つこともあるんですね。逆に胸の痛い患者さんに聴診器を当てることもなく「プシコ!」(心の病) と言って帰すのはご法度ですぞ!

 

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OSCEや国試は実臨床に役立つ??

 

そういうわけで、学生さん、真面目に勉強しても損することはまずないので安心して勉強してください (勿論、勉強する時間を別のことに投資することで開眼する学生さんも一定数いるので、自分の人生観に合わせて上手くやっていただくのが良いです)。ここまでをベースラインとした上で、もっと上を目指したい学生さん向けの勉強法も紹介します。COVID-19の流行期なので、出来ないことも多いですが、それでも最近はZoomなどの遠隔講義も発達してきているのでやりようはあるハズです。

 

1.学会や勉強会に参加してみる
学会や勉強会といってもピンと来ない方が多いかと思いますが、アンテナを高くしておくとCOVID-19流行下でも日本全国でひっきりなしに学会や勉強会が開かれているのが分かります。対象は大抵の場合は医者ですが、初期研修医やプライマリケア医向けのものも少なくないので、そういったものに参加するのが良いでしょう。学会であれば教育講演が該当しますし、勉強会の情報は各種メーリスなどに入っていれば自然と回ってくるものです。そして学会も勉強会も、学生さんであれば無料で参加できることが多い (羨ましい!!)。当然ながら、学生さんにとって難易度は高めなのですが、臨床医に要求される事柄が薄々と分かってきますし、医師国家試験で高得点をとれるだけでは不十分であることも分かってくるかと思います。参考までに、Itoは日本病院総合診療医学会の教育講演やIDATENメーリスで流れてくる勉強会あたりが丁度良いのではと考えています。

 

2.医師向けの雑誌を読んでみる
学会や勉強会よりも少しハードルが上がるのですが、プライマリケア医向けの商業誌を読むのも骨太な実力が身につくと思います。具体的には、医学書院なら「medicina」や「総合診療」、文光堂なら「M.P」などが該当するのですが、どの雑誌を選ぶかは好みの問題ですね。長い目で見ると執筆者が重複してくることが多いので、本当に好みの問題です。学生の間にこの手の雑誌を読み始めると、最初の半年はチンプンカンプンなのですが、それ以降は段々と内容が理解出来てくるもので、初期研修2年間に対してもお釣りが出るくらいの知識はつくかと思います。欠点としては、医師国家試験で議論の分かれる問題が出題された時に、色々と勘ぐって誤答を選んでしまう可能性があることでしょうか (日本のガイドラインと欧米のそれとでズレがある時に起こりがち?)。本棚が溢れてしまうことがあるのも地味に困る欠点です。

 

ここまで課金コースの勉強法でしたが、最近は無料でも結構勉強できる環境が整備されています (なんとまぁ、いい時代に生まれたもんじゃのう)。金銭のかからない方法としては、西伊豆カンファや医学界新聞の記事を使って勉強したり、医学部図書館の本を片っ端から借りて勉強したりするのがいいと思います。

 

3.メンター (お師匠様) を持つ
一番 (圧倒的に) ハードルが高いのがこちら。だけどリターンも大きい。学生時代に自分のお手本になるような先輩医師を見つけて師事出来ると、大きく飛躍するきっかけになることが多いです。独学でもかなり力を伸ばすことが出来ますが、それでも独学だけだとどうしても未知に挑戦する機会を掴めないという問題点が生じるんですよね。学生の身の丈に全く合わないような挑戦の機会をモノにしたい方は是非メンターを積極的に探すといいです。具体的な探し方としては、勉強会などに参加して出会いに賭ける方法もありますし、ラブレター (?) を送って弟子入りを願い出る方法もあります。礼儀がしっかりしていれば、人生色々と許されてしまうものです。ただ、どうしても出会いというのは偶発的なものなので、日頃からしっかり勉強して将来のメンターのお眼鏡にかなうくらいの実力を備えておくのが一番大事なことかと思います (日頃の努力が必ずしも評価されるとは限りませんが、それでも顔に染み付いてしまった努力というのは見る人が見たら分かってしまうものです)。

 

4.COVID-19が収まり次第、病院見学をたくさんする
これは実力をつけたい人向けというよりは番外編ですね。病院見学をたくさんすると、出会いが増えます。地方病院の研修プログラムは案外、都心の有名プログラムよりも充実していることがあります。それに、ウマの合う指導医を見つけられるかもしれません。病院見学のついでに日本中の名所を旅するのも非常に有意義です (詳細は省きますが、色々な意味でお得です)。医師になると学会でもない限りは旅行なんてする暇がなくなってしまいます。あと、病院見学をする場合は複数日見学していくことをお勧めします。どんな病院にも美点・欠点があるもので、1日見学なら欠点を隠蔽することも容易いのですが、複数日見学だと欠点が徐々に露呈するもの。その露になった欠点が自分の性格などに照らして許容できるものであれば、その病院は “自分に合った病院” と考えられるわけです。あとは研修医の先生の目の下にどれくらいクマが出来ているかもよく見ておくといいです (今はCOVID-19流行期なので、目の下にクマが出来ている医者が圧倒的に多い状況ですが……)。参考までにどうぞ。