つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

ホスピタリスト、ただいま査読中!

こんにちは、Itoです。NHK語学講座の長寿番組「実践ビジネス英語」が終わってしまうと聞いてショックを受けています。このラジオ講座はもちろん英語の勉強にもなるのですが、いま海外で生きている人々はどんな風に物事を考えているかを知るにも良い教材でした。「実践ビジネス英語」を聞いていると、10年後の日本人はこんな価値観を持っているのかなぁ、もしそうだとすれば日本の未来も捨てたもんじゃないかもしれないなぁ、なんて感じるわけですよ。英語の勉強というよりは、未来の生き方の予習 (わくわく)。東大医学部の同期も何人か聞いていて、テキストで扱われている話題のことで盛り上がったこともありました。発売日に生協書籍部に行くと、同期も買っていて「お前もかよ!」って。そんな教材が日本に存在していたこと自体が奇跡的だったわけですが、いやぁ、まことに残念。

 

さて、仕事はというと、COVID-19流行の酷かった2021年1月上旬はフルパワーを越えて稼働していて、そんな全力疾走状態も少しずつ落ち着いてきたかと思っていたのですが、COVID-19の流行が下げ止まらずにまた少しずつ悪い流れになりつつあるのかな、と感じています。Itoの本業は病院総合内科での診療ですが、このような危機的な状況を受け、感染対策室からの要請で再び感染対策のロジスティックス業務に戻ることになりました (年度初めにも数か月ばかり感染対策室に所属していた時期があった)。感染者が発生した場所でのゾーニングとか、感染疑い症例の疑い度合いの評価とか、感染者との接触者の洗い出しとか、色々なことをやるわけです。あとは物資の確保……日本人が苦手とする仕事ですよね (第二次世界大戦の本とか読んでいると、ね)。ただし、病院総合内科も人手が間に合っていないので、病院総合内科での診療も継続、二足の草鞋を履いている状態。結構大変ですが、10年後に別の病原体が流行した時に指揮を執るのはItoの仕事なので、ここでのダイナミクスを自分なりに解釈を持ちながら目に焼きつけておきたいところです。

 

ということで、仕事が落ち着いていない状態なのですが、仕事以外も全く落ち着いていない。査読の嵐なんでございます。査読というのは、他の人が書いて雑誌に投稿した論文を読んで、論評して採用か不採用かを雑誌編集部に意見するコト。要は医学雑誌の門番。

 

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文法ミスの多い論文の査読はイライラする! (画像はイメージです)

 

病院総合内科では今年度から積極的に英語論文を出していて、だいたい24本くらいPubMed収載誌に通しているのですが、10本越えたあたりから査読依頼が来るようになっています。なお、「だいたい24本」のところはもう数えるのを諦めているので正確である自信ありません。それで、2020年夏頃から査読依頼が月1本くらいで来ていたのですが、秋を過ぎたあたりから2週間に1本に増え、最近は1週間に1本はやってきます。とにかく多くて大変。最初の頃は症例報告の査読とかで、多くは20ページくらいの論文だったので割と気楽だったのですが、このところはliterature reviewとかmeta-analysisの査読が増えてきて、1回あたり100ページ近く読み込んでいます。ボランティアでね。

 

査読のやり方? そんなの知りません。お師匠様と1回だけ一緒に査読したことあるけど、上級医の監督下でやったのはその1回だけです。それ以降20本くらい査読していますが、完全に試行錯誤。そもそもItoのような駆け出し研修医に査読依頼が来る時点で色々とオカシイ。だけど、「やったことがない」というのは挑戦しない理由には多分ならなくて、むしろ未知を楽しむくらいの心構えでやっています。それに、「普通」から逸脱していく自分を想像するのってなんだか愉快じゃないですか? 今後は初期研修医の先生たちも交えて査読やってみたいなと思っていますが、もう少しItoの経験値が上がってからでしょうね。まだ教えられるほどのレベルになっていないので。

 

査読には良い面・悪い面、どちらもあります。基本的には面倒臭い仕事をボランティアでやるので合計マイナスな気分ですが、好奇心さえあれば合計ちょいプラスに振れるかもしれません。良い面としては、最新の研究成果を半年早く知ることができること、ロジックや英作文の練習ができること、でしょうか。悪い面としては、ボランティアでギャラが一切出ないこと、忙しい中で数時間程度持っていかれること、ですね。要するに、好奇心が勝らなければただただ面倒臭いだけのお仕事です。

 

そんなわけで、査読を拒否する方も結構いるみたいです。ただですね、自分も論文を出す時にたくさんの査読者の方にお世話になっているわけですよ。だから、恩返しという意味で、Itoにとっては査読しないという選択肢はないのかな、なんて思っています。最近はジャーナル側もそれなりに対策してくれているみたいで、査読することで自分の研究者IDと査読実績を紐付けしてくれるような動きもあるようです (e.g., publons)。うーん、履歴書に書ければいいんだけどなぁ、ほら、留学する時に使えるように、とかさ。

 

最近はBMJとか、Medical Virologyみたいなハイレベルのジャーナルからの依頼も来るようになりました (どちらも縁もゆかりもないハズだが……)。我らが病院総合内科、まだ日本では認知度が低いようですが、世界からは少しずつ認識されつつあるのかな (言い過ぎ!)。年度初めは英語のメールが来たと思ったらハゲタカジャーナルからの迷惑メールだったというのが大半でしたが、最近の英語メールは病院総合内科宛ての正式な仕事の依頼が1-2割くらい混ざるようになってきました。査読よりももっと重大な仕事のメールも何通か受け取っていますが、その話はある程度こちらの目途が立ち、交渉がまとまってから公表することにします。何か凄いことが起こりそうなのですが、何も起こらない可能性もあるので…… (というか、何も起こらないでしょうね)。