つくばホスピタリストの奮闘記!

筑波大学附属病院 病院総合内科に所属する専攻医によるブログです。まだ創設間もない病院総合内科での活動を発信していきます!!

研修医の先生に一番伝えたいと思っていること

こんにちは、Itoです。暖房を使っていたのが、最近は窓を全開にして扇風機を回すようになりました。季節の変わり目を実感しますね。変わったこととして、ItoはUp to Date®のヘビーユーザーであることを自認しているのですが、Up to Date®を運営するWolters Kluwer社から文房具やトートバッグなどの入った文房具セットが送られてきました。ロゴ入りのボールペンがカッコいいっす……。

 

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Up to Date®特製文房具!

 

さてさて、新しい年度ですね。研修医の先生がローテしてくれていることですし、今回は教育にかける意気込みをちょっと綴ろうかと思います。

 

病院総合内科はまだまだ創業間もない零細診療科です。だから、研修医の先生や学生さんがローテートすることも他の診療科に比べると少ない。あるいは、敢えて希望しないとローテート出来ない診療科という扱いなのかもしれません (管理職でないので分かりませんが)。それでも、年間に数人程度の研修医の先生がローテートしてくれるので、病院総合内科で何を教えられるかを真剣に考えることが多いです。たった3-4週間で何を教えられるだろう、と。

 

病院総合内科には様々な疾患の患者さんが入院します。肝硬変の患者さん、心筋症の患者さん、脳出血の患者さん……だけど、肝硬変のマネジメントは消化器内科で学べばいいし、心筋症や脳出血ならそれぞれ循環器内科や脳神経外科で学べばいい。畢竟、医療の各論的な話は各診療科に任せておけば十分であろう。では、病院総合内科では何を教えればよいのだろう。マルチモビディティの話? 地域全体でのケアの話?

 

この問題に対して、Itoは他の先生方と少し違う意見を持っているのではないかと自分自身感じています。すなわち、Itoは病院総合内科をローテートする研修医の先生に「学問とはどんなものか」(what it is like to learn something) を知ってほしいと思っていて、それが達成できれば細かい知識は何を習得しようが些末なことだと考えています。段階的に、少し具体的に説明していきます。

 

ひとつめ。学問を嫌いにならないでほしい。——体感的に、ではありますが、自分の周囲ではどうも学問の力が過小評価されているような気がしてなりません。学問なんてしなくても「マニュアルに書いてある通りにやればいい」とか、「上司の指示通りにやればいい」とか、「他の誰かがきっとやってくれる」とか……そんなふうに考えて学問の機会を逃してしまっている人が多い気がします。だから、学問することに慣れていない人が結構いる。そして、その次に来るのは学問に対する食わず嫌い。だけど、学問の力を借りることで「あんなにもコントロールに難渋していた▲▲が一瞬で治ってしまった」みたいなことって結構あるんですよ。一見遠回りに見えるけれども、学問には圧倒的な威力があることを、まずは力説したい。

 

ふたつめ。学問の方法を身に着けてほしい。——この世は大変生きづらい。情報は溢れているし、人の言葉も信義を欠いて信用ならぬものです。何を信じたらいいか分からないわけですよ。嫌らしい人間関係上の闘争だって日常茶飯事で、まことに汚らわしい。専門家の意見なんて嘘にまみれていますし。だけど、そんな醜い世の中でもひとつだけ信じるに値するものがあります。それが、学問の力に裏打ちされた確固たる自己。「謀多きは勝ち、謀少なきは負ける」という言葉がありますが、この資本主義社会は知らざる者が知る者に搾り取られるように出来上がっています。だからこそ、研修医の先生方には早いうちに学問の方法を確立してもらって、伝統という名の大嘘 (!) などから自分の身を守れるようになってほしいと思います。そのためにも、各論的な知識なんていちいち覚えなくていいから、各論的な知識をゼロから生成できるような、広い意味での学問の地力を身に着けてほしい。実際にどう身に着けるかは丁寧に教えるからさ。

 

みっつめ。学問を好きになってほしい。——学問を続けていると知識が増えていって、そうすると逆説的ですが、却って知らないことが増えていきます。「自分には知らないことが多い」ということが分かると、少し心がわくわくしてくるものです。「自分の目に映っている世界にはまだまだ伸びしろがある」ことを意味しているわけですからね。「勉強しても勉強しすぎることはない」という安心感と高揚感が同時にやってくるわけですよ。ここまで来ると、「学問は一生の友」と噛み締めるように言えるのではないかと思います。今の日本はとっても暗い国で、自殺者が多いのも当然だよなとItoは感じているのですが、それでも個人的には、学問がある限りはこの世に生きてステイするのも悪くないかなと思っています。学問は、絶望の世の中における微かな希望であり、心を燃やす火種でもあるのです。

 

こういったことは、聖路加病院の出している『レジデントの鉄則』に書かれている事柄なんかよりもウンと基本的な話になってくるのですが、この部分が弱すぎる人が多い気がするんですよね。まぁ、身に着けなくても何とかなってしまう部分ではあるのですが。でも、そんなんで本当に仕事楽しいですか? 医者の仕事って辛いことばかりだから、好奇心がなかったら100歳まで続けられないと思うんですよ。だからこそ、病院総合内科をローテした研修医の先生には医学を好きになってもらいたい。そのための援助も惜しみたくないと考えています。

 

最後にさらっと宣伝。医学書院の出している雑誌「medicina」の4月号に、病院総合内科から研修医教育に関する記事を出しています。内容を一言でいえば「いかに教育を面白くするかのコツ」です。感染症教育は世界史と連動させることで一気に面白くなるんですよね。今回は3ページくらいのちょっとした記事で、語りたいことのすべてを語れているわけではありませんが、書店を訪れた際に立ち読みでもしていただけたら嬉しいです。