つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

ぽっどきゃすと? それは美味しいのかい?

コロナ禍をきっかけとして、生活のあらゆる面に電子媒体が入り込むようになってきた。1日を過ごす中で画面をのぞき込んでいる時間も飛躍的に増えた気がしていて、特にスマホの「画面を見ている時間は先週から10%増加しました」という表示を見ていると「自分の視力大丈夫かなぁ」なんて心配になってしまう。こんな状況なのできっと目薬も売れているに違いないと一瞬考えたのだけれど、ロート製薬の売上高とかは予想に反してさほど伸びてはいないようだ。とりあえず、20年後、30年後に失明していないことを祈る日々である。老眼になれば元々の近視と相殺してくれるんじゃないかと少しだけ期待しているが、果たして……?

 

画面ばかり見ていると、2週間に1日くらいは画面を見たくない日がやってくる。どうしても頭が重かったり、目がちょっと痛かったりで、画面を見ていられないような日があるのだ。そういった悩みを抱えている中で、大学時代の同期が面白いことを教えてくれた。『ハリソン内科学』という内科医のバイブルともいえる教科書があるのだが、そこから派生した番組がポッドキャストで放送されているというのだ。自分はメカとかテクに恐ろしく疎い人間なので、同期からポッドキャストと聞いた時に「『ぽっどきゃすと』とは何ぞや?」と戸惑ってしまったのだが、手持ちのスマホを隈なく探すと —— あった。紫色の背景をした二重丸アイコンを見つけた。アプリを開いてみると、色々な番組が紹介されている。どうやら「ぽっどきゃすと」というのはスマホ版ラジオ(但し、過去の放送も聞ける)のようなものなのだろうと、自分なりに納得したわけだ。

 

f:id:TsukubaHospitalist:20211121113647j:plain

医学生向けのチュートリアルを思い出す内容

 

それで早速、同期イチオシのHarrison's podclassを聴講してみた。大体1回あたり5~10分くらいの番組で、1~2週間に1回くらい更新されているようだ。内容としては、症例を紹介して鑑別診断を進めていきながら、五択クイズが出題されてそれに回答していくというもの。例えば、高血圧緊急症の症例であれば「68歳のアフリカ系男性が頭痛で受診した。血圧が230/120 mmHgで尿蛋白が……、治療法は以下のどれが正しいでしょうか」みたいな感じ。イメージとしては、海外での医学生向けチュートリアルに参加しているような感覚だろうか。現役医師にとってはちょっとだけ難易度低めの内容なのだが、その分か心が若返った感じがして楽しい。

 

そういうわけで、3週間ほど前からHarrison's podclassの聴講を自分の習慣に組み込むようにしている。平日はCarl Azuz(稀代の陽キャ)がパーソナリティを務めるCNN10を視聴しているので、CNN10の放送していない土曜・日曜日にHarrison's podclassを聞くことにしているのだ。なんというか、放送の最後の方に「もっと勉強したい人向けの続きはwebで」的な宣伝が流れるのだが、その部分がイケボなところも地味にポイントが高い(ディズニーリゾートで流れている案内ボイスみたいでワクワクしてしまう)。

 

ところで折角「ぽっどきゃすと」を使うことを覚えたものだから、他の番組も物色してしまった。色々な番組が乱立している中、偶然自分の視界に入ってきたのが「マット竹内の1日5分ビジネス英語」。1日5分と言いつつも、1回あたり15分の番組なので、NHK語学講座と尺的には同じくらいである。ニュース番組を丁寧に解説していて、スクリプトなしでも理解できる仕様になっている。なお、ニュース内容は重要度よりも面白さを重視して選択しているようで、CNNやBBCみたいなニュース番組とはあまり被っていない印象を受けた(テクノロジー系の話が多い?)。難易度は……遠山顕さんの「英会話楽習」以上、柴田真一さんの「ラジオビジネス英語」以下だろうか。

 

f:id:TsukubaHospitalist:20211121113725j:plain

ハイクオリティなのに、まさかの無料。無課金勢にはありがたいです

 

この番組の魅力は何と言っても、マット竹内さんやBilly君の掛け合いが面白いところである。ニュース番組を聞きながら、ボケ・ツッコミの漫才がしれっと披露される。もちろんボケ・ツッコミは日本語でやっているのだが、それでもニュース英語から意識を逸らされないところが素敵だなと思う。バランスが良い。余談ながら、Harrison's podclassでも稀に漫才が展開される ——「症例は施設入所中の70歳女性の下痢です」「どうせCD腸炎でしょ」「うわ、ネタバレしちゃったよ……」みたいな感じで。

 

自分が「マット竹内の1日5分ビジネス英語」を良いなと思った理由は他にもいくつかある。ひとつは、マット竹内さんの声が耳に心地よいこと。独特ではあるのだが、優しくて落ち着きのある声 —— こういう声って医療現場ではなかなか耳に入ってこないんだよなぁ。思い返してみると、NHK語学講座の中でも名司会者 —— 遠山顕さん、岩村圭南さん、杉田敏さん —— のボイスは色々な意味で破壊力抜群だった(癒される声もあれば、ノリノリな声もあった)。良い番組には良い声があるといったところだろうか。もうひとつは、独特な世界観。「マット竹内の1日5分ビジネス英語」の最後の2分くらいは、マット竹内さんの人生哲学コーナーの様相を呈しているのだが、その内容が月刊PHPっぽくてほのぼのとする。一例としては、ショパン国際ピアノコンクールで受賞するために反田恭平さんがどんな努力をしていたかの話なんかを紹介していた。

 

そんな感じで、無料で勉強できるコンテンツはYouTubeに限らずポッドキャストなどの形で色々と出現しているようだ。教育機会の不平等とは言われているが、少なくとも教材の不平等に関しては昔と比べてだいぶ改善しているのではと感じる(自分は英語教材に一切課金していないし、医学の勉強も殆どお金をかけずにやっているぞ!)。「勉強なんて結局『やるか、やらないか』『やる気があるか、ないか』」なんて言ってしまうと一部からお叱りを受けてしまいそうではあるのだが、でも多分そういう時代になってきているのだと思う。そんな時代だからこそ、これからも貪欲に他の人の勉強法も吸収していかないとなと改めて感じた次第である。

 

質問:今週素直に驚いたことは?

回答:TVアニメ ONE PIECE1,000話放送。もはや桁がオカシイっす。第1話放送が小学校上がりたての時で、当時リアルタイムで見ていたガキンチョとしては非常に感慨深い。特に夜の19時に親が予定を入れてくると結構怒っていた記憶が。YouTubeに「ウィーアー!」の1,000話記念バージョンがアップされていますが、絵柄も随分変わりました。長寿アニメなので「段々人気が出てきた」というイメージを持つ方もおられるかもですが、当時のガキンチョは放送開始当時からかなり熱狂していました。