つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

新型コロナワクチン、3回目

「新型コロナワクチン」と聞くと、用語的に適切なのか気になってしまうのは感染症内科医の性質ゆえだろうか。「インフルエンザワクチン」とか「風疹ワクチン」と言うので、「病名 + ワクチン」という呼称は間違っていないのだろう。しかし、「肺炎球菌ワクチン」とか「髄膜炎菌ワクチン」とも言うので、「菌名(病原体名) + ワクチン」という呼称も間違っていないことになる。ウイルス感染症の場合は「病名 + ワクチン」、細菌感染症の場合は「菌名 + ワクチン」……だとしたら、「COVID-19ワクチン」と呼ぶのが適切なのかなぁなんて思ってしまう。その一方で、PCR検査については「病原体名 + PCR」と呼ぶことが多いので、「COVID-19 PCR」ではなく「SARS-CoV-2 PCR」と自分はカルテに記載するようにしている。やっぱり、気にし過ぎなのか……皆さんはどうされているだろうか?

 

それはそれとして、新型コロナワクチンの3回目接種を完了した。個人的にこのワクチンは苦手で、2回目の時は筋肉痛以外あまり有害事象も出なかったのだが、接種前後は(周りからの噂もあって)やたら緊張してしまった。当然のように3回目も緊張した。接種する度に妙に緊張してしまうワクチンってどうなんだろう……。ただ、ワクチンを3回接種した方が良いことはデータから分かり切っていることで、そういったデータを見ることで自分自身を納得させて緊張感を解きほぐしていった。言い方を変えれば、感染症内科医の自分ですらデータを見ないと納得できないワクチンなので、一般市民にとっての心理的ハードルは相当高いんだろうなぁと推察してしまう。

 

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Pfizer製ワクチン、イスラエルでの3回接種(青) vs. 2回接種(橙)の比較

 

さて、頭痛だの発熱だのが生じることで評判のこのワクチン。接種翌日のQOLが下がってしまうのも目に見えているので、事前に対策を講じておかなければならぬ。アセトアミノフェンカロナール®)やロキソプロフェン(ロキソニン®)などの解熱鎮痛薬を調達する必要があるわけだ。昔はおおらかな時代だったので、医療従事者が家庭にコッソリ薬剤を隠し持っておくことも出来ていたようだが、今ではそのあたりも結構厳しい。ということで、「純粋なアセトアミノフェン製剤はないものかなぁ」とAmazonを検索したところ、タイレノール®Aなる市販薬を見つけて大はしゃぎ(利益相反なし。敢えて推奨もしません)。

 

タイレノール®Aには、1錠あたりアセトアミノフェン 300 mgが含まれている。【用法・用量】には「1回1錠、1日3回を限度とし……」と書いてあり、市販なりの安全マージンが確保されているんだなぁと感じた(この薬は飲み過ぎると肝臓を悪くする)。因みに、医師がアセトアミノフェンを処方する場合は、400~500 mg, 1日3回(1,200~1,500 mg/日)としていることが多い。そういうわけで、3回目のワクチン接種の前にタイレノール®Aを1箱調達。余計な物質の入っていないアセトアミノフェン製剤を調達できるなんて思ってもいなかった。

 

3回目の新型コロナワクチンを接種したのが午後15時頃。注射時の痛みが殆どないのは1回目、2回目と同じだ。ワクチン接種後30分くらい接種会場に待機して携帯のゲームで遊んでいたが、その時点では有害事象なし。就寝するまで何も起こらなかったが、夜中に頭痛が出たら嫌だなぁとか、翌早朝に有害事象があるとお勉強タイムが台無しだなぁなんて思っていたので、夜中のうちに1回は内服することを想定して、枕元にアセトアミノフェン 600 mgと飲み水を置いて就寝した。

 

夜中2時頃(接種後11時間後)に軽い頭痛で目が覚める。「頭痛が生じたら軽くても薬を飲むんだぁー!」と強く念じながら眠りについたので、頭痛がひどくなくても上手い具合に目が覚めてしまったわけだ。暗示効果の勝利。半ば寝ぼけた状態で枕元のアセトアミノフェン 600 mgを内服し、そのまま秒で再就寝。まぁ、本当に軽い頭痛だったので再度の入眠も簡単だ。それで、朝までは頭痛も熱感も悪寒もなく経過。いつも通りに朝5時に目が覚めて、何の症状もない状態で珈琲を淹れて論文を読み始める。予想では朝6時くらいに薬剤血中濃度が下がって頭痛が出ると考えていたので、朝6時過ぎくらいにほんのりと頭痛が起こった時にはすかさずアセトアミノフェン 600 mg再投入。そこから頭痛の悪化もなく、朝8時30分には元気に出勤した。妻から「まーた痩せ我慢してんのか、最初から休めばいいのに」と言われたが、当の本人は妙に高揚しているので普段以上に元気である。

 

出勤後は病棟業務を普通にこなしていたのだが、ここでひとつ問題に気がついてしまった。朝出勤した時点で、アセトアミノフェンを1,200 mg内服している。このペースで内服を続けると、3,000 mg/日くらいになってしまいそうだ。一応、疼痛に対してアセトアミノフェンは最大4,000 mg/日まで内服して良いことになっているので、完全にダメというわけでもないのだが、それでも肝臓に悪さしないかは少し気になってしまう。そういうわけで、病院総合内科の他のメンバーとも相談して、アセトアミノフェン累積使用量が1,800 mgになった時点で早退する方針となった。「たぶん自分は今、38度台の発熱があると思いまーす!」と宣言して診療科メンバーの前で検温したら見事に36.8度だったのだが、診療科的には「頭痛があって、体温が38.6度なので早退を許可する」という処遇となった。自宅へと優しく強制送還されたわけだ。

 

その後は家でダラダラと論文を読みながら、4時間毎にアセトアミノフェン 300 mgを内服しながら過ごしていたが、幸いにして軽めの頭痛だけで、あまりQOLが下がることもなかった(結局、アセトアミノフェンは累計2,400 mg使った)。自分が退勤した後の病棟でも初期研修医の先生方が頑張ってくれて、トラブルはなかったようだ。ありがたや。一応、注意してほしいこととして、ワクチン接種後の解熱鎮痛薬使用にさほどのエビデンスが確立していないことは付記しておくPubMedで探したら1本だけそれ関連の論文を見つけはしたが……(Kazama I, Senzaki M. Drug Discov Ther 2021;15(5):278-80)。つまり、医師という責任のある立場からは解熱鎮痛薬を積極的には推奨できないわけで、使用する場合は自己責任でどうぞ(ごめんなさい、これだけは職業倫理上言っておかないといけない 汗)。