つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

《内科専門医試験》いやぁ、これは長門ゲーでしたね

内科専門医試験を受験してきた。が、会場が横浜だったものだから、茨城から出てきたついでに色々と華やかな夜のベイエリアを楽しんできた。赤レンガ倉庫はリニューアルのために閉鎖中だったが、その周りに新しい建物がたくさん建設されているようで、ちょっとお金を払ってVanillabeans Cafeで濃いチョコレートドリンク(?)を飲んでみたり、美味しいピザとかパエージャを食べたりして、非日常を味わってくることができたのだ。普段はケチでも、こんな時には散財 —— たまには、そういうのもよかろう。

 

こういうのを見ると、ついはしゃいでしまうのだよ……

 

では試験についてはというと、可もなく不可もない感触であった。解けるはずの問題で間違ったところも数か所あって少し落ち込みはしたが、その一方で勘で解いた問題がそこそこ当たっていたので、トータルで行くとまぁ、大丈夫なんじゃないかという印象だった。というか、これで落ちた場合は来年度はどう対策したらいいのものか、ちょっとよく分からない。個人的な出来としてはそんな感じだ。もし、不合格だった時にはネタにして笑い話にしてしまおう。

 

個人的な感触ではなくて、もっと「一般的にどうなのか?」という視点でいくと、難易度は丁度良いくらいだったのではないかと思われる。というのも、難しい問題は明らかに難しすぎるので、問題を見た瞬間に「捨て問」だと分かる。間違ってもヘラヘラしていられるわけだ。その一方で、絶対に落とせない問題も散見されて、「この問題を解けないで専門医を名乗るのはちょっと……」というのもあった。個人的には、基本的だけどあまりに基本的すぎて頭から抜け落ちがちなテーマの問題がチラホラあったのが良かったと思う。具体的には、以下のような問題。

  • 鼻カヌラでの酸素流量 3 L/minをFIO2にすると?(0.32)
  • ガウンテクニックでは、何から脱ぐ?(手袋)
  • 高K血症ではT波増高以外どんな心電図変化が見られる?(P波消失)

 

自分は感染症屋さんだから、感染症の問題についてもちょっと言及すると、一般内科医に解けてほしい問題が半分、解けなくても気にしなくていい問題が半分という印象だった。というか、その気にしなくてもいい半分の方は、解けていたら「どこでそんな情報仕入れてきたんですか!?」と逆に聞きたいくらいだ。グラム染色像をみて黄色ブドウ球菌を当てる問題とかはさすがに正解してほしいのだけど、例えば以下の問題については感染症屋さん以外にとってはキツかったのではなかろうか。

  • 昆虫媒介感染症で隔離が必要なものは? ※うろ覚え
  • セフェム系が効かない細菌は?(腸球菌とリステリア)
  • ライム病の第一選択薬は?(セフトリアキソン)
  • 赤痢アメーバでメトロニダゾール以外の治療薬は?(パロモマイシン)

 

個人的には、喀痰グラム染色のMiller&Jones分類が出題されたのが面白いと思った。もはや米国では重症肺炎や緑膿菌疑い以外では喀痰のグラム染色を推奨しない流れだったように記憶するが、そこで敢えて喀痰グラム染色を出題する日本。時代に逆行している? いやいや、喀痰グラム染色を礼賛する論文を過去に書いた人間からしてみたら、とっても嬉しいもんだねぇ。だとすると、次回の試験ではきっとGeckler分類が出題されるに違いない。あと、喀痰からMRSAが出た肺炎症例の感染対策を答えさせる問題(接触予防策)があったのだが、感染症屋さん的には「ここでバンコマイシンを使いますか?」的な出題をしてもらいたかった(教育的メッセージが強いので)。

 

COVID-19そのものの問題は一切出なかった。せっかく前夜に厚労省の出している手引書(最新版)を最初から最後まで頭に叩き込み直したのに、完全に無駄であった。ただ、COVID-19に関連して、人工呼吸管理やECMOなどの救急・集中治療ネタが結構目立っていた。そう考えると、先程のガウンテクニックも、COVID-19枠での出題なのだろう。救急・集中治療ネタでもうひとつ面白かったのが、一次トリアージ中にやってよい治療行為に関する出題 —— これは、用手的気道確保と止血が答えじゃな……このふたつだけは例外的にやって良いことになっておる。

 

全体的には普通の本だが、藻谷浩介さんのエッセイが超絶面白かった!

 

そういうわけで、実際的な対策をどうするか。自分がやっていたローコスト試験対策を踏まえて挙げてみると、以下の結論に落ち着きそうだ(不合格だったら反面教師にしてちょうだい)。

  • 問題集は、QB 2冊でも十分太刀打ちできる。つまり、過去問やセルフトレーニング問題のために内科学会に課金する必要はない(自分はケチ体質なので、QB 2冊 しか問題演習はやらなかった!)。
  • CareNetがライブ時のみ無料で公開しているDr. 長門のレクチャーは必ず視聴して、しつこいくらい復習する。マニアックな問題の出題予想が驚くほど的中していた。というか、ぶっちゃけると内科専門医試験は「長門ゲー」だわ。
  • 日頃の臨床業務でガイドラインをまめに参照する癖がついていると、参照していたところが出題されるので、ちょっとハッピーになれるかも。特に日本循環器学会のガイドラインからは出題されやすい気がした。
  • 試験は全部で3分割されているのだが、パート毎に同じ内容の出題が繰り返されるので、試験中に解けなかった問題は休み時間中に勉強しなおすのがお勧め。今年はMDSがしつこく出題されていた。
  • でも、なんやかんやで長門無双なんじゃないかと思った。長門先生が解説していて「いやいや、こんなの出るとか冗談でしょ」と思っていたところから出題されていたから……。

 

ここまで偉そうにつらつら書いてきたが、予想に反して不合格だったら、その時はみんなで大爆笑して後世までのネタにしていく所存である。これでビッグイベントも終わったことだし、これからはYouTuber修行へと戻ることに致そう……。