つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

《内科専門医試験》循環器内科まとめ

内科専門医試験対策の一環でまとめていたノートを一部公開することにした。今回は循環器内科、この分野は素人なので間違いもそれなりにあると思っている。もし見つけたら教えていただけると幸いである。なお、「心筋梗塞ではトロポニンが上昇する」みたいな基本知識は全然入れていなくて、個人的に「面白いなー」とか「忘れがちだなー」というところだけまとめている(USMLEの問題集や論文で見た知識も入れているので、内科専門医試験に完全準拠しているわけではない!)。あと、定番問題も取りこぼしなく反映しているわけではないので、そこは学会公式または市販の問題集などで補ってもらえるとありがたい。一応、2022年の試験で出題された部分には★をつけておいた。もしも反響があれば、他の分野を公開するのもやぶさかではない。

 

BNP
心不全のcutoff値:BNP >100 pg/mL、NT-proBNP  >400 pg/mL
・ NT-proBNPの方が長い半減期で安定;但し、腎排泄なので腎障害の影響をBNPよりも受けやすい

心臓MRI
・ 造影剤不要:左室壁運動、冠動脈評価
・ 造影剤必要:心筋虚血、心筋血流分布、心内膜下梗塞・心筋変性の評価
・ 心サルコイドーシスや心アミロイドーシスの診断には遅延造影MRIが有用

核医学検査 ★
・ 負荷血流シンチグラフィで使う放射性医薬品は、201TIと99mTc
・ 拡張型心筋症の予後推定に123I-MIBGシンチグラフィが有用
・ 心アミロイドーシスの診断には99mTcピロリン酸シンチグラフィ

造影剤腎症 ★
・ 生食1 mL/kg/hrでの輸液を造影剤検査前6~12時間で投与
・ 時間が足りない場合は、重炭酸ナトリウム液投与が推奨される

心筋梗塞
・ V1-V2のST低下を見たら後壁梗塞合併を疑う
・ 心電図変化の順番は、① T波増高、② ST上昇、③ Q波、④ 陰性T波、⑤ ST正常化、⑥ T波正常化
心筋梗塞の合併症は、① 初日の心不全、② 数日内の不整脈と心膜炎、③ 1週間前後で生じる左室破裂と乳頭筋断裂、④ 週・月単位で生じる心室
PCIかCABGか:SYNTAX(冠動脈造影の結果を数値化)>33点はCABG有利
・ Killip分類:Ⅰ度 肺聴診所見なし、Ⅱ度 下肺野湿性ラ音、Ⅲ度 上肺野湿性ラ音、Ⅳ度 心原性ショック(収縮期血圧 <90 mmHg、尿量低下)
・ 気絶心筋(stunning)は虚血解除後にびっくりして機能不全、冬眠心筋(hibernation)は慢性虚血による機能不全;どちらも壊死なし;血行再建が必要なのは冬眠心筋

大動脈弁狭窄症 ★
・ 手術適応は、① 有症候性重症AS(狭心症、失神、左心不全症状)、② 無症候性重症ASだが他の心臓所見あり(駆出率 <50%、著明な肺高血圧、急速進行性など)、③ 中等症以上のASで他の開心術を予定している時
・ TAVIの適応は、① 80歳以上(10年以上の予後データ不足ゆえ)、② フレイル・全身状態不良、③ 開胸手術を妨げる併存症(肝硬変、閉塞性肺疾患、間質性肺炎、出血傾向)
・ TAVIでは非開胸・オンポンプで生体弁を留置、経心尖・経大腿アプローチがある
・ TAVI後は抗凝固というよりは抗血小板療法(GALILEO試験を参照)

肺高血圧症(CTEPH除く)
・ 治療選択肢は、エンドセリン受容体拮抗薬、PDE-5阻害薬(× PDE-4)、グアニル酸シクラーゼ刺激薬、プロスタサイクリン製剤(× プロスタグランジン)

心房中隔欠損症
・ 心音はⅡ音の固定性分裂と肺動脈領域の収縮期駆出性雑音(cf. 心室中隔欠損症は汎収縮期逆流性雑音)
心室中隔欠損症と違って自然閉鎖しにくいため、基本的に閉鎖術の適応
・ 心臓カテーテル検査で肺体血流比 >1.5で手術適応
・ 感染性心内膜炎のリスクは低く、観血的処置前の抗菌薬予防は必須でない

WPW症候群
・ 心房細動を合併し、20%は偽性心室頻拍を起こす
・ 治療はⅠa群抗不整脈薬(キニジン、プロカインアミド、ジソピラミド)
・ 正常房室結節伝導を抑制するジギタリス、Ca拮抗薬、β遮断薬は禁忌

発作性上室性頻拍 PSVT ★
・ 治療はCa拮抗薬・ジギタリス・β遮断薬の経静脈投与、ATP急速静注

感染性心内膜炎 ★
・ 早期手術のクラスⅠ推奨:① 急性高度弁機能不全または瘻孔形成による難治性肺水腫・心原性ショック、② 急速に進行する人工弁周囲逆流による心不全、③ 弁輪部膿瘍・仮性動脈瘤・房室伝導麻痺の出現、④ 真菌や高度耐性菌による感染、⑤ 適切な抗菌薬開始後も1回以上の塞栓症が生じ、残存・増大する疣贅

心筋症
・ 拘束性心筋症の鑑別診断は、アミロイドーシス、サルコイドーシス、ヘモクロマトーシス、放射線による心筋障害や線維化

心不全
・ Forrester分類、"象限" を覚えにくければⅠからⅣに進むに従って末梢が冷たくなっていく or ドブタミンが増えるイメージで捉えると覚えやすい?
・ Nohria-Stevenson分類はForrester分類と意外に重ならない(豆知識)

 

Forrester分類もたまに見ないと忘れますよね……

 

マルファン症候群
・ 常染色体優性遺伝で、FBN1, TGFBR1, TGFBR2, SMAD3, TGFB2, TGFB3などが原因遺伝子
・ 診断は2010年のrevised Ghent criteriaに基づくが、以下の特徴がある場合は重症型のLoyes Dietz症候群になるので注意:① 末梢血管(脳動脈含む)の血管蛇行・瘤、② 二分口蓋垂、③ 透き通る皮膚(velvet skin)、④ 青色強膜
・ あとは関節や皮膚の過伸展性で診断されるEhlers-Danlos症候群と混同しない

起立性低血圧症

・ 診断基準:起立3分以内に収縮期血圧20 mmHg低下 or 拡張期血圧10 mmHg低下
・ 心拍数で診断されるのはpostural orthostatic tachycardia syndrome(5分以上の起立で心拍数28 bpm上昇)……紛らわしい
・ 治療としては、フルドロコルチゾンで体液を貯留させたり、インドメタシンで末梢血管拡張を予防したり、あとは頭を高くして寝るとRAA系が亢進するのでよい

高血圧症
・ 朝の家庭血圧は排尿後に測定する;診療室より家庭での血圧を優先的に使う
・ 診察室血圧のsBP・dBPで高血圧分類が異なる場合は、高い方の分類を採用
・ 分類というのは、Ⅰ度高血圧(140/90 mmHg~)、Ⅱ度高血圧(160/100 mmHg~)、Ⅲ度高血圧(180/110 mmHg~)など ※ 度数と必要降圧薬数が概ね合致
・ 孤立性収縮期高血圧:動脈硬化が原因で高齢者に多い、拡張期血圧は低い
・ 白衣高血圧:持続性高血圧への移行リスクあり
・ 妊娠高血圧:実は減塩が明確には推奨されていない(欧米では推奨されておらず、日本の偉い人たちがガイドラインをどうするか悩んでいるらしい)
・ 降圧目標は <130/80 mmHgが基本で、75歳~では <140/90 mmHg

脂質異常症
・ 心血管イベントの一次予防のためのLDL-C目標は、リスク分類毎に異なる;低リスク群 ~160 mg/dL、中リスク群 ~140 mg/dL、高リスク群 ~120 mg/dL
・ リスク分類を覚えるのは大変だが、少なくとも糖尿病、CKD、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患のうちの1つあれば高リスク群
・ また、喫煙、高血圧症、高HDL-C血症、耐糖能異常、早発性冠動脈疾患家族歴のうち2つ以上あっても高リスク群で確定(60歳未満の女性除く)

DOACのリバース法
・ 活性炭やPCC(プロトロンビン複合濃縮製剤)はどの薬剤も行ける
・ ダビガトラン:透析除去、イダルシズマブ(中和抗体)
・ ダビガトラン以外:アンデキサネットα(中和抗体)
FFPはどのDOACにも無効

利尿薬の副作用(フロセミド割愛)
・ サイアザイド:低Na血症・低K血症、高血糖脂質異常症高尿酸血症、高Ca血症(Hyper GLUCと記憶) ※ サイアザイドは腎性尿崩症の治療薬
・ アセタゾラミド:代謝性アシドーシス、ニューロパチー、高アンモニア血症、サルファ剤アレルギー
・ マンニトール:肺水腫と脱水 → 心不全で禁忌

ジゴキシン中毒
・ 症状としては、消化器症状(嘔気・嘔吐)と黄色視野
不整脈は色々なものが出うる(e.g., junctional tachycardia, SVT)

リドカイン中毒
・ 初期症状:口周囲感覚鈍麻、舌麻痺、めまい
・ 感覚障害:耳鳴、青色視野
・ その他:混乱、興奮、幻覚、意識障害
・ 治療としては、リドカイン中止 + 脂肪乳剤(プロポフォール