つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

《内科専門医試験》呼吸器内科まとめ

内科専門医試験対策の一環でまとめていたノートを順次公開している。今回は呼吸器内科、もし間違いを見つけたら教えていただけると幸いである。なお、「COPDでは閉塞性換気障害を認める」みたいな基本知識は全然入れていなくて、個人的に「面白いなー」とか「忘れがちだなー」というところだけまとめている(USMLEの問題集や論文で見た知識も入れているので、内科専門医試験に完全準拠しているわけではない!)。あと、定番問題も取りこぼしなく反映しているわけではないので、そこは学会公式または市販の問題集などで補ってもらえるとありがたい。一応、2022年の試験で出題された部分には★をつけておいた。

 

肺炎
・ A-DROP:男70歳~・女75歳~、脱水、SpO2 <90、意識障害、sBP <90 mmHg

結核
結核は2類感染症、乾酪性肉芽腫
・ 非乾酪性肉芽腫疾患:サルコイドーシス、過敏性肺臓炎、塵肺
ツベルクリン反応陰性化疾患:サルコイドーシス、過敏性肺臓炎、悪性リンパ腫、麻疹、低栄養

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
・ 治療はステロイド、アゾール系;最近は抗IgE抗体など生物学的製剤も
・ 診断項目:① 喘息既往・喘息症状、② 末梢血好酸球 >500 /μL(× BAL好酸球数)、③ 血清IgE >417、④ 糸状菌への即時型皮膚反応または特異的IgE陽性、⑤ 糸状菌沈降抗体または特異的IgG陽性、⑥ BALF糸状菌培養陽性、⑦ 粘液栓内の糸状菌染色陽性、⑧ CTで中枢性気管支拡張、⑨ 粘液栓喀出の既往またはCT・気管支鏡での中枢気管支内粘液栓、⑩ CTで粘液栓の濃度上昇(HAM)

呼吸機能 ★
・ mMRCが呼吸困難のgradingで重要:⓪ 激しい運動でのみ息切れ、① 早歩きで息切れ、② 息が切れるので歩行が遅い、③ 平坦な道100 m or 数分歩くと息切れして立ち止まる、④ 息切れで家から出られない or 着替えができない
・ 呼吸機能検査で残気量を含む指標(残気量、機能的残気量、全肺気量)は測れず
・ AaDO2 = PAO2 - PaO2 = (大気圧 - 飽和水蒸気圧) × FIO2 – PaCO2/呼吸商 – PaO2 = (761 - 47) × 0.21 - 44/0.8 – PaO2

喘息 ★
ピークフロー日内変動20%以上が診断の目安、気道可逆性とはβ2吸入によりFEV1が12%以上かつ200 mL以上増加することをいう
・ FeNOは気管支喘息だけでなく咳喘息でも上昇するが純粋なCOPDでは上昇せず
・ 喘息治療ステップの全てに吸入ステロイド(+ 発作時のSABA)が入る

 

喘息治療ステップ

 

・ 抗IgE抗体、抗IL-4/13抗体、抗IL-5抗体、抗IL-5R抗体の使い分けには血清IgE値、末梢血好酸球数、FeNOを評価(後ろに行くに従って、アレルギー型から好酸球型寄りになるように記載)
アスピリン喘息にCOX-2阻害薬OK、ステロイドコハク酸エステル(PSL、mPSL、ヒドロコルチゾン)を避けてリン酸エステル(デキサメタゾン、ベタメタゾン)を使用
・ 妊婦の喘息治療は非妊婦と同じだがロイコトリエン拮抗薬は禁忌

COPD
・ 診断は1秒率(=1秒量/努力生肺活量)<70%
・ ただし、病期分類は%1秒量で判断(重症化するとair trappingで努力生肺活量が低値になってしまい、見かけ上は1秒率が改善しているように見えてしまうから)
・ 治療はLABA + LAMAまたはLABA/LAMA合剤が基本
・ LAMAは閉塞隅角緑内障と排尿障害を伴う前立腺肥大症には禁忌
・ 喘息病態を伴う場合(例:好酸球数 >300 /μL)は吸入ステロイド薬も考慮
・ 発作が年1回までで、mMRC 0~1と軽度ならSABA単独でも可

 

GOLD 2019 recommendations

 

間質性肺炎
・ IPFは病理所見なしの臨床診断が可能、画像が重要
・ ピルフェニドン、ニンテダニブなどの抗線維化薬が治療の中心に(ステロイドは易感染性になるので、膠原病が関与する場合などに限る)

サルコイドーシス ★
ビタミンD活性型への変換が亢進して高Ca血症に(→ PTH低下)
・ 疑ったら他臓器病変がないか注意(呼吸器、眼、心臓): 高度房室ブロック、心室中隔基部菲薄化、左室収縮不全、67Ga or 18F-FDG-PET心臓への集積、ガドリニウムMRIで心筋の遅延造影

好酸球性肉芽腫症
・ 肺門リンパ節腫脹は見られない(⇔ サルコイドーシス)
・ 眼病変は、眼球突出(⇔ サルコイドーシスのぶどう膜炎
・ 皮膚病変は、脂漏性皮膚炎様(⇔ サルコイドーシスの結節性紅斑)
・ 合併症として自然気胸(20%)、骨病変(10%)、尿崩症(10%)、好酸球増多症(10%)

肺癌
・ 非肺小細胞癌のレジメンはプラチナ製剤(入院シスプラチン、外来カルボプラチン) + 第3世代抗癌剤(ペメトレキセド、パクリタキセルドセタキセル、ゲムシタビン、イリノテカン、S-1など)、PD-L1 >50%ならペムブロリズムマブを併用
・ 非肺小細胞癌ではEGFR、ALK、BRAF、ROS1を検索
・ EGFR TyrK阻害薬での有害事象は、発疹・ざ瘡・爪周囲炎、間質性肺炎口内炎、下痢
抗がん剤有害事象のGrade分類:1, 軽症;2, 中等症;3, 重症;4, 致死的;5, 死亡であり、Grade 1-2なら対症療法のみを許容、Grade 3以上は抗がん剤終了が原則
・ 進展型小細胞癌に対しては、PS 0-2かつ70歳以下ならシスプラチン + イリノテカン(or エトポシド)、PS 0-2かつ70歳越えならシスプラチン(or カルボプラチン) + エトポシド使用; PS 0-1ならさらにPD-L1併用可

悪性中皮腫
・ 細胞診や胸膜組織でのマーカーは、カルレチニン、WT-1(Wilm’s tumor-1)、D2-40(ポドプラニン)
・ マーカーで確定診断しないようガイドラインで明記
・ 確定診断には、全身麻酔胸腔鏡下胸膜生検が推奨(組織亜型や病変の浸潤度を確実に診断するよう勧告あり)

咳嗽
・ 急性 ~3週間、遷延性 3~8週間、慢性 8週間~(急性は感染後咳嗽が、慢性は咳喘息が多い)
・ 後鼻漏や逆流性食道炎を鑑別診断に

睡眠時無呼吸症候群
CPAP適応は簡易検査AHI >40またはPSG AHI >20
・ 基準に満たない場合の治療は、減量と口腔内装具