つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

《内科専門医試験》感染症・アレルギー・膠原病まとめ

内科専門医試験対策の一環でまとめていたノートを順次公開している。今回は感染症内科とアレルギー膠原病内科、もし間違いを見つけたら教えていただけると幸いである。なお、「風邪に抗菌薬は使わない」みたいな基本知識は全然入れていなくて、個人的に「面白いなー」とか「忘れがちだなー」というところだけまとめている(USMLEの問題集や論文で見た知識も入れているので、内科専門医試験に完全準拠しているわけではない!)。あと、定番問題も取りこぼしなく反映しているわけではないので、そこは学会公式または市販の問題集などで補ってもらえるとありがたい。一応、2022年の試験で出題された部分には★をつけておいた。

 

感染症
・ただちに届け出る5類: 麻疹、風疹、侵襲性髄膜炎感染症
・薬剤耐性緑膿菌は5類定点、CREは5類全数把握(保菌は届け出不要)
・インフルエンザは5類定点だが脳症を起こすと全数把握になる
・4類は動物を介するもの:オウム病、ライム病、レプトスピラ症、日本紅斑熱、ツツガムシ病、Q熱(リケッチア科Coxiella burnetii)、SFTS
SFTS飛沫感染対策も必要
疥癬(ダニ)や発疹チフス(シラミ媒介)は個室隔離を ★
※ (あまり記憶にないが)特殊な感染対策を要する人獣共通感染症を選ばせる問題があった気がする……

 

日経新聞(2022年1月27日)。「COVID-19は2類である」みたいな誤文出るかな

 

ワクチン
・生ワクチン:BCG、麻疹、風疹、麻疹・風疹混合、水痘、ロタ(1価・5価)
・生ワクチン接種間隔27日、不活化ワクチン接種間隔6日
・麻疹や風疹などのウイルスは自然史(症状の時系列)を復習、COVID-19の情報も厚労省の手引きでアップデートしたい

梅毒
・生物学的偽陽性:麻疹、水痘、EBV感染、マイコプラズマ膠原病(SLE)★

感染性腸炎
・起因菌と潜伏期間:概ね数日の潜伏期間あり;ブ菌は4時間;エルシニア/ビブリオ/サルモネラ/バチルス(語呂:海老・鯖)は12時間前後
カンピロバクター腸炎の人を帰す時はギランバレー症候群の遅発の可能性を説明

HIV感染症
・AIDS指標疾患23個の中に口腔カンジダは含まれない、死因はPCP最多
帯状疱疹はCD4関係なく発症(CD4 <200で増えはするが)
・合併症:HIV腎症(FGS/ネフローゼ)、AIDS関連認知症前頭葉萎縮)、カポジ肉腫

アレルギー総論
・Coombs/Gell分類I~IV型と疾患の対応:I型(即時・IgE)喘息や鼻炎、蕁麻疹;II型(細胞傷害・IgGとIgM)AIHA、ITP、Goodpasture症候群、慢性甲状腺炎、重症筋無力症;III型(免疫複合体・IgGとIgMとIgA)血清病、SLE、糸球体腎炎、血管炎;IV型(遅延型・T細胞)接触性皮膚炎、薬剤アレルギー、GVHD
接触性皮膚炎はパッチテストで診断(×プリック、スクラッチ、皮内反応)
・蕁麻疹は特発性が70%(夜に多くて再発/治療抵抗化しやすい)、原因同定が5%
・近年のRASTでは、感度・特異度を上げるために蛋白成分(コンポーネント)を標的にした検査がなされる
・卵白蛋白:加熱してもアレルゲン活性を残すオボムコイドと、加熱で活性を失うオボアルブミン
・小麦蛋白:ω-5グリアジン
・ピーナッツ蛋白:Ara h2(加熱でアレルゲン活性を残す)

アレルギー性鼻炎
・スギ花粉症舌下療法:検査での確定診断(スクラッチテスト、プリックテスト、皮内テスト、特異的IgE)必要、飛散シーズン前に開始、妊娠中継続OK、妊娠中開始/再開NG、5歳以上が適応
・ダニへの舌下免疫療法も承認
アレルギー性鼻炎に対するオマリズマブが適応拡大(喘息、蕁麻疹に引き続き)
・通年性鼻炎については鼻漏型がH1RA、鼻閉・充全型がLTRA(妊婦注意)

遺伝性血管性浮腫
喉頭浮腫リスク、C1-INH欠損が原因、NSAIDsがリスク因子
・C4低下が診断に有用、治療はトラネキサム酸

食餌依存性運動誘発アナフィラキシー
・10代に多く、食後2~3時間の運動がトリガー
・NSAIDs、ACE-I、サリチル酸が修飾因子で体調不良や生理にも左右される
・小麦(最多)や甲殻類が原因食物として多く、食後2~3時間は運動しないこと

口腔アレルギー症候群 OAS
・リンゴ、モモ、サクランボなどの特定食物で口腔腫脹・掻痒など
・シラカンバ、ハンノキ、オオバヤシヤブシ等の花粉症と関連
・共通抗原としてプロフィリン等アレルゲンコンポーネントによる交差反応
・原因除去が治療法だが、加熱・加工で摂取可能になることもある

ラテックスフルーツ症候群
・ラテックスとフルーツ(栗、バナナ、キウイ、アボガド)による交差反応、I型

薬剤性過敏症症候群 DIHS
・原因薬剤は抗てんかん薬、サルファ薬、アロプリノール、ミノサイクリンなど
・診断基準:①特定薬剤投与後に遅発性に生じる急速拡大の紅斑、②原因薬剤中止後2週間持続する、③38度以上の発熱、④肝機能障害、⑤白血球増加 or 異型リンパ球出現 or 好酸球増多、⑥リンパ節腫脹、⑦HHV-6の再活性化(発症2-3週間後)
治療は原因薬剤中止、ステロイド投与

全身性エリテマトーデス(SLE)
・Ⅱ+Ⅲ型アレルギー、殆どCRP上昇しない
・活動性は血清補体価低下、dsDNA抗体増加、白血球数低下、血小板数低下、血尿、蛋白尿で判断
※ 誤り選択肢としては、CRP上昇、赤沈亢進、抗核抗体陽性が頻出
・予後規定因子は腎障害と中枢神経障害
・TNF-α阻害薬は使わない(ステロイド、シクロホスファミド、MMFは使う)
・無痛性口腔内潰瘍、自己免疫性溶血性貧血、非びらん性関節炎、胸膜炎・心膜炎など分類基準に掲載されている合併症をチェック
・ACR分類基準(1997年)では蛋白尿として尿定性検査(3+~)が許容
・SLICC分類基準(2012年)では尿蛋白の定量が必要で(500 mg/日~)、非瘢痕性脱毛と直接Coombs試験が加わっている
・薬剤性ループスの原因として、ヒドララジン、イソニアジド、プロカインアミド、フェニトインが有名

関節リウマチ ★
・遺伝的要因としてHLA-DR4保有、発症・増悪リスク因子として喫煙や歯周病
・ACR/EULARの分類基準:① 罹患関節(大小どちらの関節が何か所か?)、② 血清学的検査(RF、抗CCP抗体)、③ 急性期反応物質(CRP、赤沈)、④ 症状持続期間(6週未満か、以上か)
・合併症として、皮下結節(SLE活動性を反映、荷重部)、間質性肺炎(男性優位)、胸膜炎(男性優位、胸水中の補体低下あり)、手根管症候群、多発単神経炎
レイノー現象なし
DIP関節炎はまれ(⇔ 変形性関節症、乾癬性関節炎)
・関節液は好中球優位、関節滑膜はリンパ球優位
・リハビリは等尺性筋力訓練を
・予後予測因子として、疾患活動性、RF & 抗CCP抗体、リウマチ結節
・治療における標的分子は、IL-6とTNF-α
・高齢発症関節リウマチの特徴は、① 男女差が少ない、② 亜急性~急性経過、③ 大関節好発、④ 四肢近位筋疼痛あり、⑤ 微熱や体重減少あり、⑥ 炎症反応が高い、⑦ 貧血や低蛋白血症あり、⑧ RFや抗CCP抗体陽性が少ない

強皮症 ★
・抗トポイソメラーゼⅠ抗体(抗Scl-70抗体):肺線維症
・抗U1-RNP抗体:肺高血圧症
・抗RNAポリメラーゼⅢ抗体:強皮症腎
※ 抗Scl-1抗体は「線維」のS、抗RNAポリメラーゼⅢ抗体はReNAlと記憶
・抗セントロメア(Centromere)抗体:CREST症候群(皮下石灰化、レイノー、食道蠕動低下、皮膚硬化、毛細血管拡張)
・皮膚硬化にはステロイド、皮膚潰瘍にはプロスタグランジンとCa拮抗薬
・腎クリーゼにはACE-I/ARBで治療、ステロイドは慎重投与(血圧上昇リスク)

多発性筋炎/皮膚筋炎 ★
・近位筋の対称性筋力低下に加え、非破壊性/非変形性多関節炎も
・抗Jo-1抗体(抗ARS抗体の一種)は間質性肺炎が多く、ステロイド有効
※ 「機械工の手」の写真を見ておく!
・抗MDA5抗体は皮膚症状に乏しいが進行性間質性肺炎を発症
※ 予後があまりにも悪いので、不謹慎ながら「治療してもMuDA」と記憶
・悪性腫瘍の合併を疑って検索を;貧血なら消化器癌を考えて便潜血など

 

Chatterjee S. N Engl J Med 2021;384:e16.

 

シェーグレン症候群
WBC減少、IgG上昇、抗SS-A/SS-B抗体、抗α-フォドリン抗体
・診断がすごく面倒:① 生検所見は口唇腺または涙腺(×耳下腺)、② 唾液腺造影検査が必要(ガム試験やサクソン試験のみはNG)、③ 眼科検査ではシルマー試験の異常に加えてローズベンガル試験かフルオレセイン試験のどちらかの異常が必要、④SS-A抗体かSS-B抗体の陽性
※ 「唾液分泌能を評価するためにローズベンガル試験を実施する」みたいな誤文は出題しやすい
・合併症として、間質性腎炎や遠位尿細管性アシドーシス(低K血症)、悪性リンパ腫(10~40倍)、慢性甲状腺炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎
・抗SS-A抗体は感度が高くて特異度が低い;抗SS-A抗体は新生児ループスと関連

ベーチェット病
・遺伝的素因はHLA-B51以外に、HLA-B26も
・主症状は、口腔内再発アフタ性潰瘍、外陰部潰瘍、眼病変、皮膚病変(有痛性結節性紅斑様皮疹、血栓性静脈炎、毛嚢炎様皮疹) ※ 外陰部潰瘍は皮膚病変と別
・副症状は、変形硬直のない大関節炎(X線異常なし)、精巣上体炎、回盲部潰瘍、血管病変(動脈も静脈もあり)、中枢神経病変(髄膜炎など)
・針反応が見られるのは、刺入から24~48時間以内
・治療としてコルヒチン、ステロイド、アダリムマブ、インフリキシマブ

結節性紅斑
・鑑別診断は、ベーチェット病、血管炎症候群、結核、サルコイドーシス、炎症性腸疾患、溶連菌感染症経口避妊薬、サルファ剤など

成人スティル病
・分類基準の大項目に数字が多い。1週間以上持続の39℃以上弛張熱、2週間以上持続の関節痛、サーモンピンク皮疹、好中球増加を伴う白血球増加
・小項目:咽頭痛、リンパ節腫脹、脾腫、肝障害、RF陰性、抗核抗体陰性
・血清フェリチン上昇は有名だが、実は分類基準の項目に入っていない

リウマチ性多発筋痛症
・症状は2週間以内に完成し、朝のこわばりは1時間以上持続
・CK上昇せず、超音波やMRIで滑膜炎所見

線維筋痛症
・有病率2%と多い
・3か月以上持続する左右半身、上下半身、体軸と広範囲の疼痛
・プレガバリン、デュロキセチン(SNRI)、トラマドール(弱オピオイド)が推奨
ノイロトロピンは検討して良い程度、アミトリプチリン(三環系)は推奨度低い

IgG4関連疾患 ★
・自己免疫性膵炎、硬化性胆管炎、ミクリッツ病、慢性甲状腺炎、後腹膜線維症、尿細管間質性腎炎など、IgG4陽性形質細胞浸潤・線維化で臓器障害、治療はステロイド

血清反応陰性脊椎関節症(脊椎関節炎)
・日本人には少なく、20~30代の白人男性に多い
・遺伝的素因としてHLA-B27保有あり
・付着部炎や前部ぶどう膜炎、大動脈弁閉鎖不全症、IgA腎症、腸管潰瘍などの合併症を伴うが、RF・リウマトイド結節・末梢神経障害なし

Perthes病
・大腿骨頭の特発性壊死(avascular necrosis)、4~10歳に好発
・基本的に自然軽快(~18か月)
・経過観察で対応するが、免荷も検討

Paget病
・骨のターンオーバー亢進で、X線ではモザイク様または綿花様の骨皮質に
・米国では40歳以上の成人の4%に発生
原発副甲状腺機能亢進症と関連
・経過観察で対応し、疼痛コントロール
・ただし、1%の症例で骨肉腫を生じるので注意