つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

《内科専門医試験》腎臓内科まとめ

総論
・PAS染色はメサンギウム器質病変を検出:IgA腎症、急性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎、ループス腎炎
・PAM染色は膜(Maku)病変を検出:膜性腎症(膜にスパイク)、膜性増殖性糸球体腎炎(膜が二重)、ループス腎炎
・気道感染を契機とした血尿の鑑別:① 感染5日以内ならIgA腎症(1週間程度で治る)、② 感染1~3週間後からなら溶連菌感染後急性糸球体腎炎
・急速な経過の血尿の鑑別:① 日~週単位の経過なら抗GBM腎炎、② 週~月単位の経過ならANCA関連腎炎……このあたりも要考慮
・血尿で均一赤血球なら非糸球体性、変形赤血球なら糸球体性(蛋白尿や円柱も手掛かりになる)

急性腎障害
・KDIGOの定義:①ΔCre ≥0.3 mg/dL(48時間以内)、②血清Cre 1.5倍(7日以内)、③尿量 <0.5 mL/kg/hr(6時間以上)
・FENa = (尿Na/血清Na)/(尿Cre/血清Cre)*100
・FENa <1.0% → 腎前性疑い
※ 無尿症例の問題で「尿検査が鑑別診断に有用である」みたいな嫌らしい選択肢を出してくるのが内科専門医試験
・尿中β2マイクログロブリン上昇 → 尿細管障害疑い

慢性腎臓病 ★
・定義として、以下のいずれかが3か月以上持続:①蛋白尿 ≥0.15 g/gCre(尿Alb >30 mg/gCre)、②GFR <60 mL/min/1.73㎡
・CKD重症度分類:GFR区分(G1~G5)と蛋白尿区分(A1~A3)
・GFR区分:G1 90~、G2 60~90、G3a 45~60、G3b 30~45、G4 15~30、G5 ~15
・蛋白尿区分のA2:尿Alb 30~300 mg/gCr(糖尿病性腎症)、尿蛋白 0.15~0.50 g/gCr(糖尿病性腎症以外)
・有病率1,330万人で、成人人口の約13%(8人に1人)
・腎性貧血でフェリチン <50 ng/mLならESA製剤より鉄剤を優先
ESA製剤での治療目標 Hb 11~13 g/d
・ただし、重篤な心血管イベントの既往やHb >12 g/dLの折はESA製剤の減量や休薬を(高血圧予防のため、Hb上昇が0.5 g/dL/日を越えないよう注意)
・担癌患者へのESA製剤は血栓症や予後悪化と関連するので慎重に
※ 腎臓内科専門医への紹介基準が出題(G3a, A1でも40歳以上の場合は「紹介」でなく「生活指導」……このあたりは意地悪だと思うんだ)

 

これだけなら良いのだが、糖尿病性腎症も別個の分類があるからイヤラシイっす

 

ネフローゼ症候群
・定義として必須は、尿蛋白 >3.5 g/日、血清Alb <3.0 g/dL
・参考所見として浮腫、脂質異常症、卵円形脂肪体
・40歳未満は微小変化型;尿蛋白選択性良好 SI <0.2、NSAIDsや造血器腫瘍で発生することもあるらしい
・40歳以上は膜性腎症が最多;膜型ホスホリパーゼA2受容体が一次性の対応抗原;血尿は稀;緩徐進行性
・巣状糸球体硬化症は若年に多く、HIV感染やヘロイン使用が関連;血尿や高血圧合併が多い;ステロイドやシクロスポリン、抗血小板薬、抗凝固薬、LDLアフェレーシス(LDL-C除去でなぜか尿蛋白が減る)など色々と治療がある
・膜性増殖性糸球体は小児や若年成人に多く、血尿合併しやすく、腎機能予後不良HCVやクリオグロブリン血症が有名だがSLEやIEでも発生
・補体が下がるのは、溶連菌感染後急性糸球体腎炎、ループス腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎の3つで「急にループを巻くゾウ」と暗記
コレステロール塞栓症でも補体は下がる

糖尿病性腎症 ★
・透析導入理由の第一位
・低レニン性・低アルドステロン性高血圧症あり(体液量増えているから)
・光顕でKimmelstiel-Wilson結節、capsular drop、fibrin capが特徴的(病理確認)
・糖尿病腎症の病期分類がCKD重症度とは別個に存在:第1期 尿中Alb ~30 mg/gCr、第2期 30~300 mg/gCr、第3期 300~ mg/gCr(尿蛋白 0.5 g/gCr~)、第4期 GFR <30 mL/kg/1.73㎡(尿蛋白・Alb関係なし)、第5期 透析中
・生活療法として、総カロリー 25~30 kcal/kg/日(第4期は30~35 kcal/kg/日)、塩分 6 g/日未満、蛋白質は第1~2期が摂取エネルギーの20%以下、第3期 0.6~0.8 g/kg/日、第4期0.6~0.8 g/kg/日、カリウム制限は第4期に限り1.5 g/日未満
※ 暗記しづらい部分だが、超絶細かい食事療法の問題が頻出のようだ

IgA腎症 ★
・慢性糸球体腎炎では最多(× ネフローゼの中で最多)
※ 慢性糸球体腎炎最多、透析導入最多、ネフローゼ最多を区別して暗記!
ネフローゼ症候群を起こすのは比較的まれ
・メサンギウム領域に免疫グロブリンや補体が沈着(→ PAS染色で見るもの)
・診断基準にIgA >315 mg/dLがあるが、IgA値は予後予測因子でない
・20年以内に40%が末期腎不全、治療はACE-I/ARBや扁摘・ステロイドパルス

紫斑病性腎炎(IgA血管炎)
・小児や若年者に多く、三徴は皮膚症状・腹部症状・関節症状
・悪性腫瘍との直接の因果関係なし
・無症候性血尿や蛋白尿の多くは数週間で自然軽快(対症療法)
・まれに急速進行性糸球体腎炎やネフローゼ症候群を起こして慢性腎不全に移行

アルポート症候群 ★
・Ⅳ型コラーゲンα5鎖の発現異常が原因で、感音性難聴と腎障害(血尿あり)
※ 「Ⅴ型コラーゲンの発現異常が……」みたいな誤文が出ていた
・ACE-I/ARBで進行を抑制する
・同じく血尿を起こす疾患に菲薄基底膜病があるが、こちらは腎障害なく予後良好

高レニン・高アルドステロン血症
・悪性高血圧症、レニン産生腫瘍、褐色細胞腫、腎血管性高血圧症、経口避妊薬、シクロスポリンなど
・腎傍糸球体細胞からのレニン分泌促進因子:① 腎血流低下(立位、Na制限、利尿薬、ANP)、② 交感神経刺激(β1作用、α作用)、③ 尿細管Cl-輸送異常(Bartter症候群、Gitelman症候群)

尿細管性アシドーシス(RTA
・遠位型が1型と4型、近位型が2型
・低K血症と代謝性アシドーシスの組み合わせを見たら、とりあえず1型・2型RTA
・尿管結石を起こすのは1型(⇔ 2型はくる病が特徴的)
・原因疾患として、1型はシェーグレン症候群やSLE、リチウム、アムホテシリンB、2型はFanconi症候群や多発性骨髄腫、アミロイドーシスなど

Bartter症候群、Gitelman症候群、Liddle症候群
・Bartter/Gitelman症候群では、低K血症、高レニン性高アルドステロン血症で代謝性アルカローシスあり、どちらも常・劣遺伝
・Gitelman症候群では低Ca血症、低Mg血症も(Bartter症候群の場合は病型によって、これらがあったりなかったりする)
・Bartter/Gitelman症候群のいずれも高血圧を伴わないのが一般的
・Liddle症候群では、低K血症、低レニン低アルドステロン血症(ENaC活動性亢進によってNa再吸収が亢進し、体液貯留傾向になる)
※ 低レニン低アルドステロン血症といえば、偽性アルドステロン症も記憶 ★
※ Bartter症候群は新生児や乳幼児期、Gitelman/Liddle症候群は若年者と年齢に差

腎血管性高血圧症
・糸球体輸入細動脈の血圧低下によるRAA系亢進
・ただし、両側性の場合はNa排出ができず、体液貯留傾向になるので、最終的にはRAA系抑制になる(→ レニン低値)

尿崩症
・DDAVP試験で尿量減少や尿浸透圧上昇があれば中枢性、なければ腎性
・中枢性尿崩症に行う負荷試験は、高張食塩水負荷試験AVP低値のまま)
ブドウ糖負荷試験(先端巨大症)、生理食塩水負荷試験原発性アルドステロン症)と混同しないように注意

高カルシウム血症
・速効性のあるフロセミドとカルシトニン、ゆっくり効くビスホスホネート
ビタミンD中毒に対してプレドニゾロンを使うことがある
・サルコイドーシスでは、ビタミンD高値 → CaとIP上昇 → PTH低下

コレステロール塞栓症
・皮膚所見として、livedo reticularis(網状皮斑)が最多、他はgangrene(胼胝)、blue toe(チアノーゼ)など
・血液検査で白血球↑、CRP↑、赤沈↑、血清補体価↓、好酸球
・腎機能障害を起こして蛋白尿が出ることも

von Hippel-Lindau病
・網膜や中枢神経系の血管芽腫、皮膚や粘膜の海綿状血管腫、両側性の腎細胞癌、褐色細胞腫など、合併する疾患が多い

前立腺肥大症
・禁忌薬として、抗ヒスタミン薬や抗コリン薬に加え、三環系抗うつ薬(アミトリプチリン、クロミプラミン)四環抗うつ薬(マプロチリン)、SNRIミルナシプラン)、抗不整脈薬(ジソピラミド、アメジニウム)あたりを押さえておく