つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

《内科専門医試験》代謝・内分泌科まとめ

CYPを誘導する薬物・嗜好品
・代表的なものは、リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタールセイヨウオトギリソウなどで、ステロイドユーザーにこれらの薬剤を使用する場合はステロイド増量を要することも
・喫煙はCYP1A2を誘導
エタノールはCYP2E1を誘導

CYPを阻害する薬物・嗜好品
・代表的なものは、キノロン系、マクロライド系、アゾール系、リトナビル、フルボキサミン、オメプラゾール、シメチジンなど
グレープフルーツジュースはCYP3A4を阻害

核医学検査
・副腎皮質腺腫(Cushing症候群):131I-アドステロールシンチグラフィ ★
・褐色細胞腫:131I-MIBGシンチグラフィ
副甲状腺腫:99mTc-MIBGシンチグラフィ
・神経内分泌腫瘍(NET):ソマトスタチン受容体シンチグラフィ
甲状腺機能評価:123Iまたは99mTcを使用するが、123Iは検査前ヨード制限が煩雑、99mTcは唾液腺への生理学的集積のせいで甲状腺への臓器特異性が低いという問題あり

先端巨大症
負荷試験ブドウ糖75 gで血中GH値が正常域にならない
・血中IGF-1高値、時にPRL高値で乳汁分泌

中枢性尿崩症
・原因として、リンパ球性漏斗下垂体炎、IgG4関連疾患の肥厚性硬膜炎など
・頭部MRIのT1強調画像で下垂体後葉信号消失
・尿量は、3,000 mL/日以上または40 mL/kg/日以上
・下垂体前葉障害を合併して副腎機能低下すると、仮面尿崩症(尿量増加がみられない)

バセドウ病
・前脛骨粘液水腫(× 甲状腺機能低下症では前脛骨粘液水腫を認める)
・治療薬による無顆粒球症に加え、PTUによるANCA関連血管炎も注意
・無機ヨードは長期投与でエスケープ現象あり
甲状腺眼症は、喫煙がリスク、禁煙、ステロイドパルスや放射線外照射で治療
・MMI使用女性には妊娠の早期確認を指導し、妊娠後はPTUまたは無機ヨードへ
・131I内服療法の終了後6か月は妊娠を避ける
・母体合併症がなければ妊婦の甲状腺機能は正常~やや亢進を目標とする(胎児の甲状腺機能を抑えないようにするためらしい)

甲状腺機能亢進症
甲状腺クリーゼではアスピリン禁忌
・妊娠に伴う一過性甲状腺機能亢進は経過観察(hCG上昇が診断の手掛かり)
・Riedel甲状腺炎は稀:IgG4関連疾患、甲状腺組織が線維化しているので甲状腺触診所見は岩石様、無痛性結節

甲状腺機能低下症 ★
・橋本病の合併症は、シェーグレン症候群、悪性リンパ腫、RA、SLE、悪性貧血
・汎発性粘液水腫(× 前脛骨粘液水腫)
・IFN製剤やアミオダロンでは、甲状腺機能亢進症も低下症のどちらも起こりうる
・他の甲状腺機能を低下させうる薬剤:ドパミンステロイド、リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトイン、リチウム、陰イオン交換樹脂、カルシウム、アルミニウム、スクラルファートなど
甲状腺ホルモン分泌系の抑制、末梢での甲状腺ホルモン作用の抑制、CYP代謝の促進、腸管からの吸収抑制といった具合に、機序を考えると暗記量が減るかも?

甲状腺腫瘍
・手術適応:①細胞診で悪性の可能性、②超音波で悪性の可能性、③腫瘍サイズ4 cm以上、④腫瘍が気管・食道を圧迫、⑤腫瘍が縦郭内に進展、⑥美容などで患者が希望
乳頭癌や濾胞癌は未分化転化しうる

副甲状腺機能亢進症
原発性(一次性)副甲状腺機能亢進症では、PTHが近医尿細管でのHCO3-再吸収を抑制して代わりにCl-を再吸収するので、代謝性アシドーシスになる(逆に尿がアルカリ化するので尿管結石ができやすい)
・一次性は、腺腫(80%~)、過形成(15%)、異所性組織、悪性腫瘍
・二次性は、腎不全、低Ca血症、ビタミンD欠乏症
・三次性は、透析に伴う副甲状腺過形成(二次性(腎不全)の長期化)

Cushing症候群 ★
・スクリーニングは、1 mgデキサメタゾン抑制試験(ただし、下垂体性を疑う場合は0.5 mgデキサメタゾン抑制試験で)
・副腎コルチゾル産生腫瘍は、131I-アドステロールシンチグラフィでの局在性集積
・低K血症なので、低Cl性代謝性アルカローシス
・緊急治療薬(ステロイド産生抑制薬)としては、トリロスタン、メチラポン、ミトタンが挙げられ、日本で承認されていないものとしてはケトコナゾールやフルコナゾール、エトミデートもある
・Subclinical Cushing症候群:① 副腎偶発腫あり、② Cushing症候群の臨床徴候なし、③ 血中コルチゾル基礎値正常 → 1 mgデキサメタゾン抑制試験で血中コルチゾル値が5 μg/dL以上(即確定診断)か、3 μg/dL以上か、1.8 μg/dL以上かで診断項目が異なる
※ 1.8 μg/dL以上の場合は、ACTH抑制と日内リズム消失の両方が原則必要(副腎腫瘍摘出後の副腎不全があれば必須ではない)で、日内リズム消失というのは、21-24時の血中コルチゾル 5 μg/dL以上のことを指す
※ 3 μg/dL以上の場合の診断基準は複雑なので捨て問

副腎偶発腫
・非機能性のものが最多で、3 cm越えたら悪性を疑う

褐色細胞腫・パラガングリオーマ
・原因遺伝子として、SDHBやSDHDなど
・造影禁忌、治療はα1遮断薬、典型的には電解質異常なし

多発性内分泌腫瘍(MEN)
・MEN1(MEN1遺伝子):pancreatic (gastrinoma), pituitary (prolactinoma), parathyroid
・MEN2A(RET遺伝子):parathyroid, medullary thyroid, adrenal (pheochromocytoma)
※ MEN1はPPP、MEN2AはPTAと覚えるのだが、すごく混同しやすいのでPPPPTAと心地よくPを四連続させた方がよい
※ 「メンッ」ではない。これは「エム・イー・エヌ」である

原発性アルドステロン症
・多くは副腎皮質過形成によるが(70%)、稀に片側性の副腎皮質腺腫(Conn症候群)
・血圧上昇するが浮腫なし(エスケープ現象)
・低K血症を通じて耐糖能障害や多尿、周期性四肢麻痺代謝性アルカローシス
・PAC/PRA ≥200、PAC ≥60 pg/mLでスクリーニング陽性、確認検査へ
・副腎皮質腺腫が原因として最多で、腫瘍系が小さく画像での視認が難しい(副腎静脈サンプリングをやる理由)

偽性アルドステロン症 ★
・低K血症なので、① 代謝性アルカローシス、② インスリン分泌能低下、③ 体液貯留なので低レニン活性(アルドステロンも低下)
・低レニン低アルドステロン血症の他の疾患として、Liddle症候群

神経性食思不振症
・低栄養でGnRH↓によるエストロゲン↓、CRH↑によるコルチゾル↑、TRH↓によるT3↓などが生じる

Kallmann症候群
・GnRH分泌細胞の遊走障害で嗅球形成不全に
・GnRH分泌低下 → FSH・LH・テストステロン分泌低下 → 不妊
・男性では精子数減少、女性では無月経になる
・治療はテストステロンやhCG/rFSH注射

多嚢胞性卵巣症候群PCOS
・高アンドロゲン血症(LH/FSH比 >2:1 → エストロゲン増加で子宮体癌増加)
インスリン抵抗性あり
・妊娠希望の有無で治療方針を決定:① 妊娠希望なければOCPs + プロゲスチン + メトホルミン、② 妊娠希望あればクロミフェン ± メトホルミン

DiGeorge症候群
・Cleft palatine, abnormal faces, thymic aplasia (T-cell deficiency), cardiac defects, hypocalcemia (parathyroid aplasia)
・22番染色体の11qにおけるmicrodeletionが原因
CATCH-22と暗記している人が多い

カルチノイド症候群
・皮膚紅潮、下痢、腹部疝痛、喘鳴、右心系弁膜症(拘束性心筋症)が主症状
・尿中5-HIAA上昇(セロトニン代謝産物)が診断の手掛かり
・手術治療またはオクトレオチドで治療

急性間欠性ポルフィリン症(AIP)
・急性型(⇔ 皮膚型)→ AIPは光線過敏症なし
・肝性(⇔ 赤芽球性)→ AIPは貧血なし
・常染色体優性遺伝
神経症状(ニューロパチー、意識障害、自律神経障害)あり
・δ-ALA(アミノレブリン酸)上昇あり、尿中コプロポルフィリン上昇なし
※ 鉛中毒では橈骨神経麻痺(下垂手)、δ-ALA・尿中コプロポルフィリン上昇、小球性貧血あり
ポルフィリアはNEJMの総説がチョイ悪な書きっぷりで面白いので必見

糖尿病
・糖尿病性神経障害:動眼神経・顔面神経麻痺で外眼筋麻痺が多いが自然緩解あり、瞳孔症状を欠く複視や眼瞼下垂が起こりやすい(瞳孔回避)
・糖尿病網膜症:緑内障に続いて成人の失明原因の2位
・ボグリボースは劇症肝炎、チアゾリジンは膀胱癌、ビグアナイドはビタミンB12欠乏症と関連しているかも?
・DASC-8(認知・生活機能質問票)を用いた高齢者血糖コントロール目標のカテゴリー分類:Ⅰ(10点以下)、Ⅱ(11~16点)、Ⅲ(17点以上)
・劇症1型糖尿病:アミラーゼ↑、リパーゼ↑、HbA1c正常か軽度上昇
・緩徐進行1型糖尿病:抗GAD抗体またはICA陽性
1型糖尿病関連HLAは、HLA-DR3(全身性エリテマトーデス、バセドウ病、橋本病)とHLA-DR4(関節リウマチ)
・HAIR-AN症候群(インスリン受容体異常症):hyperandrogenism, insulin resistance, acanthosis nigricans
※ 対比すべき概念として、MODYはβ細胞の問題でインスリン分泌低下

 

DASC-8による高齢者の血糖管理目標は実臨床でも結構使っている

 

妊娠と糖尿病
・妊娠糖尿病:75 g OGTTで空腹時 >92 mg/dL、1 hr >180 mg/dL、2 hr >153 mg/dL
・糖尿病合併妊娠:空腹時 >126 mg/dL、HbA1c >6.5%、随時血糖 or 75 g OGTT 2 hr >200 mg/dL/
・妊娠中の血糖管理:空腹時 <95 mg/dL、75 g OGTT 1 hr <140 mg/dL、2 hr <120 mg/dL
・妊婦・授乳婦のエネルギー量は、標準体重×30 + 付加(初期50、中期250、末期450、授乳婦350)kcal/日

骨粗鬆症
脆弱性骨折がある場合のYAMが80%未満で、ない場合のYAMが70%未満 or -2.5SD
・骨代謝マーカーは治療効果判定のため、薬物選択時(変更時も含む)とその後6か月以内に確認すれば保険適用
・骨形成マーカー:PINP(Ⅰ型コラーゲンN端プロペプチド)、OC(オステオカルシン)、BAC(骨型ALP) ※「ピンクの奥歯が生える」と暗記
・骨吸収マーカー:NTX(Ⅰ型コラーゲンN端テロペプチド)、CTX(Ⅰ型コラーゲンC端テロペプチド)、TRAP5b、DPD(デオキシピリジノリン)
・リスク因子は高齢、低BMI脆弱性骨折の既往、両親の大腿骨近位部骨折、ステロイド、関節リウマチ、喫煙、糖尿病、骨形成不全、甲状腺機能亢進症、性腺機能低下症、早期閉経、慢性肝疾患、栄養障害
・骨形成促進薬としてテラパリチド、骨吸収抑制薬としてビスホスホネートやSERM、抗RANKL抗体があり、両方の作用があるのは抗スクレロスチンモノクローナル抗体(月1回皮下注、1年間だけ投与、骨折高リスク症例が適応)

メタボリックシンドローム
・臍レベルの周囲長が男性85 cm、女性90 cm越え(内臓脂肪面積 >100㎤)
※ 他基準も忘れていたら確認を
・善玉のアディポカインはアディポネクチンとレプチンだが、内臓肥満型の場合はアディポネクチン↓・レプチン↑