つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

思いのほか難しいキャリアパス(大学院と博士号)

珍しく(?)、大きな悩みの話……

東京医大に来てからポストに就いていると言うと「え、ポスト!? 出世早すぎない?」みたいな反応が返ってくることが多くて、さぞかし順調なイメージがあるようなのだが、当の本人としては自分のキャリアパスが見通せなくて焦りを感じているというのが正直なところだ。というのも、博士号取得の目途が全く立たないという割と困った問題を抱えている。臨床研究が三度の飯より好きで、趣味感覚で論文を量産しているにも関わらず……。

 

外勤先の300円ランチが割と気に入った(一汁二菜くらいで丁度よい)

 

自分の同期をみていると、既に博士課程に在籍している人もちらほら……。「自分の人生は自分のものなんだから、同期を見て焦ることなんてないじゃないか」とか、「人生100年時代なら1年や2年は誤差範囲だろう」とか、色々と自分に言い聞かせてはいるのだが、やはり不安を拭いきれないのもまた人情。自分もちょっと流されやすいところがあるなぁとため息が出てしまうのである。

 

自分の場合はキャリアパスの順番があべこべになっている点も(有難いことながら)ちょっと厄介だ。というのも、本来であれば大学院生を経て博士号を取得して、その後にポストを得るという順番が基本形である。ところが、自分の場合は先にポストを得てしまっている。科研費を申請できるメリットがあるとはいえ、あんまり前例のない状況の中にあって困惑しているところもあるわけだ。

 

ポストがあって、博士号がない何とも微妙な状態……この状態を解消できないものか、寝転がって天井と眺めながら、色々と考えてみた。まずは論文博士の取得を考えた。業績面であれば問題なく取得できることが分かったので、書類を準備していたのだが、改めて細則を読み直すと結構なお金がかかってしまうことが判明。その額は250万円弱! さすがに割に合わないなと考えて、論文博士の案はいったんボツにした。20代の財布にそのレベルの金額はさすがに厳しすぎる(この額を払うくらいなら大学院でちゃんと勉強したい)。

 

論文博士が駄目となると、どういう形であれ大学院のカリキュラムをしっかりと履修するコースを考えねばならない。しかし、これも困ったことに、コロナ禍の始まりの頃からずっと自分の興味のある分野の研究室を探してきたのだが、該当する研究室が見つからないという問題があった(糸状菌の研究室は極めて少ない!)。それでこの事実にだいぶ長い期間、絶望感を抱いていたのだが、今回たまたまネットサーフィンしていたら、興味の完全ど真ん中ではないにしても割と興味のある基礎研究をやっている研究室を見つけることができた。どこの研究室とまでかは言わないが、これは微かな希望の光だ。

 

さて、その研究室に通ってみたいと思ったは良いものの、異動したばかりの東京医大との兼ね合いを考えないといけない。筑波大学の病院総合内科であれば(後進が育っていることもあって)社会人大学院の形で何とか臨床との両立も可能そうなのだが、いまの職場は少し体力面でハードになっているので、両立可能かはちょっと心配なところがある(自分は体力面では人よりだいぶ劣っているのだ)。おまけに、大好きな教育をやっていくために、「バイキン屋。」を立ち上げたばかりである。「バイキン屋。」はこれからたくさんの企画を矢継ぎ早に出していく予定なのだが、この仕事に関してだけは絶対に手を抜きたくない。

 

そんな感じで、博士号の取得は自分にとっては結構難度の高い問題なのである。贅沢な悩みなのかもしれないが、ここ数年はこの苦悩に苦しめられているわけだ。それで、あまりにも難しすぎるものだから、料理している妻のそばでソファーに寝転がってウーウー唸りながら転がりまわって、そうしているうちに「うるさい!」と妻に怒られるわけだな。で、そんな妻から有難いご一喝をいただいた。

 

「(上司の)K先生に相談すればいいじゃないの!」
「えー、全部洗いざらい相談するの?」
「それくらいには互いに尊敬する間柄なんじゃないの?」
「うーん……人事的に結構デリケートな問題もあるんだよな」
「苦しい事情を正直に言えば許してもらえることもあるから」
「そっかぁ、じゃあ明日は正直に全部白状してみるわい」

 

そういうわけで、次のミッションは上司と自分の進路に関する諸問題を共有すること。見つけた研究室に対してコンタクトをとってみても構わないかとか、社会人大学院をやる場合はどう振る舞うべきかとか。ただ、社会人大学院でやる場合には体力面の問題と金銭面の問題が少なからず生じてくるわけで、それをどのように克服していくかもなかなか頭の痛い問題だ。せめて「バイキン屋。」のコンテンツを、学資金を補填できるくらいに発展させられればベストではあるのだが……。まぁ、でも、順風満帆でないからこその人生……乗り越えるべき壁をひとつひとつこなしていくのが人生……そんなふうに捉えて前向きにやるっきゃない。これが、「修行時代」というものなんだ。