つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

抗MRSA薬のお値段

先日のDr.'s Prime Academiaで、抗MRSA薬のお値段のお話をさせていただいたのですが、バンコマイシンやダプトマイシンのお値段を失念しておりましたので簡単に補足させていただきます。腎機能が正常の患者さん(体重 60 kg)の場合の各薬剤の投与方法は、以下のようになります。

バンコマイシン 1 g, 12時間毎 点滴静注 (2 g/日)
ダプトマイシン 350~600 mg, 24時間毎 点滴静注 (350~600 mg/日)
リネゾリド 600 mg, 12時間毎 点滴静注・内服 (1,200 mg/日)

 

それで、これらの薬剤の薬価をみていくと、

バンコマイシン 0.5 g/瓶 681~1,022円
ダプトマイシン 350 mg/瓶 13,710円
リネゾリド 600 mg/袋 4,963~11,402円
リネゾリド 600 mg/錠 4,970~8,083円

 

ということになります。従って、1日あたりに換算すると

バンコマイシン 2,724~4,088円
ダプトマイシン 13,710~27,420円
リネゾリド(静注) 9,926~22,804円
リネゾリド(内服) 9,940~16,166円

 

結局、どれもお安くないなぁと思いつつも、バンコマイシンは比較的安いという結論です。Dr.'s Prime Academiaでのレクチャーでバンコマイシンもダプトマイシンも、いずれも1日1万円くらいと説明していたかもしれませんが、バンコマイシンはその半分くらいというのが正しいようです(失礼いたしました!)。

 

そう考えると、抗MRSA薬の中でもバンコマイシンが頻用される理由は、「歴史が長い」「コストが安い」の2点にあるという説明で良さそうです。同時に、リネゾリドに関しては後発品の開発が進んでいる印象があり、コストダウンが図られているのもよく分かりました。薬価ってコロコロ変わるので、知識を定期的にアップデートしないといけないですね(反省)。

 

それとダプトマイシンの地味に厄介なところは、1瓶あたり350 mgなので、体重によっては必要瓶数が中途半端になってしまって勿体ない使い方を強いられがちなところでしょうか。時々、このことで相談を受けることがあるのですが、「瓶数のことは致し方なしッ! 気にせずに使ってください」と回答するようにしています。(救える場合の)「命あっての物種」という状況下では、コストを気にしちゃいけないと思うのです。

 

コストといえば、激安の宇奈ととはどう鰻を仕入れているんだろう……?