つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

新鮮なる古習慣

東京医科大学茨城医療センターに赴任してからの大きな変化をひとつ挙げるとしたら、1週間が異様に短く感じられるようになったことだろうか。どうしても創業期の診療科だから、マンパワー不足による予測不可能な事態も度々生じるわけで、日々ピンチに直面しては踏ん張りでそれを乗り切るような、そんな生活をしている。赴任最初の2週間はこの状態が本当にキツかったのだけれど、最近はピンチこそ平常運転ということで少し慣れてきた。どうすれば目の前の問題を、手間をかけることなく解消できるか? そんなことを考える日々がライフハックの連続だ。

 

仕事が忙しくなると同時に、不思議と読書習慣もエスカレートした気がする

 

1週間が短くなった他の要因としては、「新しいこと」を新天地で続々とはじめていることも影響している気がする。「新しいこと」の中にはYouTuberのように完全にゼロから始めたような事柄も含まれているのだけれど、それ以上に、いままで自分がやってきた事柄に新風を吹き込もうと集合知を重視するようになったというのもある。

 

例えば、「抗菌薬物語」と称される一連のレクチャー。その原型は自分が大学5年生の時に既に出来上がっていたわけで、それを学生さんや研修医の先生方を相手にしながら、8年間ずっと改善し続けた結果、いまの「抗菌薬物語」が成立しているわけだ。しかし、Dr.'s Prime Academiaで開業医の先生方を相手にすることで、「抗菌薬物語」の限界に気づくことができた。この気づきをもとに、「逆・抗菌薬物語」を構想し始めていて、そのプロトタイプを各市町村の医師会主催の講演会で試しているところである。対面式のライブを何回か試したのだが、今のところは好評で講演後の質疑応答が大変なことになっているくらいなので、恐らく方向性は間違っていないだろうと確信を強めている。先日なんて、県南の某地区で40分レクチャーしたら、質疑応答コーナーが20問くらいあって、+ 40分もの白熱タイムと化していたし……(汗)。

 

他には、Letter to the Editorの執筆。出版された論文に対して批評を書いて出版社に送るのだが、これは自分が医師4年目の時にひとりで始めたものだ。100%独学なので、誰からも教わらずに徒手空拳でやってきた。自分が筆頭著者のものだと累計で50本くらいはPubMedジャーナルに載せているはずで、Letter名人を自称しては学生さんたちにその方法論を教えているところなのだが、最近になって新しいやり方を取り入れるようになった。というのも、いまの自分の上司は茨城に並ぶ者のいない名将である(臨床・教育・研究の全てが超一流)。そのやり方を模倣しない手はないと思ったのだ。だから、最近自分がLetter to the Editorを執筆する時には必ず上司に見てもらって、その手法から自分にない技を学ぶように努めている —— この際、"5人目の師匠" ということで弟子入りしようかな。

 

要するに、レクチャーにしてもLetter to the Editorにしても、十八番・お家芸の類だからこそ、敢えて他の人(素人も含む)の意見を取り入れてみるというのを試しているわけだな。既にある程度はできる自信があるのだから、意見を聞かずに自己流で続けていても当面は問題はないのだろうけど、敢えてそこに揺さぶりをかけてみたいなぁと思っているのだ。

 

そんな感じで、筑波大学の時から自分の習慣はほとんど変わっていない。毎朝論文を読んだり書いたりしてから出勤するし、読書習慣も疎かにしていない。しかし、このルーチンひとつひとつに新しい何かを取り込むことで、日々を新鮮な気持ちで過ごすことができることを知った。そういう意味では、いったん筑波大学から出て環境を変えたことにも意味があったのではないかと感じられるのである。