つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

医学動画界隈という魔境

2022年8月にYouTuberデビューして、その頃から少しずつ医学教育動画を出すようになった。最初はカメラの角度の問題を某出版社のTさんからご指摘いただいて、撮影の方法を見直した。その1か月後に、先輩医師のN先生から音響設備の悪さを指摘されて、高価なマイクを購入し、同時に顔出しをやめた(曰く、知識系コンテンツだから、美男子ならともかくオッサンの顔は要らんと)。

 

しばらく続けていると、企業案件をいただくようになって12月頃から収益化できるようになり、2023年2月末にCareNeTVに出演したのを契機として加速度的に視聴者数が増えて、さらに企業案件が増えて……とまぁ、そんな感じである。「医者」という肩書きに、素人ながら「クリエイター」という肩書きが追加されたといってもよかろう。この半年間はDr.'s Prime Academiaでも月1~4回ペースで講義しており、それによる宣伝効果も少なからずあったように思う。

 

働き方指南として、後輩に読んでもらいたい一冊(医者にこそ役立ちそう)

 

認知度が上がってから、だいぶ景色が変わった。YouTubeの登録者数は700名弱で、まだまだ収益化できないのだが(競争相手がAdoとかアーニャでは相手が悪すぎる)、それ以外の場所ではそれなりに視聴いただいているようで、各メディアでのランキング争いに加わるようになった。このランキング争いが魔境そのもので、ちょっと辟易としてしまうところがある。

 

嬉しかったのは、2023年3月の間はCareNeTVの首位を維持しつづけられていること。CareNeTVは信頼性の高いコンテンツが多いので、安心してランキング争いを見ていられるのがよい。それで最近、CareNetの皆様のご厚意でCareNeTVの他の番組を視聴することがあるのだが、これが非常に勉強になる。たとえば血ガスの解釈など、分かった気になっていても、ちゃんと人に説明できない事柄が案外多いものだ。面白くて飽きさせないコンテンツが多いのは元から分かっていた。その上で、半信半疑にならず安心して視聴できるよさがある。さすがに老舗だけあって、安定感があるのである。

 

逆に魔境だと感じるのが、MedPeer Channelである。自分のコンテンツが時々首位をとることもあるのだが、競合相手にセンセーショナルな動画が多すぎて、首位を維持するのが極めて難しい。従って、ランキングのトップ10に自分の動画が3本入っている状態を維持することを目標にしている。さすがに真面目系コンテンツだと「セックスのヤバイ話」とか「あの食品は実は危険!?」みたいなコンテンツには絶対勝てないわけで、そういった動画が首位の時は諦めている。

 

ただ、このような魔境で戦っていて気付かされたこともある —— どんなに内容をよくしても、手に取ってもらえなければ話にならないのである。だから、信頼性を維持しつつも、どうすれば手に取ってもらえるかを真剣に考えなければならない。こういった悟りを経て、最近は自分のコンテンツにテンポの良さとか、簡潔さを意識的に取り入れるようにしている。動画編集の力に頼らずに話術を鍛えているところなのである(動画編集をするには時間が足りない!)。

 

新年度からは某出版社との企画も控えているので、視聴者数もさらに増えていくだろう。ますます信頼性が大切になってくる。とにかく長寿番組を目指したい。過激なコンテンツになる必要はなく、ロングセラーを目指したい。そのためには、8割の安定感と、2割の意外性。何より自分自身が楽しんで、誇らしく続けられるようなコンテンツを作っていこうと思うのである。