つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

大人様ランチ690円

最近、何かのニュースで「大人様ランチ」なるものを見かけた。なんでも、とんかつ屋チェーン店のかつやがそういうメニューを始めたようなのだ。基本的に、食事はチェーン店を避けて選ぶようにはしているのだが、SNSなどで話題になったものについては一度自分の目で見て味わってみないと気が済まない性分である。そういうわけで、外勤帰りに「大人様ランチ」を食べてみることにした。

 

なんと$5.10! 安すぎジャパンの極み。「一億総貧乏時代」というやつだな

 

店は大行列だ。老若男女問わずいるところにかつやの凄さを感じてしまう。確かに、かつやの他の定食を食べた時も(食べ過ぎなければ)胃もたれした記憶がないので、万人受けもするのだろう。どんな油を使っているのか、どんな揚げ方をしているのか、そのあたりがどうしても気になってしまう。そんなことを考えながら、10分くらい待っているうちに、カウンター席に通された。

 

周りがみんな「大人様ランチ」を食べている……。中には、全てを混ぜ合わせて原型をとどめていない状態で食べている強者もいたのだが、びっくりするくらいにはみんな「大人様ランチ」。「大人様ランチをお願いします!!」と大きな声で言うのも何だか恥ずかしいなぁと思ったので、「これください!」と指をさして注文したのだが、こういう注文の仕方を日本でやったのは久しぶりだ(漢字を読めない時にやると周りにバレるので要注意!汗)。注文してから運ばれてくるまで結構時間がかかったので、冷たいお茶を飲みながら本を読んでいたのだが、お茶を一気に飲み干したら、店員さんが湯のみヒタヒタまでおかわりを注いできてくれて、石田三成を彷彿とさせるサービスに感服してしまった。

 

運ばれてきた「大人様ランチ」は、まずオムレツ・カレー・キャベツのスクランブル交差点から食べ始めた。一口食べて頭に電撃 —— これはゴーゴーカレーへの宣戦布告だ!! というのも、かつやのカレーを口に運んだのは初めてだったのだが、金沢カレーほどではないにしても、辛くなくてコクがあるルゥだったから。そもそも、自分はかつやにカレーがあることをこの日まで知らなかった。この「大人様ランチ」を皮切りとして知名度を上げ、カレー業界に事業展開を目論んでいるのではないかと直感したわけだな。

 

実はこの「大人様ランチ」に既視感がある。ゴーゴーカレーの出している「メジャーカレー」とコンセプトがほぼ同じなのである。おかずてんこ盛り。ところが、「メジャーカレー」は量があまりにも多すぎて、どうしても継続的な顧客が限られる。あれは正直、半分でいいのだ。並の人間が食べると、必ずお腹を壊す。ところが、その後もゴーゴーカレーから「ハーフ・メジャーカレー」が販売されないまま十年以上もの時が過ぎる。そして、今回の「大人様ランチ」が「ハーフ・メジャーカレー」の代わりに出現してしまったわけ。

 

「大人様ランチ」の強みは、既存のかつやのメニューに使われる材料で作り出せるために追加コストがかかりにくいところにあるのだろう。とんかつ屋に対する需要のパイを奪い合うだけでなく、カレー業界にもローコストで手出ししているのだとしたら、なかなかしたたかだと思う。このクオリティなら、CoCo壱番屋あたりから顧客を奪うのもそんなには難しくないだろう。その一方で、料理の提供に時間がかかっているところを見ると、客あたりの利益はともかく、時間あたりの利益がどれくらい伸びるのかなと疑問に思うところはあった(たぶん、卵に手間がかかるのだと思う)。敢えて「期間限定」としているのも、そのあたりの限界を踏まえてのことなのだろうか。

 

それにしても、かつやは恐ろしいところだ。確かアークランドHDが経営していたよな……と思って、財務諸表を開いてみるのだが、増収増益で営業キャッシュフローも直近数年は右肩上がり。借金も少なそうで、凄いなぁと改めて感心してしまった(なお、ここへの投資はしていないし、今後する予定もない)。そういえば、タイでもかつやを何軒か見かけていて(2018年時点)、海外でしっかりと稼げる企業でもあるのだろう。かつやの企画力は、ぼくら他の業種においても参考になるところがあるかもしれないということで、今後どんなメニューを生み出していくのかは注視していきたいところだ。