つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症・総合診療の話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科に修行しに行きます。ここでの記載内容は個人的見解です。

我らが足元の「少子化」対策

医療機関にとって、梅雨明けは専攻医向けの新歓シーズンが到来したことを意味する。筑波大学附属病院も例外ではなく、各診療科が競うように院内にポスターを貼っては新歓に力を入れてきている状況だ。某内科は某大河ドラマをパロディーにした派手なポスターを掲示した後に(恐らくは偉い人から厳重注意されて)撤去している。某外科のポスターに至っては、夕日を背景に半ば透明化した教授の顔が映し出されていて、「花京院! イギー! アヴドゥル! 終わったよ……」的な雰囲気になってしまっている。まぁ要するに、院内掲示板が学園祭さながらの無法地帯になっているというわけだな。ここぞとばかりに各診療科の医局員の深層心理が垣間見えてしまう(医局員が教授に刃向かえるのはポスターの中だけだ!)。では、病院総合内科も院内にポスターを貼っているかというと、なんと実は……まだである。どういう状況か説明しよう。

 

安定のポステン。美味しいけど、コストプッシュでちょっと値上がり……汗

 

病院総合内科のポスターの大雑把なレイアウトは既にできあがっているのだ。というか、1か月前くらいに自分が作った。それで、「この四角いスペースに集合写真を入れようぞー」という感じで、9割くらい完成した状態にしてある。だから、集合写真さえ撮影できればポスターも即完成。ところが、その集合写真がなかなか撮れない。というのも、病院総合内科のメンバーが完全に揃う曜日が金曜日しかないので、タイミングが限られてしまうのだ。「じゃあ、金曜日に撮ればいいじゃん」という話になるのだが、そうは問屋が卸さなくて、どんなに呼びかけてもなかなか診療科全体で写真を撮る「雰囲気」にならないという問題が生じてしまっている。なぜこうなった……

 

答えは簡単。新歓をやらなくても、向こう1年くらいは困らないから。新歓が効いてくるのは、どちらかといえば2年後、3年後、あるいはそれ以降のお話……これは長期目線の問題なのである。そう考えると、現時点で現場を回しているメンバーの中で新歓がなかなか盛り上がってこないのも致し方なしかなとは思う。ただ、この問題には既視感がある —— そう、少子化問題……これも対策なしで数年単位なら困らないのだが、10年後、20年後というタイムスケールで国を危機に陥れる問題なのだ。なんというか、少子化を放置していた国に怒りたい気持ちも山々だったのだが、自分たちの足元でも似たようなことが生じつつあるのを見ていると、ある程度は致し方なしなのかとも思えてきてしまう。現状に満足すると未来のことに危機感を抱けなくなるのは、人間のサガというものなのかもしれない。

 

さりとて、(あと1か月で離れる身ではあるが)病院総合内科が今後衰退していくのはどうにも気分が悪い。この診療科には愛着がある。それに、他ならぬこの診療科が茨城県において担うべきミッションも、確かにあるはずなのだ。そういうわけで、今後しばらくは新歓などの地固めの重要性を診療科に浸透させていかないといけないなと思っている。10年の計に向けての意識改革。まずは集合写真を撮影して、ほぼできあがっているポスターを完成させること(本当にそれだけのことなのだが……!)。そして今年の新歓を上手く軌道に乗せること。新歓が一度上手くいけば、その成功体験が次年度以降の新歓に向けてのモチベーションにもなるハズ。病院総合内科の黄金時代を今にしないことが、自分にできるせめてもの置き土産だと思っている。

 

……さて、我々のポスターは来週の診療科説明会までに間に合うのか!? (;´∀`)

心電図を学びなおすのだ!

実は最近、こっそりと心電図を学びなおしている。というのも、筑波大学附属病院の病院総合内科では循環器内科出身の指導医が患者さんの心電図を読まれていることもあって、自分はあまり真面目に心電図を読んでいなかったのだが、新しい職場は総合内科医ばかりで循環器内科医によるアセスメントに触れる機会が減ってしまうのである。そうすると、自分で心電図を読んで、責任をもって判断しないといけない。一介のバイキン屋が心電図を読めるはずもなく、慌てて心電図を勉強しなおしているというわけだ。

 

学生時代にも心電図を理解しようと思って勉強していたが、その時は盛大に挫折した。心電図の書籍は、どう読んでも眠くなる。いまの自分は、頭の柔らかさという意味では学生時代よりも劣っているのだろうが、実戦での経験値はそれなりにある……そういうわけで、僅かながらの希望を託して『心電図のみかた、考えかた』(中外医学社)を読み直している。無理なく1日に30~40ページくらい読めるよう、専用の時間も設けた。

 

外来の合間にも少しずつ。分厚い本を寝落ちせずに読む秘訣は、スキマ時間

 

それで数日読んでみて200ページくらいまで進んだのだが、この本は分厚さの割に非常に分かりやすい。そして、トンでもないことに気がついた。自分の心電図の理解度が笑ってしまうくらい低い。極めて初歩的な話ではあるのだが、洞調律の定義からして問題があることに気がついてしまったのだ(P波が見慣れた雰囲気なら洞調律でいいでしょ……くらいの感覚だった)。この医師年数でここまで心電図を知らないのは恥ずかしいものだなと思いながらも、一文一文を噛みしめながら勉強している。後輩たちがカンファレンスで議論していたのってこういう話だったのかと、深く頷きながら読んでいるわけだ。当然ながら眠くなることはないし、今回は挫折せずに学べそうな気がする。

 

コロナ禍やウクライナ問題で最近は下火のようにも見えるのだが、少し前までは学びなおしブームみたいなものがあった。本来であれば売れるわけもない世界史の本とかがよく売れる。だけど、世界史みたいに知の総合格闘技のような科目を受験のためだけに学ぶのも勿体ないわけで、やはり社会経験を積む中で疑問に感じることが出てきて、そういった中で勉強するとまた別の風景が見えてくるもの。心電図の勉強も同じようなもので、大学医学部での講義・実習で勉強するだけでは面白いところまで辿りつけない性質なのかもしれない。

 

 

さて、この本で心電図を学んだ後に、どう実戦に生かそうか。学びっぱなしじゃ、絶対に身につかない。カルテに心電図を読む手順を単語登録機能で覚えさせておいて、読んだ心電図所見を丁寧にカルテに残していくというのが良さそうだな。例えば、「心電図:」と入力すると、心電図所見のチェックリストがバーッとカルテに呼び出される仕様にするとか。自分のようなオールドファッション人間が新しい技を習得するには、やはり型稽古に限るだろう。少しずつでいいから、人並みのレベルになれるよう仕上げていきたいところだ。

《内科専門医試験》血液内科まとめ

白血病総論 ★
MPO染色 >3%:AML(ただし、M0、M5、M7は時に <3%)
MPO染色 <3%:ALL
・特異的エステラーゼ染色陽性:骨髄系M1~M4
・非特異的エステラーゼ染色陽性:単球系M4・M5
※ これらの染色所見の組み合わせでMの何番かを問われる
・B細胞系はCD10・CD19・CD20、T細胞系はCD2・CD3・CD5・CD7
白血病予後不良因子:高齢発症、MDSからの移行、治療関連AL、白血球増加、AMLではM0・M6・M7かつ染色体核型予後良好群以外、ALLではPh染色体陽性
・染色体核型予後良好群: t(15;17), t(8;21), inv(16)
※ イチゴ、ハニー、色はgood prognosis

急性前骨髄性白血病 APL(M3)
・汎血球減少を起こすことがある
・ATRAやATO(亜ヒ酸)投与によるARDS様のAPL分化症候群に対しては、ATRA・ATO中止でステロイド投与

慢性骨髄性白血病 CML
ビタミンB12上昇、好酸球増加、好塩基球増加
・皮膚掻痒、胃潰瘍、肝脾腫による腹部膨満あり
・慢性期は低NAPスコア・白血病裂孔陰性だが、急性転化で高NAPスコア・白血病裂孔陽性に変化
BCR-ABL → ABLチロシンキナーゼ阻害薬(イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ、ポナチニブ)を投与するが、抵抗性の場合は同種造血幹細胞移植検討

骨髄異形成症候群(MDS)★
・染色体異常は5・7・8番に多い
・低リスクで臨床症状なければ経過観察もあり
・臨床症状があれば、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、シクロスポリン、サイトカイン療法などで、5q-症候群であればレナリドミドを使う
・高リスクであれば同種造血幹細胞移植での根治を検討
・移植困難例ではDNAメチル化阻害薬であるアザシチジンを投与
※ アザシチジンの適応を問う問題が頻出、治療アルゴリズム確認を

 

2022年度はMDSの治療アルゴリズムばかり出題されてしんどかった

 

再生不良性貧血
・同種骨髄移植の適応は40歳まで
・ATGを用いない治療法として、免疫病態を疑わないなら酢酸メテロノン(蛋白同化ステロイド)、疑うならシクロスポリン
・免疫病態を疑う病態:➀ PNH形質血球陽性、② トロンボポエチン >320 pg/mL、③ 血小板減少先行、④ 巨核球増加なし、⑤ MCV >100 fL、⑥ 自覚症状が貧血の割に乏しい

真性赤血球増加症 ★
高尿酸血症ビタミンB12上昇、高NAPスコア
・抗ヒスタミン血症もあるので掻痒感が出ることも
・治療は低用量アスピリン血栓予防) + 瀉血 ± ヒドロキシウレア

多発性骨髄腫 ★
・IL-6が関与、血清 or 尿免疫電気泳動ではM-bow形成
・13番染色体欠失は予後不良
・予後因子:血清β2ミクログロブリン、血清アルブミン、血清LDH、染色体異常
・MGUSでは血清M蛋白 <3 g/dLかつ腫瘍性形質細胞 <10%になる

Waldenström’s macroglobulinemia
・Hepatosplenomegaly, lymphadenopathy, retinopathy (sausage-like changes in vein), Raynaud’s phenomenon
・Protein to protein interaction resulting in platelet dysfunction
IgM spike on plasma electrophoresis
・Treatment including plasmapheresis and chemotherapy regimen for MM
・Mean survival of 5 years

悪性リンパ腫
予後不良因子:年齢(≥61歳)、全身状態(PS ≥2)、病期(Ⅲ・Ⅳ期)、節外病変(2つ以上)、血清LDH(正常上限以上)
・R-CHOP療法による拡張型心筋症はドキソルビシンが原因で不可逆性

B細胞リンパ腫
・Burkittリンパ腫はMYC異常でt(8;14) 「バ」=8
マントル細胞リンパ腫はCCND1異常でt(11;14) M = 1V1 = 11
・濾胞性リンパ腫はBCL2異常でt(14;18) “Four” icullar = 14

T細胞リンパ腫
HTLV感染に伴うATLは日本以外に西アフリカやカリブ海地域で好発
・Sezary症候群は菌状息肉症の進行型で、核形状が深くくびれたCD4+の異型大型細胞(cerebriform nuclei)が特徴

原発性骨髄線維症
・巨大脾腫、dry tap、白赤芽球など
・白血球数や年齢をもとに移植適応(唯一の治療)を決定
・移植不適応の場合はルキソリチニブを使うが、適応外の薬剤としてダナゾール、メテノロン、メルファランサリドマイドを使うことも

溶血性貧血
・共通の特徴は、Ret増加、間Bil上昇、便・尿中ウロビリノゲン上昇、Hpt減少
・血管外溶血(脾Mφによる破壊、ヘモグロビン尿なし、ヘモジデリン尿なし、脾腫あり):遺伝性球状赤血球症(浸透圧脆弱性試験)、温式AIHA(Coombs試験)
・血管内溶血(循環血中で破壊、ヘモグロビン尿あり、ヘモジデリン尿あり、脾腫なし):冷式AIHA(Donath-Landsteiner抗体、寒冷凝集素)、PNH(フローサイトメトリー、Ham試験、砂糖水試験)、G6PD欠損症、赤血球破砕症候群、血液型不適合など
※ Ham試験は酸性環境下での溶血、砂糖水試験は電解質フリーでの溶血
※ 冬の帰路をイメージして「冷たい家族はウチで待つ、温かい家族は外で待つ」

特発性血小板減少性紫斑病
・基本治療は、ピロリ菌除菌、ステロイド、脾摘の順番
・小児の場合は自然軽快もあるので最初は経過観察
・緊急時は免疫グロブリン大量投与、ステロイドパルス、血小板輸血
・血小板輸血の適応は、血小板数2万/μL未満、2-3万/μLであれば重篤な出血症状、60歳以上、高血圧症、肉体労働など高活動性の場合

血栓性血小板減少性紫斑病
・5徴:出血傾向、細小血管障害性溶血性貧血、腎機能障害、動揺性精神症状、発熱(溶血性尿毒症症候群と関連づけて前三者を記憶し、後二者を付け加える)
血漿交換療法が第一選択;血小板輸血は病状悪化を招くので原則禁忌

播種性血管内凝固症候群
・基本的に診断基準は、基礎疾患、臨床症状、血小板数、FDP、Fbg、PTを含むが、APTTだけは絶対に含まれない
厚労省基準では「臨床症状」が何なのかが不明
・国際血栓止血学会(ISTH)基準では「臨床症状」が必須でない
・救急医学会の急性期基準ではFbgが使われず、「臨床症状」はSIRS 3項目以上
・FDPの代わりに換算表を用いてD-dimerの数値を使うことも可能(測定キットにより異なる)

Potential indications for splenectomy
・Blood and reticuloendothelial disorders, including hemolysis (hemolytic anemia, thalassemia), leukemia, myeloproliferative disorders (polycythemia vera, myelofibrosis), and ITP
・Infective complications like hydatid and malaria
・Felty syndrome
・Neoplasm
Portal hypertension
・Metastatic storage disorders like amyloidosis and Gaucher disease
・Splenic trauma

血友病
・後天性は第Ⅷ因子に対するインヒビターが原因で高齢者に好発
・インヒビターが形成される原因として、凝固因子の繰り返しの補充がある
・血小板数・機能正常、APTT延長、PT正常、出血時間正常
・クロスミキシングテストのグラフを確認
・凝固因子補充療法だが、軽症~中等症の血友病AならDDAVPも有効
・DDAVPを投与する際には医原性SIADHを避けるために飲水制限も
※ DDAVP helps release extra factor VII

von Willebrand病
・粘膜出血(鼻出血・歯肉出血・消化管出血)が主、関節出血や筋肉内出血なし
・出血時間延長、PT正常、APTT延長
・加齢とともに症状は改善傾向となる

Transplant rejection
・Hyperacute: develop within minutes, treated by cytoxic agents
・Acute: T cell-mediated reactions developing between 5 days and 3 months, treated by corticosteroids, MMF, tacrolimus, and so on
・Chronic: fibrosis developing from months to years, no treatment option

輸血の副作用
・ABO不適合輸血:数分~30分以内の血管内溶血
・Rh不適合輸血:24時間以降に血管外溶血
・TACO & TRALI:輸血後数時間
・輸血後GVHD & 紫斑病:1週間以降

POEMS syndrome
・Polyneuropathy, organomegaly, endocrinopathy, M-protein, skin changes
・Endocrinopathy including DM, Addison disease and hyperthyroidism

 

『せん妄診療はじめの一歩』、再読

医師年数が5年を越えてくると、初期研修医時代から繰り返し読んできた書籍でも「もうそろそろ手元になくても大丈夫かな」と思えてくるような医学書が増えてくる。医師の部屋は学会誌などで常に圧迫されているもので、少しずつ書籍を手放していかないと、歩く場所すらなくなってしまうという大問題に直面してしまうものなのだ。そういうわけで、医師5年目になった頃から自分の手持ちの医学書は研修医の先生たちに配っていって、少しずつ自室の重量を落とすようにしている(と言いつつ、内科学会雑誌が増える一方なので、総重量は増加傾向……)。

 

2014年発行の本だが、今でも十分通用する羊土社の良著

 

『せん妄診療はじめの一歩』(羊土社)も、初期研修医時代に何度も繰り返し読んだ一冊だ。そろそろ研修医の先生に渡したいなと思っているのだが、お世話になった書籍だけに、最後に1回だけ読んでみた。不思議なもので、このような入門書も初期研修医時代とは全く違った視点で読めるようになるところが面白い。個人的に面白いと思った箇所を、コメントをつけながら断片的に列挙していく。

 

夕方からナースコールを連打する,受けもち看護師がベッドを尋ねると,本人は呼んだことも覚えていないということがあり,せん妄が疑われます.

▶ せん妄のプレゼンテーションとして、あまり意識してこなかったかもしれない。夕方以降にすばしっこく行動するなんて聞くと、例えば「夜中になるとベッドとポータブルトイレを目にも止まらぬ速さで行き来する(ただし自尿は出ないし、測定したら残尿もない;一晩で30~100往復くらい)」というのも、せん妄のひとつのプレゼンテーションなのだろうかと思ってしまった。過活動膀胱とせん妄の合わせ技みたいな。いやぁ、最近そういう病棟患者さんでよく相談されるもので……毎度これには手こずっているのだ(汗)。

 

せん妄 — 日内変動 — あり

認知症 — 日内変動 — ない

▶ 当たり前といえば当たり前なのだが、認知症患者の認知機能に日内変動はない(断定)と改めて言われるとハッとするものがあるなぁと思った次第。

 

鎮痛薬であるオピオイドやNSAIDsはせん妄の原因でもあります.

▶ せん妄をコントロールする際に疼痛管理をしっかりとするのは常識。だけど、それが度を越えると裏目に出るかもしれない。NSAIDsは盲点だった。自分の中で「鎮痛こそ正義」みたいなところもあったので少し認識を修正。

 

入院当初はテーブルも整理され,服装も整っていたが,入院1週間頃になると,ゴミが放置されていたり,服装も乱れ,なんとなく薄汚い雰囲気がする.

アセスメント:身の回りの様子を見ると,習慣と思われがちですが,実はせん妄に伴う注意障害があり,整頓や保清ができなくなっている場合があります.

▶ ベッドサイド回診の時に、研修医の先生たちに「この患者さんの机の上には単行本が綺麗に置かれているから、もう医学的には大丈夫」なんてよく説明しているのだが、その逆も成立するのかぁと関心を抱いた一節。

 

抗精神病薬が一体何をするのか,は現在も様々な検討されていますが原文ママ,最終的には「以前ならば気になっていたことがそれほど気にならなくなる」というような変化をもたらすと考えられています.より具体的に言えば,内服する前はあれこれと気になって頭の中を占めていたがその占める割合が減り,意識がはっきりとし,前よりも集中できるようになる,という変化をもたらします.このときの患者さんの体験は「おかしいと思うような考えも浮かぶのだが,以前のように煩わされることがなくなった」ということを話されます.

▶ せん妄患者さんに対してハロペリドールを点滴しながら、効きが出るまでずっと会話していたことがあるのだが、この描写を読むと何となく当時のイメージと整合性があって、納得できる。個人的にせん妄というのは、カラフルでこんがらがった大量のワイヤーが頭の中を占拠していて、インプットとアウトプットの間の邪魔をしているような状態なんじゃないかと勝手に思っているのだが、そういう認識で当たらずともそう遠くないということなんだろうか……。

 

現在ではハロペリドール 10 mg を越えて使用しても治療効果は高まらず,有害事象の発生リスクのみ上がることが統合失調症ではよく知られています.

ハロペリドールは、使っても2アンプルまで!

 

クロルプロマジン:鎮静作用が強いため,入眠,傾眠の有害事象のために上限が限られる傾向がある(dose limiting factor)

▶ 初期研修1年目の時に何も知らずクロルプロマジンコントミン®)を使いまくっていた時期があったなぁ(遠い目)。とりあえず眠らせておけばいい(全然よくない)みたいな。そう、あの時の俺たちはノリと雰囲気だけで相当危ない医療をやっていたんや……。当時あのプラクティスで循環動態の破綻する患者さんが出なかったのは、多分運が良かっただけなのだろう。

 

頻度は少ないのですが,ハロペリドールの静脈内投与により,QTcが延長することが稀にあります.(中略)海外の報告からはハロペリドール 35 mg/日までは心室不整脈との関連は稀と報告されています.

ハロペリドールを使う前には、筋固縮だけでなく心電図もチェックして、QTc延長がある時には使用を避けてきたわけだが、これは杞憂だったということなのだろうか? ちなみに、バイキン屋的にはキノロン系やマクロライド系をQTc延長患者に使うのはご法度。すごく嫌な思い出が何度かあってだな……(汗)。

 

ガイドラインと臨床との格差を感じる理由は,治療のターゲットが何か,というところにあります.セレネース®は,せん妄の注意障害など認知機能障害を改善することを目的に使用しています.セレネース®自体は,興奮を鎮める鎮静効果は弱く,興奮を鎮めることを目的に使用するには不向きです.

▶ せん妄に対してどの薬物を使用するかは、注意障害まわりを狙うのか、興奮まわりを狙うのかで大体決めるのだ……なんて研修医の先生たちに繰り返し伝えているのだが、これがなかなか理解してもらえない(泣)。最近は初期研修医の先生が夜中に病棟から呼ばれることもなくなっていて、働く環境という意味では間違いなくプラスなのだが、こういった臨床経験の面からはマイナスだと思うんだよな。研修医が眠たい目をこすりながら夜中に(危ない)コントミン®を静注していた5年前と、代わりに上級医が呼ばれるので研修医が何もしなくなった現在 —— どちらの方が恵まれているんだろうと考え込んでしまうことがたまーにある。いやまぁ、アラサー医師の独り言でござるよ。こういうことを言っていると後輩から嫌われる。

 

過鎮静が生じたと思われる場合,まず本当に過鎮静かどうかを明らかにします.ときに昼夜逆転が回復していない場合がありますので,夜間の睡眠状況を確認することが誤解を防ぐうえでも大事です.

▶ 夜間大騒ぎして朝になるといびきをかいて眠っている —— この光景を見て過鎮静とアセスメントされてしまっているケースは病棟回診でもよく見かけるよな……。そういう時って、太陽の光を浴びてリズムを取り戻すのがいいのかな? 最近はラメルテオン(ロゼレム®)やスボレキサント(ベルソムラ®)、レンボレキサント(デエビゴ®)など、概日リズムに働きかける薬剤もどんどん使われるようになった —— 便利な世の中になったものだなぁ。新薬といえば、5年前はレベチラセタム(イーケプラ®)やトルバプタン(サムスカ®)だってそんなには普及していなかった。だから痙攣重積の症例を受け持ったが最後、毎晩痙攣発作で呼ばれ、泣きながらセルシン®を打つ初期研修というのも、当時は確かに存在していたのだよ。

 

糖尿病をもっていて非定型抗精神病薬が使いにくい場合 《タイトル》

▶ クエチアピンやオランザピンの日本の添付文書では糖尿病が禁忌に数えられているのだが、なぜ禁忌なのかはちゃんと調べておいてほしい……。どんな経緯で禁忌になったのかを知っているか否かでプラクティスに少し違いが出るかもしれない。もっとも、最近はペロスピロンという凄く便利な薬剤が普及してきたから「クエチアピンを使えないならペロスピロンを使うまでだ!」という考え方もあり……?

 

アカシジアは下肢の不随意運動,不快感がありますので,患者さん自身その運動を止めようとして,膝や大腿部を抑えようとする動作がみられます.

抗精神病薬を使用中の患者さんが落ち着かなくなった時には、せん妄の増悪とアカシジアを鑑別しなければならず、その手掛かりとして「下肢を抑える動作」というのが役立つらしい。言われてみればそんな姿勢をとっていた人もいたような気がするので、注視してみたいものだ。

 

『せん妄診療はじめの一歩』は初期研修医向けに書かれた入門書なのだが、このように年数が経ってから読んでみると、細かい記載のニュアンスなどにも気がつくことができて、なかなか楽しい読書体験であった。とはいえ、書かれていることの大半は既にマスターできているなとも思ったので、この本は病院総合内科を回ってきてくれる研修医の先生の中でも内科志望の後輩に差し上げるつもりである。自分が持っているよりも、そっちの方がきっと本も喜んでくれるだろうから。

《内科専門医試験》代謝・内分泌科まとめ

CYPを誘導する薬物・嗜好品
・代表的なものは、リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタールセイヨウオトギリソウなどで、ステロイドユーザーにこれらの薬剤を使用する場合はステロイド増量を要することも
・喫煙はCYP1A2を誘導
エタノールはCYP2E1を誘導

CYPを阻害する薬物・嗜好品
・代表的なものは、キノロン系、マクロライド系、アゾール系、リトナビル、フルボキサミン、オメプラゾール、シメチジンなど
グレープフルーツジュースはCYP3A4を阻害

核医学検査
・副腎皮質腺腫(Cushing症候群):131I-アドステロールシンチグラフィ ★
・褐色細胞腫:131I-MIBGシンチグラフィ
副甲状腺腫:99mTc-MIBGシンチグラフィ
・神経内分泌腫瘍(NET):ソマトスタチン受容体シンチグラフィ
甲状腺機能評価:123Iまたは99mTcを使用するが、123Iは検査前ヨード制限が煩雑、99mTcは唾液腺への生理学的集積のせいで甲状腺への臓器特異性が低いという問題あり

先端巨大症
負荷試験ブドウ糖75 gで血中GH値が正常域にならない
・血中IGF-1高値、時にPRL高値で乳汁分泌

中枢性尿崩症
・原因として、リンパ球性漏斗下垂体炎、IgG4関連疾患の肥厚性硬膜炎など
・頭部MRIのT1強調画像で下垂体後葉信号消失
・尿量は、3,000 mL/日以上または40 mL/kg/日以上
・下垂体前葉障害を合併して副腎機能低下すると、仮面尿崩症(尿量増加がみられない)

バセドウ病
・前脛骨粘液水腫(× 甲状腺機能低下症では前脛骨粘液水腫を認める)
・治療薬による無顆粒球症に加え、PTUによるANCA関連血管炎も注意
・無機ヨードは長期投与でエスケープ現象あり
甲状腺眼症は、喫煙がリスク、禁煙、ステロイドパルスや放射線外照射で治療
・MMI使用女性には妊娠の早期確認を指導し、妊娠後はPTUまたは無機ヨードへ
・131I内服療法の終了後6か月は妊娠を避ける
・母体合併症がなければ妊婦の甲状腺機能は正常~やや亢進を目標とする(胎児の甲状腺機能を抑えないようにするためらしい)

甲状腺機能亢進症
甲状腺クリーゼではアスピリン禁忌
・妊娠に伴う一過性甲状腺機能亢進は経過観察(hCG上昇が診断の手掛かり)
・Riedel甲状腺炎は稀:IgG4関連疾患、甲状腺組織が線維化しているので甲状腺触診所見は岩石様、無痛性結節

甲状腺機能低下症 ★
・橋本病の合併症は、シェーグレン症候群、悪性リンパ腫、RA、SLE、悪性貧血
・汎発性粘液水腫(× 前脛骨粘液水腫)
・IFN製剤やアミオダロンでは、甲状腺機能亢進症も低下症のどちらも起こりうる
・他の甲状腺機能を低下させうる薬剤:ドパミンステロイド、リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトイン、リチウム、陰イオン交換樹脂、カルシウム、アルミニウム、スクラルファートなど
甲状腺ホルモン分泌系の抑制、末梢での甲状腺ホルモン作用の抑制、CYP代謝の促進、腸管からの吸収抑制といった具合に、機序を考えると暗記量が減るかも?

甲状腺腫瘍
・手術適応:①細胞診で悪性の可能性、②超音波で悪性の可能性、③腫瘍サイズ4 cm以上、④腫瘍が気管・食道を圧迫、⑤腫瘍が縦郭内に進展、⑥美容などで患者が希望
乳頭癌や濾胞癌は未分化転化しうる

副甲状腺機能亢進症
原発性(一次性)副甲状腺機能亢進症では、PTHが近医尿細管でのHCO3-再吸収を抑制して代わりにCl-を再吸収するので、代謝性アシドーシスになる(逆に尿がアルカリ化するので尿管結石ができやすい)
・一次性は、腺腫(80%~)、過形成(15%)、異所性組織、悪性腫瘍
・二次性は、腎不全、低Ca血症、ビタミンD欠乏症
・三次性は、透析に伴う副甲状腺過形成(二次性(腎不全)の長期化)

Cushing症候群 ★
・スクリーニングは、1 mgデキサメタゾン抑制試験(ただし、下垂体性を疑う場合は0.5 mgデキサメタゾン抑制試験で)
・副腎コルチゾル産生腫瘍は、131I-アドステロールシンチグラフィでの局在性集積
・低K血症なので、低Cl性代謝性アルカローシス
・緊急治療薬(ステロイド産生抑制薬)としては、トリロスタン、メチラポン、ミトタンが挙げられ、日本で承認されていないものとしてはケトコナゾールやフルコナゾール、エトミデートもある
・Subclinical Cushing症候群:① 副腎偶発腫あり、② Cushing症候群の臨床徴候なし、③ 血中コルチゾル基礎値正常 → 1 mgデキサメタゾン抑制試験で血中コルチゾル値が5 μg/dL以上(即確定診断)か、3 μg/dL以上か、1.8 μg/dL以上かで診断項目が異なる
※ 1.8 μg/dL以上の場合は、ACTH抑制と日内リズム消失の両方が原則必要(副腎腫瘍摘出後の副腎不全があれば必須ではない)で、日内リズム消失というのは、21-24時の血中コルチゾル 5 μg/dL以上のことを指す
※ 3 μg/dL以上の場合の診断基準は複雑なので捨て問

副腎偶発腫
・非機能性のものが最多で、3 cm越えたら悪性を疑う

褐色細胞腫・パラガングリオーマ
・原因遺伝子として、SDHBやSDHDなど
・造影禁忌、治療はα1遮断薬、典型的には電解質異常なし

多発性内分泌腫瘍(MEN)
・MEN1(MEN1遺伝子):pancreatic (gastrinoma), pituitary (prolactinoma), parathyroid
・MEN2A(RET遺伝子):parathyroid, medullary thyroid, adrenal (pheochromocytoma)
※ MEN1はPPP、MEN2AはPTAと覚えるのだが、すごく混同しやすいのでPPPPTAと心地よくPを四連続させた方がよい
※ 「メンッ」ではない。これは「エム・イー・エヌ」である

原発性アルドステロン症
・多くは副腎皮質過形成によるが(70%)、稀に片側性の副腎皮質腺腫(Conn症候群)
・血圧上昇するが浮腫なし(エスケープ現象)
・低K血症を通じて耐糖能障害や多尿、周期性四肢麻痺代謝性アルカローシス
・PAC/PRA ≥200、PAC ≥60 pg/mLでスクリーニング陽性、確認検査へ
・副腎皮質腺腫が原因として最多で、腫瘍系が小さく画像での視認が難しい(副腎静脈サンプリングをやる理由)

偽性アルドステロン症 ★
・低K血症なので、① 代謝性アルカローシス、② インスリン分泌能低下、③ 体液貯留なので低レニン活性(アルドステロンも低下)
・低レニン低アルドステロン血症の他の疾患として、Liddle症候群

神経性食思不振症
・低栄養でGnRH↓によるエストロゲン↓、CRH↑によるコルチゾル↑、TRH↓によるT3↓などが生じる

Kallmann症候群
・GnRH分泌細胞の遊走障害で嗅球形成不全に
・GnRH分泌低下 → FSH・LH・テストステロン分泌低下 → 不妊
・男性では精子数減少、女性では無月経になる
・治療はテストステロンやhCG/rFSH注射

多嚢胞性卵巣症候群PCOS
・高アンドロゲン血症(LH/FSH比 >2:1 → エストロゲン増加で子宮体癌増加)
インスリン抵抗性あり
・妊娠希望の有無で治療方針を決定:① 妊娠希望なければOCPs + プロゲスチン + メトホルミン、② 妊娠希望あればクロミフェン ± メトホルミン

DiGeorge症候群
・Cleft palatine, abnormal faces, thymic aplasia (T-cell deficiency), cardiac defects, hypocalcemia (parathyroid aplasia)
・22番染色体の11qにおけるmicrodeletionが原因
CATCH-22と暗記している人が多い

カルチノイド症候群
・皮膚紅潮、下痢、腹部疝痛、喘鳴、右心系弁膜症(拘束性心筋症)が主症状
・尿中5-HIAA上昇(セロトニン代謝産物)が診断の手掛かり
・手術治療またはオクトレオチドで治療

急性間欠性ポルフィリン症(AIP)
・急性型(⇔ 皮膚型)→ AIPは光線過敏症なし
・肝性(⇔ 赤芽球性)→ AIPは貧血なし
・常染色体優性遺伝
神経症状(ニューロパチー、意識障害、自律神経障害)あり
・δ-ALA(アミノレブリン酸)上昇あり、尿中コプロポルフィリン上昇なし
※ 鉛中毒では橈骨神経麻痺(下垂手)、δ-ALA・尿中コプロポルフィリン上昇、小球性貧血あり
ポルフィリアはNEJMの総説がチョイ悪な書きっぷりで面白いので必見

糖尿病
・糖尿病性神経障害:動眼神経・顔面神経麻痺で外眼筋麻痺が多いが自然緩解あり、瞳孔症状を欠く複視や眼瞼下垂が起こりやすい(瞳孔回避)
・糖尿病網膜症:緑内障に続いて成人の失明原因の2位
・ボグリボースは劇症肝炎、チアゾリジンは膀胱癌、ビグアナイドはビタミンB12欠乏症と関連しているかも?
・DASC-8(認知・生活機能質問票)を用いた高齢者血糖コントロール目標のカテゴリー分類:Ⅰ(10点以下)、Ⅱ(11~16点)、Ⅲ(17点以上)
・劇症1型糖尿病:アミラーゼ↑、リパーゼ↑、HbA1c正常か軽度上昇
・緩徐進行1型糖尿病:抗GAD抗体またはICA陽性
1型糖尿病関連HLAは、HLA-DR3(全身性エリテマトーデス、バセドウ病、橋本病)とHLA-DR4(関節リウマチ)
・HAIR-AN症候群(インスリン受容体異常症):hyperandrogenism, insulin resistance, acanthosis nigricans
※ 対比すべき概念として、MODYはβ細胞の問題でインスリン分泌低下

 

DASC-8による高齢者の血糖管理目標は実臨床でも結構使っている

 

妊娠と糖尿病
・妊娠糖尿病:75 g OGTTで空腹時 >92 mg/dL、1 hr >180 mg/dL、2 hr >153 mg/dL
・糖尿病合併妊娠:空腹時 >126 mg/dL、HbA1c >6.5%、随時血糖 or 75 g OGTT 2 hr >200 mg/dL/
・妊娠中の血糖管理:空腹時 <95 mg/dL、75 g OGTT 1 hr <140 mg/dL、2 hr <120 mg/dL
・妊婦・授乳婦のエネルギー量は、標準体重×30 + 付加(初期50、中期250、末期450、授乳婦350)kcal/日

骨粗鬆症
脆弱性骨折がある場合のYAMが80%未満で、ない場合のYAMが70%未満 or -2.5SD
・骨代謝マーカーは治療効果判定のため、薬物選択時(変更時も含む)とその後6か月以内に確認すれば保険適用
・骨形成マーカー:PINP(Ⅰ型コラーゲンN端プロペプチド)、OC(オステオカルシン)、BAC(骨型ALP) ※「ピンクの奥歯が生える」と暗記
・骨吸収マーカー:NTX(Ⅰ型コラーゲンN端テロペプチド)、CTX(Ⅰ型コラーゲンC端テロペプチド)、TRAP5b、DPD(デオキシピリジノリン)
・リスク因子は高齢、低BMI脆弱性骨折の既往、両親の大腿骨近位部骨折、ステロイド、関節リウマチ、喫煙、糖尿病、骨形成不全、甲状腺機能亢進症、性腺機能低下症、早期閉経、慢性肝疾患、栄養障害
・骨形成促進薬としてテラパリチド、骨吸収抑制薬としてビスホスホネートやSERM、抗RANKL抗体があり、両方の作用があるのは抗スクレロスチンモノクローナル抗体(月1回皮下注、1年間だけ投与、骨折高リスク症例が適応)

メタボリックシンドローム
・臍レベルの周囲長が男性85 cm、女性90 cm越え(内臓脂肪面積 >100㎤)
※ 他基準も忘れていたら確認を
・善玉のアディポカインはアディポネクチンとレプチンだが、内臓肥満型の場合はアディポネクチン↓・レプチン↑

 

『マレーシア大富豪の教え』:粘るべきか、撤退するべきか

日本では「大富豪の教え」と銘打った本が数多く出版されており、なんとなく2005年前後の「品格」ブームを思い出すところがあるのだが、最近『マレーシア大富豪の教え』なる本を借りて読んだ(図書館で視界に入った本を片っ端から借りて読んでいる)。この本は、日本人実業家がマレーシアに渡って一大事業を起こす道筋を振り返りながら、人生において大切な教訓へと落とし込んでいる一冊だ。内容の一部はダイアモンド・オンラインに掲載されているのでそちらに譲ってしまうが、ほんの一部分だけ紹介したい。

 

装丁もなかなかよい。サクサクッと1~2日で読めます

 

成功するには「誰もいない場所」「誰もしたがらない仕事」を選ぶのが良い。

これはいわゆる「ブルー・オーシャン戦略」(⇔ 血みどろの海「レッド・オーシャン」、激戦区)にも通じるところがある。ただ、自分が面白いと思っているのは、みんながブルー・オーシャン戦略の存在を知っていても、現実世界ではそれを全く実践しようとしていないこと。例えば自分は初期研修医の先生たちを相手に診療科の勧誘をする仕事をしてきたのだが、彼らの本音を聞き出してみるとみんな口をそろえて「周りにサブスぺ(専門診療科)のキャリアで遅れるのが怖い」と言う。要するに、周りと足並みを揃えて生きたいという心理があるわけだ。言うまでもなく、これはレッド・オーシャンで血の洗礼を浴びるコース(まぁ、知らんけど)。そんな有様なので、ブルー・オーシャン戦略がよく知られるようになった現代でさえも、ブルー・オーシャン戦略がかなり有効である。普通、戦略って名のつくものは、手の内がバレたら全く通用しなくなるものなんだけどね……(苦笑)。

 

それで、ブルー・オーシャン戦略の話だけであれば、決して目新しいものではないのだが、『マレーシア大富豪の教え』では「下働き」をブルー・オーシャン戦略のひとつに位置づけているように見えるところに古くて新しいものを感じた。誰もやりたがらない「下働き」を丹精込めて行うこと。これが上司から信頼を勝ち取る近道であると。なるほど、織田信長の草履を温めていた木下藤吉郎を彷彿させる話ではある。どんなに能力があっても、どんなに我武者羅に仕事をしても、なかなか大きなチャンスというものは与えられないものだ。基本的に大きなチャンスは上司つながりでもたらされることが多いことを考えると、「下働き」を丁寧にこなして上司からの信頼を得るというのも、正しいキャリアの歩み方のように思える。

 

信頼される近道は、こちらから信頼することである。

上司から信頼されて仕事を任されると、普段以上に力を発揮できるなんて経験は誰にも覚えがあるのではと思う。特に仕事の規模が大きければ大きいほど、高揚感と勢いで上手くいってしまうなんてことだってある。そして、そんな上司であればこちらだって信頼することができてしまうわけだ。そんなわけで、職場における信頼関係は、一度築き上げることができれば好循環に入るし、築き上げられなければ悪循環に入ってしまう。だったら、自分から率先して謙虚になって、相手を信頼しませんか、という話である。

 

逆によく聞く話として、現場からの叩き上げで昇進したリーダーなんかは往々にして自分のやり方を現場に押し付けがちで上手くいかないことがよくあるようだ。叩き上げリーダーからしてみれば、現場を回している後進が自分よりも未熟に見えてしまうのも致し方あるまい……でも、別に後進は何も考えずにボーッとしているわけではないのだ。彼らは、ちゃんと考えている。ただ、考えるスピードが遅かったり、経験の少なさから決断が後手になりがちだったりというだけの問題に過ぎないのだ。そういうわけで、リーダーは忘れてはいけない —— 後進はモノでも奴隷でもなく、ちゃんと思考する人間であるということを。信頼して彼らが自ら学んで成長するのを見届けるのがリーダーの責務なのだ(もちろん、危ない時には裏からコッソリと援護射撃をするんだけどね)。

 

付き合うべき相手は、フェアか、アンフェアかで判断する。

相手を無条件に信頼していると、騙される時もある。対策としては、人間関係の中で絶交ラインを明確に設けておくのがよいと『マレーシア大富豪の教え』では述べられていて、特に交渉事の前は交渉決裂ラインを事前に決めておかないと上手く話をまとめることができないとのことだ。交渉決裂ラインを越えたら、問答無用で交渉を決裂させる。特に相手がアンフェアを働くような場合は徹底的に抗戦する。なぁなぁで済ませるなということだ。

 

相手のアンフェアに対して徹底抗戦するということは、自分自身の言動が常にフェアなものでなければならないということも意味している。フェアとは何か? ……日本人であれば「卑怯なことはするな」の一言で十分伝わるのではと信じたい。会津出身者なら「ならぬことはならぬものです」でもよい。要は、自分の良心(or 信仰)に逆らうな、世間様に害を与えるような生き方をするなという話。もちろん、フェアの定義が文化ごとにだいぶ異なるというのはあるので、色々な付き合いを経験して自分の器を広くしておくことも大切だとも述べられていた(日本人の常識は華僑の非常識みたいなエピソードが紹介されている)。

 

粘るべきか、撤退すべきかは結局のところ、勘である。

作戦を実行していると、ときおり泥沼化することがある。そうすると、その場で粘るべきか、潔く撤退すべきかを決断しなければいけなくなる。それまでの努力が多大であればあるほど、それを無にしたくないという思いから粘ってしまい、余計事態を悪化させるなんて話はよく聞く —— これは、行動経済学で「サンクコストの誤謬」と呼ばれる現象だ。だったら、泥沼化しそうなら撤退するべしという話になるのだが、それだって正しいわけではない。粘りに粘った末に諦めて撤退した場所のちょっと先に大きなチャンスが転がっていたなんて話は枚挙に暇がないわけで……。

 

じゃあ、撤退ラインをどう判断するか。『マレーシア大富豪の教え』では「紙一重」だから判断するのは難しいと言い切っていた(まぁ、そうだろうなぁ……)。ただ、経験に基づく勘みたいなもので何となく予想することはできる。じゃあ何が大切なのかというと、若いうちにたくさん経験してたくさん失敗して、そこにフィードバックをかけて学びを得て次に役立てること。PDCAサイクルを回すのだ!とまでは書いていなかったが、そういうことなんだろう。少しずつ判断力に改善を重ねていけば、撤退ラインを推定することもある程度のところまでは可能になる。大切なのは、とにかく根性で粘ってみて、時々痛い目に遭って学びを得ること。そうやって得られた洞察力が根性と合わさると、良い味が出てくるというわけだな —— 粘る能力を習得する過程で、洞察力も身につくから、撤退する能力も上手い具合に付随してくる、と。

 

『マレーシア大富豪の教え』というタイトルからは、カネのニオイを感じる人も多いとは思うのだが、内容としては至極真っ当で、むしろ人間として生きるにあたっての基本を再確認している一冊だったように思う。活字慣れしていなくても、読みやすい本なので、是非図書館などで借りて読んでいただきたい。

※ 活字慣れしていなくても読みやすいお勧め本としては、他に『スライトエッジ』も印象に残っている。こちらもつくば駅前の図書館に置いてあるのでどうぞ。

 

《内科専門医試験》腎臓内科まとめ

総論
・PAS染色はメサンギウム器質病変を検出:IgA腎症、急性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎、ループス腎炎
・PAM染色は膜(Maku)病変を検出:膜性腎症(膜にスパイク)、膜性増殖性糸球体腎炎(膜が二重)、ループス腎炎
・気道感染を契機とした血尿の鑑別:① 感染5日以内ならIgA腎症(1週間程度で治る)、② 感染1~3週間後からなら溶連菌感染後急性糸球体腎炎
・急速な経過の血尿の鑑別:① 日~週単位の経過なら抗GBM腎炎、② 週~月単位の経過ならANCA関連腎炎……このあたりも要考慮
・血尿で均一赤血球なら非糸球体性、変形赤血球なら糸球体性(蛋白尿や円柱も手掛かりになる)

急性腎障害
・KDIGOの定義:①ΔCre ≥0.3 mg/dL(48時間以内)、②血清Cre 1.5倍(7日以内)、③尿量 <0.5 mL/kg/hr(6時間以上)
・FENa = (尿Na/血清Na)/(尿Cre/血清Cre)*100
・FENa <1.0% → 腎前性疑い
※ 無尿症例の問題で「尿検査が鑑別診断に有用である」みたいな嫌らしい選択肢を出してくるのが内科専門医試験
・尿中β2マイクログロブリン上昇 → 尿細管障害疑い

慢性腎臓病 ★
・定義として、以下のいずれかが3か月以上持続:①蛋白尿 ≥0.15 g/gCre(尿Alb >30 mg/gCre)、②GFR <60 mL/min/1.73㎡
・CKD重症度分類:GFR区分(G1~G5)と蛋白尿区分(A1~A3)
・GFR区分:G1 90~、G2 60~90、G3a 45~60、G3b 30~45、G4 15~30、G5 ~15
・蛋白尿区分のA2:尿Alb 30~300 mg/gCr(糖尿病性腎症)、尿蛋白 0.15~0.50 g/gCr(糖尿病性腎症以外)
・有病率1,330万人で、成人人口の約13%(8人に1人)
・腎性貧血でフェリチン <50 ng/mLならESA製剤より鉄剤を優先
ESA製剤での治療目標 Hb 11~13 g/d
・ただし、重篤な心血管イベントの既往やHb >12 g/dLの折はESA製剤の減量や休薬を(高血圧予防のため、Hb上昇が0.5 g/dL/日を越えないよう注意)
・担癌患者へのESA製剤は血栓症や予後悪化と関連するので慎重に
※ 腎臓内科専門医への紹介基準が出題(G3a, A1でも40歳以上の場合は「紹介」でなく「生活指導」……このあたりは意地悪だと思うんだ)

 

これだけなら良いのだが、糖尿病性腎症も別個の分類があるからイヤラシイっす

 

ネフローゼ症候群
・定義として必須は、尿蛋白 >3.5 g/日、血清Alb <3.0 g/dL
・参考所見として浮腫、脂質異常症、卵円形脂肪体
・40歳未満は微小変化型;尿蛋白選択性良好 SI <0.2、NSAIDsや造血器腫瘍で発生することもあるらしい
・40歳以上は膜性腎症が最多;膜型ホスホリパーゼA2受容体が一次性の対応抗原;血尿は稀;緩徐進行性
・巣状糸球体硬化症は若年に多く、HIV感染やヘロイン使用が関連;血尿や高血圧合併が多い;ステロイドやシクロスポリン、抗血小板薬、抗凝固薬、LDLアフェレーシス(LDL-C除去でなぜか尿蛋白が減る)など色々と治療がある
・膜性増殖性糸球体は小児や若年成人に多く、血尿合併しやすく、腎機能予後不良HCVやクリオグロブリン血症が有名だがSLEやIEでも発生
・補体が下がるのは、溶連菌感染後急性糸球体腎炎、ループス腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎の3つで「急にループを巻くゾウ」と暗記
コレステロール塞栓症でも補体は下がる

糖尿病性腎症 ★
・透析導入理由の第一位
・低レニン性・低アルドステロン性高血圧症あり(体液量増えているから)
・光顕でKimmelstiel-Wilson結節、capsular drop、fibrin capが特徴的(病理確認)
・糖尿病腎症の病期分類がCKD重症度とは別個に存在:第1期 尿中Alb ~30 mg/gCr、第2期 30~300 mg/gCr、第3期 300~ mg/gCr(尿蛋白 0.5 g/gCr~)、第4期 GFR <30 mL/kg/1.73㎡(尿蛋白・Alb関係なし)、第5期 透析中
・生活療法として、総カロリー 25~30 kcal/kg/日(第4期は30~35 kcal/kg/日)、塩分 6 g/日未満、蛋白質は第1~2期が摂取エネルギーの20%以下、第3期 0.6~0.8 g/kg/日、第4期0.6~0.8 g/kg/日、カリウム制限は第4期に限り1.5 g/日未満
※ 暗記しづらい部分だが、超絶細かい食事療法の問題が頻出のようだ

IgA腎症 ★
・慢性糸球体腎炎では最多(× ネフローゼの中で最多)
※ 慢性糸球体腎炎最多、透析導入最多、ネフローゼ最多を区別して暗記!
ネフローゼ症候群を起こすのは比較的まれ
・メサンギウム領域に免疫グロブリンや補体が沈着(→ PAS染色で見るもの)
・診断基準にIgA >315 mg/dLがあるが、IgA値は予後予測因子でない
・20年以内に40%が末期腎不全、治療はACE-I/ARBや扁摘・ステロイドパルス

紫斑病性腎炎(IgA血管炎)
・小児や若年者に多く、三徴は皮膚症状・腹部症状・関節症状
・悪性腫瘍との直接の因果関係なし
・無症候性血尿や蛋白尿の多くは数週間で自然軽快(対症療法)
・まれに急速進行性糸球体腎炎やネフローゼ症候群を起こして慢性腎不全に移行

アルポート症候群 ★
・Ⅳ型コラーゲンα5鎖の発現異常が原因で、感音性難聴と腎障害(血尿あり)
※ 「Ⅴ型コラーゲンの発現異常が……」みたいな誤文が出ていた
・ACE-I/ARBで進行を抑制する
・同じく血尿を起こす疾患に菲薄基底膜病があるが、こちらは腎障害なく予後良好

高レニン・高アルドステロン血症
・悪性高血圧症、レニン産生腫瘍、褐色細胞腫、腎血管性高血圧症、経口避妊薬、シクロスポリンなど
・腎傍糸球体細胞からのレニン分泌促進因子:① 腎血流低下(立位、Na制限、利尿薬、ANP)、② 交感神経刺激(β1作用、α作用)、③ 尿細管Cl-輸送異常(Bartter症候群、Gitelman症候群)

尿細管性アシドーシス(RTA
・遠位型が1型と4型、近位型が2型
・低K血症と代謝性アシドーシスの組み合わせを見たら、とりあえず1型・2型RTA
・尿管結石を起こすのは1型(⇔ 2型はくる病が特徴的)
・原因疾患として、1型はシェーグレン症候群やSLE、リチウム、アムホテシリンB、2型はFanconi症候群や多発性骨髄腫、アミロイドーシスなど

Bartter症候群、Gitelman症候群、Liddle症候群
・Bartter/Gitelman症候群では、低K血症、高レニン性高アルドステロン血症で代謝性アルカローシスあり、どちらも常・劣遺伝
・Gitelman症候群では低Ca血症、低Mg血症も(Bartter症候群の場合は病型によって、これらがあったりなかったりする)
・Bartter/Gitelman症候群のいずれも高血圧を伴わないのが一般的
・Liddle症候群では、低K血症、低レニン低アルドステロン血症(ENaC活動性亢進によってNa再吸収が亢進し、体液貯留傾向になる)
※ 低レニン低アルドステロン血症といえば、偽性アルドステロン症も記憶 ★
※ Bartter症候群は新生児や乳幼児期、Gitelman/Liddle症候群は若年者と年齢に差

腎血管性高血圧症
・糸球体輸入細動脈の血圧低下によるRAA系亢進
・ただし、両側性の場合はNa排出ができず、体液貯留傾向になるので、最終的にはRAA系抑制になる(→ レニン低値)

尿崩症
・DDAVP試験で尿量減少や尿浸透圧上昇があれば中枢性、なければ腎性
・中枢性尿崩症に行う負荷試験は、高張食塩水負荷試験AVP低値のまま)
ブドウ糖負荷試験(先端巨大症)、生理食塩水負荷試験原発性アルドステロン症)と混同しないように注意

高カルシウム血症
・速効性のあるフロセミドとカルシトニン、ゆっくり効くビスホスホネート
ビタミンD中毒に対してプレドニゾロンを使うことがある
・サルコイドーシスでは、ビタミンD高値 → CaとIP上昇 → PTH低下

コレステロール塞栓症
・皮膚所見として、livedo reticularis(網状皮斑)が最多、他はgangrene(胼胝)、blue toe(チアノーゼ)など
・血液検査で白血球↑、CRP↑、赤沈↑、血清補体価↓、好酸球
・腎機能障害を起こして蛋白尿が出ることも

von Hippel-Lindau病
・網膜や中枢神経系の血管芽腫、皮膚や粘膜の海綿状血管腫、両側性の腎細胞癌、褐色細胞腫など、合併する疾患が多い

前立腺肥大症
・禁忌薬として、抗ヒスタミン薬や抗コリン薬に加え、三環系抗うつ薬(アミトリプチリン、クロミプラミン)四環抗うつ薬(マプロチリン)、SNRIミルナシプラン)、抗不整脈薬(ジソピラミド、アメジニウム)あたりを押さえておく