つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

2023-01-01から1年間の記事一覧

論文をたくさん書くには談義

我輩はとある学会の委員会の末席に連ならせていただいているのだが、そこで先日 忘年会なのかそうでないのかよく分からない会合があった。飲酒してもよいと事前に明言されつつも、ノンアルコールビールを用意された先生方もいて、結局 酔っていいのかダメな…

澤口書店

茨城県に長く留まっていると、時々東京に遊びに行きたくなる。東京に観光スポットなんてあるかと言われそうではあるが、茨城県民からしてみれば東京は結構楽しめる。では、東京のどこで楽しむか。埼玉県民なら距離の近い池袋が妥当なところで、我輩も大学生…

サーティーワンおじさんの自慢ごと

何歳になっても、誕生日を迎えるとそれまでの1年を振り返る癖が抜けない。この1年を形容するとしたら、「交友関係に恵まれた年」ということになるのだと思う。これまでの自分の人生で、他の人の人生よりも何かが優れているというのはあんまり自覚しない。優…

エビデンス天狗

昔からずっと続いていることではないかとも思うのだが、「ベテラン vs ルーキー」の対立構造がなかなか目に余る。「働き方改革」が言われる前は(割とリベラル寄りとされる総合診療界隈であっても)ベテラン医師が若手医師をカンファレンスでボコボコにやっ…

社会学が最近面白い

ここ最近は異様な忙しさである。院内で病棟業務をあんまりやらずに救急外来に特化しているとはいえ、常に何かをやっている気がしていて、なかなか余暇を作り出せないものだ。それでも9月末には妻と伊東温泉に1泊2日で滞在することができたし、この間の週末に…

買えない味と、買えない本

吾輩はケチである。肉を買うにもスーパーを何軒も梯子する。財布を開くのも苦痛な吾輩は、1円たりとも損したくない。だから、豚肉100 gあたりの値段に対してもかなりシビアなのである。自炊にかかるお金が200~300円くらいに落ち着くとガッツポーズして意気…

タテ社会の人間関係 単一社会の理論

いろいろな会社とやり取りしたり、既得権益者と衝突したりしていると、だんだんと社会に対する興味が広がってくるものである。社会構造を通じて日本というのがどういう国かというのを考える機会が増えてくるわけである。基本的に自分は日本には期待しておら…

教育者の育成(FD)備忘録

教育者の育成のエッセンス はじめに Faculty Developmentとは 医学を学ぶ上で目指すべき学習者像 成人学習理論(Malcom Knowles) 経験学習理論(David A. Kolb) インストラクショナルデザイン(Robert M. Gagné) Kirkpatricの研修評価 出典 はじめに 2023…

「改革」という言葉に思うこと

筑波大学を離れて1年以上経ったが、いまだに筑波大学の後輩たちが自分のところを訪れ、近況を教えてくれたり、現場での悩み事を打ち明けたりしてくれていて、筑波大学との縁が切れていないことを幸せに思うことが多い。最近は数か月に1~2回ばかり食事に誘っ…

アイデアのつくり方

マネジメントスキルを鍛えるべく最近は色々な場所で学んでいるのだが、その中でジェームス・W・ヤング『アイデアのつくり方』(阪急コミュニケーションズ)を読むよう勧められたので早速図書館で取り寄せて読んでみた。どうも米国ではクリエイターの必読書、…

ビジネススキル・フレームワーク(メモ)

これはなんだい。 藤田医科大学総合診療科の大杉教授が主催するマネジメント基礎研修プログラムの講義のメモである。 ビジネススキル・フレームワーク 組織を動かす基礎知識として、① マーケティング、② アカウンティング、③ オペレーション戦略に精通してお…

志を真面目に議論する(メモ)

相変わらずこれは何なのか 藤田医科大学総合診療科の大杉教授のもとでマネジメント基礎研修プログラムを聴講しているのだが、その内容をメモしている。今回は「志を育てる」というテーマである(吉田松陰っぽい?)。こういう熱い話に加わるのは嫌いではない…

結果を出すリーダーの働き方(メモ)

■ 唐突にこれは何なのか 藤田医科大学総合診療科の大杉教授のもとでマネジメント基礎研修プログラムを聴講しているのだが、その内容をメモした。今回は「結果を出すリーダーの働き方」というテーマである。ちなみに、次回以降もこのようにまとめるかは不明。…

1,200文字の原稿

執筆業は、自分の中でも割と得意な仕事である。どんなに忙しくても、その場で速攻でこなしてしまう。そして、記事を1本仕上げた後の達成感もなかなかに悪くない。ただ、そんな執筆業でも記事の長さによって得意・不得意のグラジエントがあるということに最近…

その指標はサロゲート・マーカーじゃない

臨床現場において、患者さんが元気になっているのか、それとも病状が悪化しているのかを判断するのは意外に難しい。例えば、腎盂腎炎という腎臓まわりの感染症があって、これは極めてありふれた病気なのだが、適切に診療できる医師は案外少ないものだ。とい…

逆説的に忙しくなった?

業務内容を再編し、臨床から研究・教育へと少し重心を移したのがつい最近の話。すると時間ができて、暇ができて……となるのを期待したのだが、まったくそんなことはなく、却って忙しくなった。ただ、忙しさの質が心地よいものになったように感じる。理由は簡…

タスク再編

白状すると、現在の職場に移ってから仕事に対する気力がわかない状態が続いていた。仕事といっても、職場での本業に対してである。実際のところ「バイキン屋。」を立ち上げて積極的に副業を広げているのも、本業での消化不良感を燃焼するためという側面があっ…

仕事のポートフォリオ

前々からはっきりと自覚していることだが、医師の業務の中では臨床が最も苦手である(嘘でしょ!と言ってくれる人もいるが、マコトである)。自己認識としては、教育が圧倒的に得意で好き。研究は得意かは分からないが好き。臨床は得意になろうとも好きにな…

当世大学生気質

筑波大学附属病院を出て9か月が経った。職場を離れると人の縁も薄れていくものだが、不思議と筑波大学との縁が続いているのはありがたいことだ。月1回は病院総合内科の後輩と必ず食事に行くことにしていて、自分がいなくなった後の診療科がどうなっているの…

翻訳のお仕事

臨床・研究・教育を満遍なくやっていると時間管理が非常に難しいのだが、ここ1週間は途方もなく忙しかった。まず、Dr.'s Prime Academiaの講義のお仕事が1件あった。この仕事は半年前にはじめてから既に10回くらい講義をしていると思うのだけれど、YouTubeと…

億劫チャレンジャー

もともと自分は新しいことをやるのが好きな人間ではないのだが、どこのネジが外れてしまったものか、筑波大学で働きはじめた医師4年目あたりから新しいことに取り組む体質になってしまった。年に1つくらいは新しいことをはじめる。昔の自分だったら考えられ…

医学動画界隈という魔境

2022年8月にYouTuberデビューして、その頃から少しずつ医学教育動画を出すようになった。最初はカメラの角度の問題を某出版社のTさんからご指摘いただいて、撮影の方法を見直した。その1か月後に、先輩医師のN先生から音響設備の悪さを指摘されて、高価なマ…

マインドフルネス

少し前から「マインドフルネス」という言葉が流行している。その意味は、意識的に「いまの一瞬」の感覚に集中し、自分を取り巻く世界への気づきを得ることだそうだ。スピーディーな変化に振り回されている現代社会では、自分の感覚に耳をすますことが蔑ろに…

Yale大学の臨床研究教室

最近、Courseraで海外の大学講義を受けることに夢中になっていることは以前に述べた。2023年のバレンタインデー以降、1日30分くらい講義を受ける時間を作るようになった。チョコレートは1か月経っても食べきれていないくせに(甘いものをあまり食べないから…

相関と因果

毎日のように臨床研究に時間を使っているが、後ろ向き観察研究しかできていない関係上、「因果関係」という言葉には常々高いハードルを感じている。例えば、「絶食は院内での胆嚢炎発症に関連している」とは言えるのだけれど、「絶食は院内での胆嚢炎発症を…

膀胱炎で発熱しない理由(あくまで仮説)

先日、尿路感染症のレクチャーをした際に「なぜ膀胱炎では発熱しないか?」というご質問をいただきました。かなりタフなご質問で、調べても確立した回答に辿り着けなかったわけですが、Mandell(感染症の最大権威とも言える教科書;第9版)に幾つかヒントに…

静嘉堂の曜変天目

朝起きては論文を読み書きし、昼は患者を診察し、夜はレクチャーの準備や撮影をする。そんな生活ばかりをしていると、気がつけば生活のすべてが仕事に占拠されてしまう。そのこと自体は大きな苦痛になっていないものの、少しばかり疲れを感じることもあるし…

English Writing in the Sciences

いまの職場ではボスから自己研鑽に関するさまざまなtipsを教えていただいている。その一環で、異動間もないある日に英語力を磨く方法としてCourseraの "Writing in the Sciences" を受講することを勧められたのだが、その当時は新しい職場に慣れるのにも必死…

タイムカプセル

茨城県土浦市の小学校に通っていたが、6年生のときにタイムカプセルを埋め込もうという話がクラスで出てきた。タイムカプセルを埋め込むこと自体には当時の吾輩もまったく反対でなく、むしろ面白そうだと思っていたのだが、「いつこのタイムカプセルを開ける…

ベンチャー企業

雷門を横目に、人形焼きの甘い匂いや雷おこしを売る快活な声を通り抜ける。そのまま路地裏に入っていくと、そこには一軒のコンビニがある。コンビニの周りには使われていないビルなどが雑然と立ち並んでおり、あまり人気がない。地図で目的地を確認し直すと…