つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

1,200文字の原稿

執筆業は、自分の中でも割と得意な仕事である。どんなに忙しくても、その場で速攻でこなしてしまう。そして、記事を1本仕上げた後の達成感もなかなかに悪くない。ただ、そんな執筆業でも記事の長さによって得意・不得意のグラジエントがあるということに最近気がついた。吾輩が不得意を自覚する文字数は今のところよく分かっていないのだが、とりあえず1,200文字の記事を書くのが割合得意だということは分かった。というのも、本気を出せば20分で気持ちよく仕上げられてしまう。生々しい話をすると、1,200文字の医療記事の相場は5,000~10,000円くらい。兼業ライターとしては悪くないタイパではなかろうか。

 

びくドンで食べたメンチカツ、脂っこ過ぎず美味であった

 

なぜ1,200文字かというと、研修医時代からお世話になっている出版社さんから依頼される連載の文字数が1,200文字だから。暇さえあれば、1,200文字の記事を書く。暇がなくても血液検査の結果待ちの時間などから捻りだして、1,200文字の記事を無理矢理書き上げる。真面目にパソコンを開いて書くこともあれば、何か別の作業をしながら頭の中で書いていることもある。そんな生活を何年も続ける。最初はひとつのテーマで800文字になってしまったり、2,000文字になってしまったりとブレがあったのだが、さすがに20本くらい連載記事を書いたあたりから1,200文字の感覚が腕に沁み込んできて、文字数をカウントすることなくピッタリの文字数の記事を書けるようになったというわけである(校正の過程で増減はするけれど)。

 

1,200文字を得意にして良かったのは、某ポータルサイトも偶然1,200文字の記事を定期的に募集していること。苦手なテーマで募集されていても、スキマ時間を使ってなるべく応募するようにしている。やると決めたら、「起承転結」を300文字 × 4 = 1,200文字で表現する。脳裏に描くは頼山陽の「大阪本町糸屋の娘」。臨床での感動エピソードからウマ娘の話題まで、「諸国大名は刀で殺す、娘二人は眼で殺す」方式で組み立てる。無意識のうちに記事を書き上げ、後で読み返してバチッと「起承転結」が決まっていた時なんかは「してやったり」とニンマリするわけだ。もちろん、バチッと決まった記事が落とされたことは一度もない(逆に落とされた記事はいずれも書き上げた瞬間の手応えが悪かった)。

 

このように振り返ってみると、吾輩が1,200文字を得意とする理由が「起承転結」と相性が良いからなのかもしれないことに思い至る。最初の頃、1,200文字の課題をいただいた時に800文字や2,000文字の記事を書いてしまっていたのは、単純に「起承転結」が上手くできていなかったからなのかもしれない。「起承転結」になり切れていないから、記事全体が歪な形になってしまうわけだ。こうして、文字数を決めるのは内容でなく型であることに改めて気づかされるわけである。