つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

2021-01-01から1年間の記事一覧

専門家は事態の裏で何をしていたのか

今年もコロナ禍が完全には収束することなく終わりを迎えようとしています。自分はあまりの寒さにガタガタ震えながら家で過ごしているくらいで済んでいるので良いのですが、世界的にはオミクロン株の流行への対応が物凄くキツいようで、最近はヨーロッパの先…

ピーターの法則

東京に出稼ぎに行ってなんか変なものを見てしまった…… むかしから能力について疑問に思っていたことが2つある。ひとつめ、ロールプレイングゲームなどで強敵として立ちはだかってくるキャラを倒して仲間にすると、今度は異様なまでに弱体化していて全く役に…

臨床現場における効力感をどう引き出すか

臨床現場におけるティーチングはなかなかに難しい。特に自分自身が教える立場であり、かつ教えられる立場であるからこそ、その難しさを肌身で感じるわけである。自分がちょうど30歳手前であり、教える相手の年齢が大体20~25歳。自分も後輩も子供ではないわ…

医者が買われる時代

家に届く雑誌やチラシにはざっと目を通すことにしている 正直なところ契約した記憶が全くないのだが、大学5年生あたりから自分の住んでいるところに毎月民間医局からDoctor's magazineなる薄めの雑誌が送り届けられている。この雑誌には毎号臨床推論の漫画が…

派を越えて —— 思考訓練としての <宗教>

これまでも何度もこのブログで称賛してやまないのだが、つくば駅前の市立中央図書館は学問への玄関口といった趣きで、足を運ぶ度に面白い本に出会うことができる。面白い本に出会うということは、面白い世界へと誘われるとも言い換えることができる。そんな…

ぽっどきゃすと? それは美味しいのかい?

コロナ禍をきっかけとして、生活のあらゆる面に電子媒体が入り込むようになってきた。1日を過ごす中で画面をのぞき込んでいる時間も飛躍的に増えた気がしていて、特にスマホの「画面を見ている時間は先週から10%増加しました」という表示を見ていると「自分…

祝! 病院総合内科に新しい仲間が増えます!!

実は亀田総合病院に憧れているところが結構あります(初版です) 初代科長が栄転されてから病院総合内科は新体制に移行しているわけですが、嬉しいことに来年度から病院総合内科フィックスの後期研修医の先生が2人入ってくれることになりました。病院総合内…

グルテン・フリー・ダイエットはカラダに良いのか?

芝生の匂い × 屋台の匂い = 少年時代のワクワク感覚! @流山でお仕事後 自分は胡散臭い健康情報が大好きである。なんというか、全く信用していないのだけれど、健康情報を見かけるとつい自分の生活に取り入れて役に立つかどうか検証してしまう癖がある。こ…

メダカの越冬チャレンジが始まりました

辛いものを食べると幸福を感じるらしいと聞き、中辛で食べた @柏の葉 最近とても寒くなってきていて、ついに自分も半袖を諦めて長袖を着るようになった。そんな時期に差し掛かると、毎年困る問題がひとつある。メダカの越冬である。5年ほど前に4尾のメダカ…

漢方薬は面白いんだぞ!?(総論っぽい何か)

半年ぶりの流山おおたかの森、一層栄えていました……(つくば駅からTx 10~20分) おおたかの森に来ると必ず食べるAgoraのハンバーグ。大好きだー! 今日はItoの数多ある趣味のうちのひとつ、漢方の話をさせてください。漢方薬と聞くと、「本当に効くのか分か…

医療現場におけるシフト制の問題

本日の質問:毎日お米をタッパーで持参しているのはなぜ? 回答:職員食堂でご飯1杯にかかる70~80円が勿体ないから。1か月でだいたい1,500円くらいの節約になるので、月3回くらいは休日の1,000円ランチを1,500円ランチに格上げできてちょっぴり幸せになりま…

医療現場でのロジックの限界

最近よく聞かれる質問:意外と少食ですか? 回答:Yes. 食後の眠気がしんど過ぎるので食事量は控えめ。同じ理由で、お菓子も自分から購入して食べることは殆どない。 因みに大学時代の同期で「天才」と呼ばれていた某氏は茶碗7-8杯の白米を食べるのがデフォ…

ナッジとスラッジ

行動経済学という学問分野がある。人間の行動様式にはクセがあり、例えば夏休みの宿題を先延ばしにしてしまったりとか、災害に巻き込まれた時に大丈夫と高をくくって手遅れになるまで自宅に待機してしまったりとか(現在バイアス)、そういったものを扱う学…

今週のNEJMが面白い

大学5年生の頃から欠かさずNEJMを読んでいるが、毎号が面白いかというと、必ずしもそうではない。NEJMは最先端の治療のお披露目の場であることが多く、若手医師の手に届くようなプライマリケア周辺の論文は比較的少ない。結局、若手医師はOriginal articleよ…

初代からのメッセージ

"Hypertrophic cardiomyopathy and dilated cardiomyopathy arepresumed to be different entities". という刺激的な一文から始まる論文 2021年9月29日 17:30-19:00 於 筑波大学附属病院 臨床講義室D※ プライバシーに配慮して固有名詞を一部改変しています。…

科長

突然ですが、病院総合内科の科長が変わります。突然と言っても、これまでも新しい体制がどうのこうのと言っていたわけで、いちおうは仄めかしていたのですが、2021年9月末を以って病院総合内科の体制も大きく変わっていく見込みです。もちろん、診療内容自体…

手に吸い寄せられてしまう一冊

筑波大学附属病院に所属してから1年半、内科専門医資格の取得も目前に迫っているわけだが(専門医試験が延期されずに実施されるなら……)、今後どのように身を振るかまでは確定していない。少なくとも来年度は筑波大に在籍しようと考えているものの、その後は…

コロナ禍でどう長期休暇を過ごすかという苦悩

医師には基本的に休暇というものが存在しないが(病院総合内科は最低週1は休める)、それでも夏季休暇と有給休暇は存在する。それぞれに大体5日から7日程度あてられることになるが、そういった長めの休暇をどう過ごすかが非常に悩ましい今日この頃である。と…

駆け出し無課金勢によるアカデミズム戦略

病院総合内科からこの1年半年で約40本の論文をPubMedや医中誌に載る雑誌に出していて、周囲から「日常生活のルーチンとして論文を出している」とか言われることがあります。実際のところはそこまで気軽なものでもなく、あくまで非日常の営みといいますか、毎…

人生における二大選択肢のあいだ

緊急事態宣言で趣味の図書館通いを奪われた…… 医者人生には様々な選択肢があるが、その中でも最大のものは「出世を狙うか、否か」というものであろう。アカデミズムの中で「出世を狙う」のは容易なことではなく、まず大学医局の苦行を耐えて博士号を取得しな…

「イノベーション = 新しい」……それ本当?

経済学の本をある程度読んだところで、最近は経営学の本も借りて読むことが増えてきたが、読んでいて小難しいと思うことが多い。経営学の本は、個別の企業の振る舞いを集めてきて、そこから一般的な結論を導き出す帰納的手法のものが多いわけだが、その個別…

歴史探訪、人生をめぐる諸問題

最近、衝撃的な書籍を読む機会があった。『生活の発見 場所と時代をめぐる驚くべき歴史の旅』(フィルムアート社)である。非常に地味で、自分の知る限りでは表立って日本で取り上げられたこともなかった本だと思うのだが、この本の存在があまり知られていな…

進歩しているのに不幸せかもしれないぼくら

経済学を全く学ぶことがないまま医師になり、何度も経済学を勉強しては挫折を繰り返し、最終的に医師4年目になってから1年間しっかりと(つくば市立中央図書館にほぼ毎日通いながら)経済学を勉強することで、ようやくほんの少しこの世の成り立ちが分かって…

非専門家の防衛術

Itoは感染症内科を専門に選びつつ総合内科の場で主治医として振る舞っているような立場の人間なので、専門家の目線と非専門家の目線を両方とも知っている。これまで病院総合内科の準(?)公式的立場でジェネラリストとスペシャリストの話をしていたが、今回…

病院総合内科を修了した後のこと

こんにちは、Itoです。梅雨が明けて、猛暑が続くようになりました。病院総合内科にも熱中症の患者さんが増えてきましたが、そのほぼ全例が高体温で入院してくるので、多くが自動的にCOVID-19用の隔離病棟に入ってしまう現状に心を痛めています。もちろん、感…

職場を具体的にどうつくっていくか

2021年7月16日の夜、病院総合内科の説明会にItoも参加して熱弁を振るわせていただきましたが、何名かの研修医の先生方が参加されていて、おのおのが問題意識を持って自分の進路を考えていたことに感銘を受けました。参加いただいた研修医の先生方には是非、…

2021年の梅雨、新歓シーズンになりました!

こんにちは、Itoです。今年の梅雨は時間帯によって雨の降り具合が異なっていて、移動手段を選ぶのが難しいですね。早朝、あまり雨が降っていないものだから自転車で簡単に通勤できるだろうと思っていたら、出かける頃には大雨に変わっていて、急遽バス通勤に…

水戸に似ていながら真逆の結末を辿った国

Itoは歴史学者ではないから、歴史に関しては無意識のうちに嘘を言っているかもしれない。その点は平にご容赦いただきたいが、個人的に茨城県が上手くいっていない遠因は天狗党の乱などの内乱にあると何となく感じている。このことは前回のブログに書いたとお…

僕らは茨城の歴史を知らない

筑波大学附属病院 病院総合内科に来る以前からずっと考えていることがある。なぜ茨城県はなかなか発展していかないのだろうかという疑問だ。物心ついた1990年代半ば、その頃はまだつくば市や土浦市には活気があった。つくば市には西武デパートがあったし、土…

いわゆる「主治医感問題」について思うところ

病院総合内科には数は少ないながらもローテしてくれる初期研修医の先生方がいるので、どう教えるのが良いものか日々悩みながら格闘するのも専攻医以上の仕事です。ここで最も悩ましく思う問題が「主治医感問題」というもの。どういうことかというと、本来は…