つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

青色申告は実際のところどうなのか

この時期、我輩が恐れている行事がひとつある。確定申告だ。実際のところ、確定申告自体はさほど難しい作業ではない。紙上で作業をすると面倒くさいのだが、国税庁のHPを利用してパソコン上で確定申告書を作成すると、自動的に計算をやってくれるので、あっという間に終わらせることができる(ただし、e-taxは複雑怪奇なので諦めている)。ただ、それでも我輩は書類仕事が物凄く苦手で、東大感染症内科にいた頃などは書類仕事を巡ってトラブルが頻発していて、医局長や医局秘書さんに何度も助けてもらっていた。そんな我輩にとっては、たとえ世間一般的に難しくなくとも確定申告が鬼門だったわけだ。

 

土浦駅前の天ぷら「八起」。縁起がいいと思った!

 

さて、そんな我輩の確定申告だが、今回は「バイキン屋。」を開業した関係上、さらにややこしい。通常の確定申告から青色確定申告に変わっており、作業量が増えたからだ。せっかくだからこの1年間を振り返る形で、医者が青色申告をしようとすると実際的にどんな感じになるかを紹介しようと思う。

 

まず、「バイキン屋。」を開業したという事実を国に通知しないといけない。青色で確定申告をしようという前年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を国税庁に提出しないといけないわけだ。例えば、2024年2~3月に青色申告をしたかったら、2023年3月15日までにこの申請書を提出しないといけない。ただ、この申請書の作成はそんなに緊張しなくてもよくて、書面上で求められている情報を粛々と記載すれば十分だ。なお、我輩は執筆業や講義動画がメインなので、「職業欄」に「医療ライター・教師」と書いていて、「間違ってはいないけど、実際のところどうなの?」と首を傾げてしまうような内容になっている。お咎めはなかったので、これくらい大雑把なのは許容範囲なのだろう。

 

次に開業してから確定申告までの約1年間にやることとして、帳簿をつけなければならない(もちろん、定期的に帳簿をつけておかないと、仕訳が溜まってしまって大変なことになる)。青色申告をして55万~65万円の控除を受けるためには、「複式簿記」で帳簿をつけないといけないのだが、これをExcelでやるのは無謀である。必ず会計ソフトを使う必要がある。一方で、会計ソフトは有料のものが多いのが悩ましい。昔から何度も書いている通り、我輩はキング・オブ・ザ・ケチで、「お金がかかるならDIY」主義からも抜け出せない困った性質なのである。そこで、我輩は「クラウド円簿」を利用した。これは無料で使用できる会計ソフトで、他の会計ソフトほど手厚くはないのだが、「バイキン屋。」のような割と単純な業務形態であれば十分間に合う。

 

簿記の勉強は、入門書を2周読んだ。簿記2級のテキストとかもあるけれど、そこまで熱心にやらなくて大丈夫。どのような項目があるかが何となく頭に入っていれば、あとは帳簿をつけるたびに仕訳例をgoogleで検索して真似していれば何とかなる。要は「やりながら覚える」のが正解らしい。実際に「バイキン屋。」の帳簿をつけるにあたって使った勘定科目もそんなに多くはなくて、貸方では「現金」「普通預金」「事業主貸」「水道光熱費」「通信費」「接待交際費」「消耗品費」「会議費」「新聞図書費」「雑費」で事足りる印象で、たまに「売掛金」と「旅費交通費」を使うことがあるくらいである。また、借方では「現金」「普通預金」「売上高」くらいしか使わなかった気がする。要するに、そんなに覚えることは多くなくて、その都度調べていれば何とかなってしまう(もっとも、源泉所得税の扱いとか按分のやり方は慣れないとちょっと面倒くさいし、売掛金の概念も勉強しない限りは意味不明だと思う)。

 

帳簿をつけている中で、「経費で落とす」という言葉の意味を理解することができて勉強になった。「バイキン屋。」の経費で落とせるのは、あくまで「バイキン屋。」の事業に関連する範囲であって、欲張ってはいけない。例えば、「通信費」に関しては論文の情報収集などでWiFiを使いまくっているので、その使った分だけ経費で落とすのはありだと思う。一方で、「水道光熱費」に関しては「バイキン屋。」の事業と関係しない部分も結構あるので、我輩は時間按分で控えめに計上している。なお、どの程度の割合を経費で落とすかは個人の裁量に委ねられてはいるが、欲張ると税務署から電話がかかってくると聞いたので、我輩は控えめに、正々堂々と主張できる範囲で計上している(帳簿をつける時は、必ず頭の中で税務署からの電話シミュレーションをしていて、自信をもって "答弁" できることを確認しているのだよ)。あと、領収書・レシートはちゃんととっておかないといけない。我輩は証拠を残すべく、レシートの裏側に誰とどこで食事したかを記載していて、一緒に食事した相手には「万が一、税務署から電話がかかってきたらゴメン」と一言伝えるようにしていた。

 

土浦駅前の古本屋さんは意外と客が多くて、楽しい空間だった!

 

こうして1年が過ぎ、最も恐ろしい青色確定申告をやることになるのだが、やってみると意外と何とかなるというのが感想。というのも、通常の確定申告との違いとしては、「バイキン屋。」での収入が「雑所得」から「事業所得」になることと、「青色申告特別控除額」の欄の記載が増えることの2点くらいしかないからである。あとは、会計ソフトでコツコツつけてきた帳簿を使って、「青色決算書」なる書類を作らないといけない……が、これもそれまでちゃんと帳簿をつけていればそんなに難しくないことが分かった。会計ソフトで全自動でやってくれるのでな。我輩のコツコツ型の性格とは、まぁまぁ相性の良い仕事だ。

 

なお、我輩の今回の確定申告は結構凶悪で、青色申告だけだったら上記の通りに面倒くさいながらも難しくないのだが、これに加えてMBA取得のためにビジネススクールに通っているものだから、特定支出控除というイレギュラーな要素も加わっていた。個人的には、青色申告よりも特定支出控除の方が難しい気がする。何しろ、確定申告書に特定支出控除の欄が設けられているわけではないので……。特定支出控除については、第一表「所得金額等」の「給与所得」の欄をいじり、第二表の「特例適用条文等」に「所法57の2 XXXX円」と注記をつけて、あとは必要書類を何枚か添付すればよいのだが、初めてだと本当に分かりにくくて難儀した。とはいえ、googleでその都度調べながらやっていたら、なんやかんやで仕上げることができて安堵した。いやぁ、インターネットで専門知識にアクセスできるようになったのには大感謝だよ。

 

青色申告のメリットとして、55万~65万円の控除を受けられることが挙げられる。この節税効果は実際に計算してみると飛び上がるレベルの金額になるわけで、副業推進が国策になっているだけのことはあるなと思った。最大額にあたる65万円控除を受けるには、e-taxでの青色申告書の提出が必要とのことだが、我輩にとってe-taxは難し過ぎたので、55万円控除で満足することにした。かくして、例年確定申告のたびにお金をとられていた我輩も、今回は還付金を受けられそうである。

 

そういうわけで、副業での収入が給与(本業である医療行為)での収入の10%を越える場合には、青色申告に切り替えることをお勧めしたい。幸いにして、最近は書店でも青色申告の入門書がたくさん出ているし、簿記の入門書も図書館で借りられる。そして、この作業を通じて社会をもっと知るきっかけを得られたなとも思うのである。