最近はアウトプットの勢いが激しい。感染症関連のコンテンツについては、現在公開中の医学書院の連載以外にも色々と取り組んでいるし、最近になっては、漢方医学の講演会をやったり、Z世代論や社会正義の対談をやったりと、ひたすらにテーマを広げている状態だ。YouTube動画も頻繁に撮影して投稿するし、論文も週に1本は何かしら書いている(大したものではないが……)。こうしてアウトプットが増えると、インプットとのバランスが悪くなってきて、少々危うさを感じてしまうものだ。
筑波大学附属病院の病院総合内科にいた頃にも感じたことだが、アウトプットが多くなると、「ここから先には進めない」という限界の壁がどこにあるかがはっきりと見えてくるものだ。実際、医学書院の連載では感染症診療のある程度レベルの高い内容も今後扱う予定ではあるのだが、あまり高度になり過ぎないようにも気をつけていた。何しろ、自分が経験してもいないことを、あたかも経験したかのように記述するのは詐欺である。「ここから先は書き進めてはいけない」という本能的直感があったわけである。要するに、「ここから先に書き進めるためには、自分がもっと学ばなければならない」という感覚だ。
時に、先日の漢方医学の講演会をきっかけに、製薬会社さんからの計らいで大御所先生にご紹介いただくという幸運を得た。実に7~8年ぶりに漢方医学の講義を聴講したが、さすが業界でも高難度とされるだけあって、聴講していて背筋がゾクゾクした。まだ自分が知らない処方がこんなにも多く残っているという事実に、戦慄し、歓喜した。漢方に関しても自分は長らくアウトプットばかりで、それで概ね上手くいっている実感もあったのだが、それでも時々「すっきり治しきれない」という壁にぶつかっていたのだ。今回のインプットをモノにできれば、この壁を打ち破れそうな気がした。そこで、さっそく大御所先生に弟子入りしてしまったわけである。今の自分の実力なら、異なる流派のやり方もコンフリクトを起こさずに吸収できる自信がある。
他にもやってみたいことがたくさんあって、現在は様々な分野の知識をインプットしているところである。インプットしていると、突然の閃きがある。その閃きが新規的であることに気がついた時、心底アウトプットしたくなる。バランスをとりながらインプットとアウトプットを同時進行するのが最も身につきやすい。ただ、自分の力量ではアウトプットしきれないような案件もあって、信頼してスキルを外注できるようなパートナーがいてくれたらなぁと思うことも増えてきた。ある程度レベルの高いことをしようとすると、どうしても人脈がモノを言ってくるのが今になってよく分かる。昔はこれが全く分かっていなかった。
そういうわけで、目下の課題は、インプットの強化によるレパートリーの拡充と、アウトプットを支援してくれるパートナーの獲得。しかしまぁ、こうやって悩んでいる時こそが、恐らくは人生で最も楽しいひとときなのかもしれないなとも想像するのである。理想としては、人生の最期までこうして試行錯誤を楽しんでいられればなとも思っている。