つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

Yale大学の臨床研究教室

最近、Courseraで海外の大学講義を受けることに夢中になっていることは以前に述べた。2023年のバレンタインデー以降、1日30分くらい講義を受ける時間を作るようになった。チョコレートは1か月経っても食べきれていないくせに(甘いものをあまり食べないから)、Courseraのカリキュラムは勢いよく消化してしまっている。

 

3つ目のコースを履修完了! 愉快明快なコースだった!

 

医師6年目、7年目にもなると、教わる立場から教える立場に変わってくる。では、これまでしっかりと教わってきた立場かというと案外そういうわけでもなく、自分の知識というのは独学とか現場で培った勘とか、そういった類のものに過ぎない。つまり、自信をもって人に披露できるものではないのである(CareNeTVに出演しておきながらこんなことを言うのもアレだが……)。

 

そんなわけで実に奇妙なことだが、偉そうな顔して教える立場になると、逆に教わりたくなるものである。いつも尿路感染症の講義をしている立場ではあるが、偉い先生が尿路感染症の講義をしていると、つい潜って聞き入ってしまう。いままでは「尿路感染症なんて分かってらぁ!」とばかりに無視していた講義を、だ。そして、そういった講義が自分の講義とどこが同じで、どこが異なっているか、注意深く点検してしまうのである。たまに知らない知識が出てくると、結構焦る。焦りに論文や教科書へと駆り立てられる。この繰り返しが、自分自身を伸ばしてくれる。

 

自分は臨床研究もガンガンやっている。臨床研究は趣味のようなもので、診療で疲れ果てた精神や肉体を癒してくれる至福のひとときなのだ。2023年度を前に論文も70本くらいになるが、それでも臨床研究のことがよく分かっているかというと正直自信がない。分からないなりにも、それなりに成立してしまっているという状態だ。論文が受かった時は、なぜ受かったのかがよく分からない。落ちた時も、なぜ落ちたのかがよく分からない。そんなわけで、臨床研究の講義にも心惹かれるものがあるのだ。

 

そして、CourseraでYale大学の "Understanding Medical Research: Your Facebook Friend is Wrong" が開講されていたので受講したのだが、これが本当に素晴らしかった。ここで解説されている知識、実は講義を受けるまでもなく知っていた。しかし、講師のWilson先生(腎臓内科医)がそういった知識をいろいろな比喩を用いて直観的に説明してくれる。バリエーションに富んだたとえ話に触れているうちに、知っている状態から理解した状態へと変わっていくプロセスが実に心地よかったのだ。

 

腑に落ちる説明、教育の天才かと

 

よい講義とは、中立性を残しながらも知識を解釈の域に高めてくれるような講義のことを指すのだろう。自分の講義もそのレベルを目指していきたいと感じたのだった。海外の名講義が、これからも勘所を教えてくれるに違いない。