つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

社会学が最近面白い

ここ最近は異様な忙しさである。院内で病棟業務をあんまりやらずに救急外来に特化しているとはいえ、常に何かをやっている気がしていて、なかなか余暇を作り出せないものだ。それでも9月末には妻と伊東温泉に1泊2日で滞在することができたし、この間の週末には母親を連れて美術展を鑑賞する時間をとることができた。まことに余暇は貴重である。

 

救急外来を回しながら、1日2,000字は何かの原稿を執筆する日々である。基本的には感染症診療の原稿を書いているのだが、連載が第80回を越えたあたりから内容の難易度が一気に上がっていて(第30回あたりからの難易度とは比較にならない!)、今まで以上に知識を熟成させないと書けなくなってきた。お陰様で、こちらの知識量も爆発的に増えているような気はする。ちなみに、知識を収集していると割とどうでもいいトリビアも身についてくるのだが、そういったものは動画にしてYouTubeに流すようにしている。そんな日々を過ごしているので、困ったことに医者でありながら医療に少々疲れ気味なところがあるのである。

 

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そんな吾輩の息抜きは、医療以外のことを学ぶことである。こんなことを言うと師匠からは必ず怒られてしまうのだが、将来の夢のひとつとして、引きこもって貪るように本を読んでいたいという願望がある。高等遊民みたいなものだ。実際に今でも暇さえあればつくば市立中央図書館か土浦市立図書館のどちらかには足を運ぶようにしている。図書館で本を読みながらうたた寝するのが休日の日課なのである。それに、いまは国際認証MBAを取得するべく大学院で経営学を学ぶ立場でもある。もっとも、カリキュラムの1/3くらいを終え、どうも経営学には自分の学びたかったことがあんまり含まれていないのではと薄々察しはじめているところではあるが……。

 

吾輩は経営学に、周りの人も安心して暮らせるコミュニティづくりの知恵を期待していたのだが、どうにも実際の経営学は、売上と利益をアウトカムとしてひたすらに追求する学問のようなのである(学問と呼ぶには雑多すぎるかも)。そこにいくと、リーダーシップも売上と利益の手段に過ぎないわけで、戦国武将や江戸大名の逸話集が好きな吾輩の嗜好ともズレが生じる。それに、経営学で学ぶノウハウは日本の文化とか価値観とは合わないのではとも感じることが多く、このことは何度かブログでも指摘している通りである(それでも、そんな経営学を上手くアレンジして各々の現場に応用する先輩方もいて、彼らの講義を聴きに行くと大いに勉強になる)。

 

吾輩は自分自身と自分の周囲が幸せになる方法を知りたいだけなのであるが、残念ながら成長至上主義の経営学にその答えはなさそうだ。ただ、経営学の講義を聞いている中で、ちょっと引っ掛かる言葉があった。曰く、経営学とは経済学・心理学・社会学のうち経営に役立つエッセンスを抽出したものとのこと。このうち、経済学は医師3年目から4年目にかけてみっちりと勉強したから、大雑把な内容は把握している。その一方で、心理学や社会学はそこまでちゃんと勉強したことがないことに思い至る。

 

そこでこの数か月は図書館で社会学の本を借りて読むようになったのだが、歴史や哲学ほどではないにしても、経営学の本よりは面白いことに気が付いてしまうわけである。社会学では、世間、国家、家族、友人、ジェンダーなどの雑多なテーマが対象となる。吾輩の生きるこの世界がどう成立しているのかを考察する学問であり(やはり学問と呼ぶには雑多かも)、この世の歪みとか生きづらさがどこから来ているのかを様々な論客が議論する場でもある。そういった議論に触れながら、自分の周りの人間関係を振り返って内省するのも悪くないものだ。なお、吾輩の社会学的な問題意識の中で比較的大きいものとして、「どうすれば『家族』を取り戻せるか?」というものがある ーー 偶然にも、これは医療現場で総合診療をやっていて割と問題になりやすいテーマでもあるのだよな。

 

なにはともあれ、貪るように読書して知識を身につけつつ、時々「朋の遠方より来るあり」みたいな付き合いをする。そんな少々老けた感じの生き方が理想であり、憧れる。しかし、それだと世のため人のためになっていると言えるのだろうかという葛藤も生じてくるわけで、この葛藤をどう自分自身の中で消化していこうかというのが吾輩の悩みの種である。まぁ、華々しい活躍は先輩・同期・後輩たちに任せて、吾輩は晩成型のつもりでのんびり細長くやっていこうかしら、くらいに思っているわけだが。