つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

ジョギング

こんにちは、Itoです。内科専門医資格の追い上げも順調で、症例サマリ記載も29症例中、23症例くらいまでは形になりました。内科専門医資格については、正直いつ取得しても人生にあまり影響ないだろうなと思って後回しにしていたのですが、そんな中で尻を叩いていただいた先生方には感謝しています。

 

COVID-19流行状況が予断を許さない中で、オフの日をどう過ごすか、当惑している研修医の先生方も多いみたいですね。オフの使い方が分からないと家にいてもしょうがない気持ちになってくるわけで、そこから残業メンタリティが生まれてしまうという問題があると思っています。筑波大学附属病院の周りには立派な図書館や公園がありますし、安く食材を買えるスーパーもありますから、知らない分野の本を読んでみたり、ジョギングなどを日課にしてみたり、料理をしてみたりと、新しくて慣れないことにチャレンジしてみるのが良いんじゃないかな。COVID-19流行下でも問題なくできる余暇の過ごし方って探せば意外にたくさんあります。

 

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原価300円 (茨城プライス) で慣れない料理をトライ (焼いたり毟ったりしただけ)

 

ジョギングはItoにとっても長く続く日課です。陸上競技をやっていて大学の部活で中長距離を走っていた時期もありましたが、部活をやめてからの方がよくジョギングをするようになった気がします。ジョギングは孤独で苦しくて、だけれど不思議な満足感のある日課です。いつもひとりで何キロも走っているので、自分自身の精神的な弱さとこれでもかというくらいに向き合わされるわけです。例えば、走っている最中に過換気気味になって、両手が痺れてきて持っている家の鍵を手放しそうになる。ゴールにしている自宅近くになるとついスピードを緩めそうになってしまう。遠くに信号を見かけるとつい、赤信号で自然に止まるようにペースを調整しそうになる。苦しみの中にそんな弱い自分を見つけ、実際にその通りの走りをしてしまっては自己嫌悪に陥るわけです。

 

弱い自分というのは、惰性の中に現れるもの。Itoは学問修行における習慣化を非常に重視していますが、習慣化と惰性は隣り合わせです。あるいは重なっているかもしれない。もともと習慣化の技法をモノにできるような力量の人物であれば、修行を習慣化するだけでは不十分なのかもしれない。ここで、少し習慣化の意義を進めてみるわけです。習慣化は、絶不調の時期における最低限の努力量を担保する仕組みのこと。つまり、習慣化は努力の安定作用以上の効果を持たないのかもしれない。

 

習慣化は学問修行において極めて重要です。けれども、習慣化だけで満足してしまってもいけない。特に、調子の良い日は習慣化のラインからもう一歩、足を踏み出すようにした方がいいのかもしれません。ジョギングしていて自分の精神的な弱さを自覚した時に思うわけですよ。いま速度を緩めるべきか、それとも敢えて加速するべきか。加速したら絶対に胸が痛くて足が痛くなるの違いない。けれども、苦しい時に加速した自分はきっと、昨日までの自分を越えているにも違いないと。苦しいからこそ、少しニヤッとして "I'm going the extra miles now." と自分自身に語り掛けるわけです。

 

苦しい時は、苦しんでいる自分を何とか客観視する。テクニックを使わずに客観視してもいいし、苦しんでいるファクターを箇条書きで書き出すような方法を使って客観視してもいい。そうすることで、苦しい時に妥協してしまって後で後悔するということも減るのではないかと思います。苦しい時の振る舞いにこそ、その人の人間が現れるわけです。古典には「歳寒くして松柏の凋むに遅るるを知る」という言葉がありますし、新渡戸稲造も妥協の心が生じた時はここが正念場だなと自らに語りかけて心を奮い立たせていたみたいですから。

 

ジョギングを題材に精神論的なことを書いてしまいました (もっと濃いことも書けますが、ドン引き不可避なのでやめておきます)。ただ、Itoは実際の研修医教育にあまり精神論を持ち込まないよう注意しています。Itoが研修医の先生に教えているのは、せいぜい習慣化のところまで (どんなに不調でも確実に実力を伸ばす方法)。前に進める時に苦しみを引き千切って思い切り前に進む方法は、実は教えていないんです。それで怪我をしてしまっては元も子もないですから。その分といってはアレですが、COVID-19流行によってポッカリ空いてしまった穴を使って、孤独に耐えて自分自身と向き合う時間を研修医の先生には作ってほしいなとItoは感じています。別に何でもいいんです。ジョギングではなく刺し子にだって似たような要素はあると思いますし。このCOVID-19流行を利用して孤独を修行しておくのは、決して悪い考えではないんじゃないかなと考えます。