つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

内科専門医試験対策がなかなか……

病院総合内科の運営をどうのこうのとやっていると、つい自分が専攻医であることを忘れてしまう。しかし、まだ自分は20代である。実はレジデントの身分だ。ある勉強会では自己紹介した時に「レジデントですよね?」と返されたことがあるのだが、「言われてみればレジデントでした」とすっとぼけた発言をしたこともあった(無意識)。レジデントであるという自覚一切ナシ。しかし、それでも制度には乗っからないといけないわけで、内科専門医試験も受験しなければならないのだ。そういうわけで、昨年度の3月頃からせっせと内科専門医試験のためにお勉強しているのだ。

 

田中清月堂の和菓子はいつ見ても美しい(実は300円未満)

 

具体的に使っている問題集としては、『medicina 2017増刊号 必修内科問題182問』(医学書院)、『QB 総合内科専門医試験 予想問題集』vol. 1, 2(メディックメディア)の合計3冊で、そこに無料で公開されているケアネットのコンテンツとして水曜日の夜に「長門流 内科専門医試験 出るズバッ!LIVE 2022」を視聴したり、土曜日の朝に「THE内科専門医問題集 見るラヂオ」を視聴したりといった具合だ。他に過去問を買ったり、内科学会の問題集を買ったりしてもよいかと一瞬考えたのだが、現金を使いたくないマンだったり(基本的にAmazonギフト券で手に入るものしか買わない主義)、内科学会にお金が流れていくのがなんだか癪だったりの理由で、結局は買わないことにした。自分が汗水たらして稼いだお金が例の症例登録システムの整備に投下されるのなんて想像したくもない……(じゃあ、なぜ機能不全の制度が専攻医の意見ガン無視で全速前進を続けているのかといえば、運営側がいわゆるサンクコストの誤謬に陥っているだけなんじゃないかと個人的には感じているわけで……)。

 

自分は感染症屋さんで、救急的な内容も割と好みではあるのだが、悪性腫瘍の遺伝子変異と分子標的薬との対応どうのこうのとかはちょっと、ねぇ?……という感じである(腫瘍崩壊症候群などのオンコロジック・エマージェンシーは好きだけど)。得意分野と苦手分野があまりにもハッキリとし過ぎているので、どうも対策しづらいなぁと感じている。というわけで、苦手な悪性腫瘍に関しては暗記ノートにまとめて、直前に一気に暗記して試験直後に全部忘れてしまおうという作戦をとるしかない。例えば、t(14;18) は "fourteen" なので「濾ふぉー型リンパ腫」、t(8;14) は「はち」なので「ばーキットリンパ腫」といった感じで無理矢理詰め込んでいる有様だ。試験が終わったら、こんなしょうもない語呂合わせ、サウナに入って脳みそからパーッと飛ばしたるわ!なんて考えている。

 

使わない知識は頭を重くするから嫌なんだ。例えば、仕事で自分の詳しくない知識を使わざるをえない場面に何度も遭遇するけれど、錆びついた記憶の引き出しを無理矢理こじ開けるんじゃなくて、黙ってUp to Date®とか論文とかを読んでしまった方が数百倍適切なプラクティスになると思うのよ。暗記よりもカンニングの方が簡単だし、正確だし、応用も効くしで、日本の医療現場ではカンニングのトレーニングをもっともっとたくさんやった方がいいんじゃないかなぁ(病院総合内科の後輩たちにはカンニングこそ最強と吹き込んでは、折に触れて訓練してもらうようにしている)。ちなみに自分が東大感染症内科にいた頃は、カンファ中にピコピコッ!と絶えず論文PDFの投げ合い合戦が行われていて、それはそれで異様な光景だった。みんなニコニコした顔のまま、手元のスマホで論文を得物に殴り合いしていたわけで……。あの時は日々のカンファが恐ろしくてしょうがなかった。。(汗)

 

時に、『QB 総合内科専門医試験 予想問題集』vol. 2がやたら難しい気がする。なんせ、ほとんどの問題の解説文に付箋が貼ってある。ほぼ全てのページに付箋が貼ってあるせいで、凄く勉強していますオーラを放っているんだが、残念ながらこれは今まで不勉強だったことを反映しているに過ぎない。だって、感染症屋さんが再生不良性貧血の免疫病態がどうのこうのとか、多発性硬化症の再発寛解型がどうのこうのとか、分かるわけないじゃん!(逆に分かっていたらドン引きしませんか?)……まぁ、知らない知識が定期的に出てくるのは知識欲を満たしてくれる要素もあるので、この付箋まみれの有様が嫌というわけでもないのだが。ただ、実際の試験でこのレベルを出されるとしんどいなぁーというのはある。

 

付箋だらけ。対策ヤバめでございます

 

問題集を解いていると、ちゃんと勉強していない分野が分かるというのはありがたいことだ。ただ、どちらかといえば、試験対策のためではなくて日常学習のために問題集を解いていたい気持ちがある。個人的には、MKSAP(米国内科医のための問題集)を毎日解いて知識をアップデートしたい気持ちが強いのだが、このMKSAP、なんと10万円近くしてしまうのだ!! 何度も南江堂のページを開いては、ため息をついてページを閉じることを繰り返してしまっていて、「いやいや、これは自己投資だから」と自分に言い聞かせてまたページを開くのだけれど、結局はページを閉じてしまう。我ながらどんだけケチなんだか。ケチもこのレベルに達すると、ただの馬鹿である。せめて、しょうもない思考に陥らないためにも、軍資金をしっかりと稼がにゃならん。

 

そう考えると、内科専門医試験の受験料3万円も馬鹿にならんなぁと思うわけである。USMLEは救いようのないレベルのぼったくりだと思うのだが、内科専門医試験も十分ぼったくり。過剰対策でも過小対策でも最終的には損をするとなると、どのあたりが妥当なんだろうか。受験が終わったら、病院総合内科の後輩たちに実体験を踏まえたアドバイスを残していかなければいけないなぁと思うわけである。自分が感じた苦労を後輩たちにはさせたくないんだもの。

 

受験票が届いたはいいが、横浜会場があまりに遠すぎて寝坊確定説