つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

ビジネススキル・フレームワーク(メモ)

これはなんだい。

藤田医科大学総合診療科の大杉教授が主催するマネジメント基礎研修プログラムの講義のメモである。

 

ビジネススキル・フレームワーク

組織を動かす基礎知識として、① マーケティング、② アカウンティング、③ オペレーション戦略に精通しておく必要がある。利益や損益は、収益と支出の差額であり、収益を増やすか、支出を減らすかの対応が必要である。そのための活動の打ち手がマーケティングやオペレーション戦略であり、活動の結果がアカウンティングである。

 

びっくりドンキーのモーニングが好きですが、ポテサラトースト美味いっす

 

マーケティング

マーケティングとは、顧客の満足を軸に売れる仕組みをつくる行為のことで、そのためには市場の動向を把握しないといけない。例えば、医療では患者さんから信頼を得て、選択してもらうことが大切である。大塚製薬を例にとると、ポカリスウエットには明確な顧客想定がある。ひとつは子供のいる母親で、この世代に信頼のある俳優を起用して、家事・育児の場面を題材にCMを作ってPRを行っている。もうひとつは中高生で、学校の自動販売機を占有することを意識するなどの工夫を行っている。

マーケティングの取り掛かりは、外部環境と内部環境の分析である。様々なフレームワークが存在するが、例として3C分析ではCustomer(市場)、Competitor(競合)、Company(自社)を分析する。CustomerやCompetitorは自社でコントロールできない外部環境であり、その分析を踏まえてコントロール可能な内聞環境であるCompanyを分析するという順番が大切である。

Customerには市場規模や成長性、ニーズ、購買決定プロセスなどが含まれる。医療であれば、人口動態の現在と未来、診療科関連の国策などを意識する。Competitorには競合の数、参入障壁、競合の戦略やパフォーマンスが含まれ、ブルーオーシャン戦略の採択が必要である。また、Companyには自社の強みや弱みが含まれる。そして、Customer& Competitor(外部環境)分析からKey Success Factor(KSF)を導き出すことが必要である。なお、複数のKSFが候補に挙がるかもしれないが、遵守すべきものをKSFとしてひとつ選び出すとよい。また、Decision Making Unit(DMU)に確実にアプローチすることを意識したい。DMUとは意思決定関係者のことで、意思決定者、ユーザー、インフルエンサー、購買者、ゲートキーパーの5つを指している。エンドユーザーが必ずしも意思決定するとは限らないことに注意が必要である。

 

アカウンティング

お金の話だが、要は複雑な企業の活動を定量化・可視化することである。財務諸表には損益計算書貸借対照表キャッシュフローが含まれる。そのうち、損益計算書では収益、費用、利益をチェックすることができる。利益は売上と費用の差であり、売上は単価と回数の乗算である。従って、利益を増やすには売上を増やすか、費用を減らすか。売り上げを増やすためには単価を増やすか、回数を増やすかである。医療関連であれば、重症患者にフォーカスすることで単価を増やしたり、利用者数を増やすことで回数を増やしたりする。こういった要素を踏まえて、職員定数、つまりは常勤職員の数などを調整して費用を最適化していく。費用は5大費用区分として、人件費、材料費、設備関係費、経費、委託費に大別されるが、それが適切に振り分けられているかは同業態の他社と比較してみると評価しやすいかもしれない。また、固定費と変動費を意識的に区別し、損益分岐点となる顧客数の目標を定めるとよいだろう。

 

オペレーション戦略

経営戦略のためにはこまごまとしたオペレーション戦略を構築する必要がある。理念のための戦略を構築するには、労働生産性を向上させる必要があるのである。労働生産性とは得られる成果物を投入したリソースで割ったものであり、向上のためにはアウトプット、プロセス、インプットの三者の最適化をすることになる。アウトプットの最適化には、業務量の平準化や閑散期の別業務の導入が挙げられる。プロセスの最適化には、効率的かつ合理的な方法の模索が挙がるが、休暇による体力温存や外部委託も含まれる。インプットの最適化には、繁忙期と閑散期とで投入資源を差別化するなどが挙げられる。重要なのは、アウトプット、プロセス、インプットの順番で最適化案を立てていくことである。なお、日本の医療現場の問題点は、オペレーション戦略ができていない現場ばかりだということである。患者数が多い時に医者を増やすことしか考えられていない医療現場があまりにも多い。インプットだけを、それも最初に考えてしまっているという点で下策中の下策なのである。オペレーション戦略を学ぶにはトヨタ式の「カイゼン」を参考にするとよい。シミュレーションや実行の中で、ボトルネックを特定する努力を怠らないようにする。その心は、「早く早く」というよりは「楽に滞りなく」というところにあることも忘れない。

 

最後に

医療にお金の話を持ち出すのは、医療の継続性のためである。経営に背を向けずに、向き合い続けなければ、医療を続けることはできない。