つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

ジョギング

こんにちは、Itoです。内科専門医資格の追い上げも順調で、症例サマリ記載も29症例中、23症例くらいまでは形になりました。内科専門医資格については、正直いつ取得しても人生にあまり影響ないだろうなと思って後回しにしていたのですが、そんな中で尻を叩いていただいた先生方には感謝しています。

 

COVID-19流行状況が予断を許さない中で、オフの日をどう過ごすか、当惑している研修医の先生方も多いみたいですね。オフの使い方が分からないと家にいてもしょうがない気持ちになってくるわけで、そこから残業メンタリティが生まれてしまうという問題があると思っています。筑波大学附属病院の周りには立派な図書館や公園がありますし、安く食材を買えるスーパーもありますから、知らない分野の本を読んでみたり、ジョギングなどを日課にしてみたり、料理をしてみたりと、新しくて慣れないことにチャレンジしてみるのが良いんじゃないかな。COVID-19流行下でも問題なくできる余暇の過ごし方って探せば意外にたくさんあります。

 

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原価300円 (茨城プライス) で慣れない料理をトライ (焼いたり毟ったりしただけ)

 

ジョギングはItoにとっても長く続く日課です。陸上競技をやっていて大学の部活で中長距離を走っていた時期もありましたが、部活をやめてからの方がよくジョギングをするようになった気がします。ジョギングは孤独で苦しくて、だけれど不思議な満足感のある日課です。いつもひとりで何キロも走っているので、自分自身の精神的な弱さとこれでもかというくらいに向き合わされるわけです。例えば、走っている最中に過換気気味になって、両手が痺れてきて持っている家の鍵を手放しそうになる。ゴールにしている自宅近くになるとついスピードを緩めそうになってしまう。遠くに信号を見かけるとつい、赤信号で自然に止まるようにペースを調整しそうになる。苦しみの中にそんな弱い自分を見つけ、実際にその通りの走りをしてしまっては自己嫌悪に陥るわけです。

 

弱い自分というのは、惰性の中に現れるもの。Itoは学問修行における習慣化を非常に重視していますが、習慣化と惰性は隣り合わせです。あるいは重なっているかもしれない。もともと習慣化の技法をモノにできるような力量の人物であれば、修行を習慣化するだけでは不十分なのかもしれない。ここで、少し習慣化の意義を進めてみるわけです。習慣化は、絶不調の時期における最低限の努力量を担保する仕組みのこと。つまり、習慣化は努力の安定作用以上の効果を持たないのかもしれない。

 

習慣化は学問修行において極めて重要です。けれども、習慣化だけで満足してしまってもいけない。特に、調子の良い日は習慣化のラインからもう一歩、足を踏み出すようにした方がいいのかもしれません。ジョギングしていて自分の精神的な弱さを自覚した時に思うわけですよ。いま速度を緩めるべきか、それとも敢えて加速するべきか。加速したら絶対に胸が痛くて足が痛くなるの違いない。けれども、苦しい時に加速した自分はきっと、昨日までの自分を越えているにも違いないと。苦しいからこそ、少しニヤッとして "I'm going the extra miles now." と自分自身に語り掛けるわけです。

 

苦しい時は、苦しんでいる自分を何とか客観視する。テクニックを使わずに客観視してもいいし、苦しんでいるファクターを箇条書きで書き出すような方法を使って客観視してもいい。そうすることで、苦しい時に妥協してしまって後で後悔するということも減るのではないかと思います。苦しい時の振る舞いにこそ、その人の人間が現れるわけです。古典には「歳寒くして松柏の凋むに遅るるを知る」という言葉がありますし、新渡戸稲造も妥協の心が生じた時はここが正念場だなと自らに語りかけて心を奮い立たせていたみたいですから。

 

ジョギングを題材に精神論的なことを書いてしまいました (もっと濃いことも書けますが、ドン引き不可避なのでやめておきます)。ただ、Itoは実際の研修医教育にあまり精神論を持ち込まないよう注意しています。Itoが研修医の先生に教えているのは、せいぜい習慣化のところまで (どんなに不調でも確実に実力を伸ばす方法)。前に進める時に苦しみを引き千切って思い切り前に進む方法は、実は教えていないんです。それで怪我をしてしまっては元も子もないですから。その分といってはアレですが、COVID-19流行によってポッカリ空いてしまった穴を使って、孤独に耐えて自分自身と向き合う時間を研修医の先生には作ってほしいなとItoは感じています。別に何でもいいんです。ジョギングではなく刺し子にだって似たような要素はあると思いますし。このCOVID-19流行を利用して孤独を修行しておくのは、決して悪い考えではないんじゃないかなと考えます。

内科専門医のタスクをやってみて

タイトルのごとく内科専門医資格の取得に向けて猛烈にサマリーを記載しているItoです。29症例分のサマリーを提出しないといけないのですが、この2週間で17症例分記載したので、2021年4月中には何とかなると思います。茨城県北の市中病院での初期研修2年と東大感染症内科での専門研修1年を経て、現在は筑波大学附属病院の病院総合内科の2年目に突入している状況ですが、後方視的に見ると、病院総合内科で研修するのは内科専門医資格の取得にはかなり有利だと思います。

 

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Paella Dinning Poco Loco (つくば市): 自粛中のささやかな幸せ

 

J-OSLERは簡潔な症例の概要記載を160症例分、参考文献つきのちゃんとしたサマリーを29症例分書かないといけなくて、先輩方からは結構大変だという噂を聞いていたのですが、やってみるとそんなにキツくはないと感じました。少なくとも、サマリー29症例分の部分については病院総合内科での研修で間に合います (稀な疾患である必要がないため)。

 

簡単に症例の概要を記載する160症例分のところも、病院総合内科で9割近くカバー可能です。病院総合内科に居続けるだけでストレスフリーにやれる良さがあります。ただし、残りの1割の症例でちょっと苦戦するので、今後病院総合内科に入りたいという先生方のためにも、ちょっとだけアドバイスを残しておきます。まだ知名度が低いから、病院総合内科に来たいという人、いないかな?

 

まず、消化器、循環器、代謝、腎臓、呼吸器、アレルギー、感染症、救急の枠については、何も考えなくても症例数が多いので、問題なく症例を集めることができます。アレルギー分野に入るアナフィラキシー症例が救急・集中治療科併設科にしては少ない印象を受けているのですが、これも救急外来に結構搬送されているので、入院症例が必要であれば救急外来に申し送ることで経過観察入院の症例をまかなうことが可能かと思います。あと、悪性腫瘍の症例はさほど多くないのですが、これも末期の症例が病院総合内科に流れてくることがあるので問題ないです (各臓器科が悪性腫瘍末期の症例を診ない現状については問題大ありなのですが、深くはツッコまないでおきます……)。

 

次に、内分泌。甲状腺機能低下症の人は結構多いので、高齢女性に適当にスクリーニングをかけていれば問題なく見つかります。下垂体疾患枠はSIADHで、副甲状腺疾患枠は神経性食思不振症 (低リン血症) or 骨粗鬆症 (スクリーニングで拾う) で攻略可能です。地味に問題なのが副腎疾患枠で、個人的にはステロイドユーザーの薬剤性Cushing症候群で乗り切るのが一番現実的かなと思っています。他には漢方薬を使っている低カリウム血症患者を偽性アルドステロン症として登録するのも一手ですが、甘草の含まれていない漢方薬でやらかさないよう注意しましょう (例:大建中湯はNG、六君子湯はOK)。

 

血液については、赤血球枠と血小板枠はそれぞれ貧血症例、DIC症例をあてればいいのでそんなには苦労しません。ただし、白血球枠がかなり厳しいので注意。白血病症例は病院総合内科に来ません。従って、個人的なお勧めとしては、初期研修医時代の血液内科ローテ症例を持ってきて登録するのが一番賢いと思います。不明熱症例でフェリチンが高いのと血球が減っているのを見つけて血球貪食症候群とする方法もありますが、病理組織学的に証明されていない場合に果たして有効かどうかは、ちょっと自信ないですね。

 

神経については、脳出血てんかん、Parkinson病、アルコール依存症の症例が多いので半分くらいは難なくクリアできるのですが、感染性・炎症性疾患枠、免疫異常による神経筋疾患枠、非免疫異常による神経筋疾患枠の3つが鬼門です。感染性・炎症性疾患枠は帯状疱疹あたりをアルバイトの内科外来で見つけられれば攻略可能で、あとは年に2-3例程度みる髄膜炎 or 脳膿瘍症例に期待といったところでしょうか。腰椎穿刺で頻繁に見つかる「髄液所見的には合致するが起因菌のよく分からない髄膜炎」が制度的にOKなのかはちょっと怪しいです。それと、免疫異常 and 非免疫異常枠は初期研修医時代の神経内科ローテ症例を持ってくるのが賢明です。病院総合内科で視神経脊髄炎やDuchenne型筋ジストロフィーの症例を見ることはありましたが、そういうケースは極めて稀で期待薄です。あと、皮膚筋炎の症例をこの枠に使えることは覚えておくといいです。

 

膠原病も割と少ないので注意が必要です。関節枠については、アルバイトの内科外来に関節リウマチ症例がいたら確実に押さえておくことをお勧めします。もし関節リウマチ症例がいない場合は、一緒に仕事をしている救急外傷チームの症例を併診することで乗り越えるという裏ワザもあります。非関節枠が結構厳しいのですが、あちこち痛い患者さんで他疾患を除外の上で線維筋痛症と診断するのが一番楽かもしれません。他にはアミロイドーシスが結構見逃されているので、心筋症の患者さんで診断がつかない場合に99mTcピロリン酸シンチグラフィを施行するのも一手です (幸いにして筑波大学ではシンチグラフィを施行しやすい……)。ちなみにItoは初期研修医時代の症例をたくさんぶつけて攻略しました。たまたま病院総合内科に好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の患者さんが入院していたので、それも非関節枠に登録しています。

 

ということでまとめると、大半の疾患枠は病院総合内科にいるだけで攻略可能ですが、以下の疾患に注意が必要です。あとは剖検症例ですね。

至難の業 (必ず初期研修の症例を密輸入せよ)

 血液疾患の白血球枠、神経疾患の免疫異常・非免疫異常による神経筋疾患枠

まぁ大変 (いなくはないが初期研修の症例があると無難)

 神経疾患の感染性・炎症性疾患枠、膠原病の関節枠・非関節枠

不安になるがなんやかんやで間に合う

 副腎疾患 (薬剤性Cushing症候群 or 偽性アルドステロン症で乗り切る)

 

上記疾患にさえ注意していれば、病院総合内科に半年から1年いるだけで症例が全部集まってしまいます。おまけに、大学病院の各内科をローテートしなくていいので、例えば教授回診の資料作りに残業するとか、そういう理不尽系の努力もしなくて済むわけです。病院総合内科はカンファレンスや夜間・休日の呼び出しなどが最低限の負荷に抑えられているので、システム的には非常にストレスのかかりづらい環境です。なんというか、少人数ゆえの良さがあるわけです。理不尽なことがあれば、直接科長のK先生に相談して対応できますし。今の病院総合内科は個人的にかなりお勧めできるのですが、いかんせん知名度が低いのでなかなか人が集まらない。勿体ないなぁと感じます。

スタートアップ・トレーニング

こんにちは。昨日、COVID-19のワクチン 1回目を接種して肩が上がらなくなっているItoです。接種する時は全然痛くないですが、後から出てくる筋肉痛が結構ひどいですね。2回目の接種の時は熱とかも出るようなので覚悟しておきます (笑)。最近気が付いたことなのですが、専攻医3年目 (医師5年目) ともなると、内科専門医の資格を取得するためにペースアップしないといけないんですね。今、猛スピードで専門医取得のためのサマリを記載しています。1日1本ペースでやれば、1か月で終わるハズ……。幸いにしてこれまで退院サマリを詳細に記載してきたので、それをコピー&ペーストして参考文献をつけるだけで、そんなに大変ではないのですが。 

 

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レーニング・メソッド模索中

 

新年度になり、新しい初期研修医の先生が病院総合内科をローテートしてくれています。医者人生を病院総合内科でスタートする研修医の先生は初めてということで、まっさらな状態からどうレベルアップしていくのが良いものか考える日々です。せっかくだから、研修医の先生には(1)なるべく肉体的・精神的ストレスのたまらない形で、(2)自分から問いを立てて自分で解決できるような実力を養ってもらえるようになってほしいわけです。そういうコンセプトで、今ローテしていただいている研修医の先生には以下のようなトレーニングをやってもらっています。普段は眠たくて怠慢なItoが面白がって珍しく本気を出してスパルタコースをやっているわけです。

 

On the job training

問診と診察: 新患に対して初期研修医の先生に1人で問診や診察をやってもらい、Itoが後で初期研修医の先生と一緒に同じように問診と診察を行って、プロセスを共有するようにしている。患者さんのそれまでの生き方がありありと思い浮かべられるように問診することで、今のプロブレムがその延長線上にあることを強く意識してもらう。身体診察も、ほんの少しの工夫で所見が全く異なってくることを実感してもらう。こういった基本のさらに前の事柄を解説した市販のテキストはなく、Ito手製の通読用テキストを作ったので、それを副読本にしてもらっている。

プロブレムリスト: 新患に対するプロブレムリストを初期研修医の先生に作ってもらって、Itoも独立にプロブレムリストを作成して、その場で比較・検討、フィードバックしている。一見関係なさそうな過去の手術記載や病理所見、社会背景の記載などもプロブレムリストに並べてみると大きな意味を持つことがあるわけで、どう情報を拾ってくるかをItoが実演して見せるようにしている。プロブレムリストを日々進化させていくことなどについても学んでもらう。プロブレムリストが杜撰だといかに恐ろしい見逃しをするか、知ってもらえると嬉しい。

アセスメント&プラン: ❶❷を踏まえて鑑別診断とかプランをdiscussionする。血液検査のちょっとした異常もなるべくしっかりと検討していき、「こういう時はこうなるはずだ」「そうならなかった場合はこうしよう」と、先読み内科の技術を一緒に学ぶ (目測から外れることもあるので、むしろItoが学ぶことになるケースも多い)。カルテ記載の仕方も、そのままコピー&ペーストすれば論文として発表できるような文体になるよう指導している (一般名での薬剤名記載、体言止め禁止、助詞の使い方など)。

事務的業務: メジャーな雑用に関してはなるべく研修医の先生にもやってもらう (独り立ちした時に困らない最低限度のラインで)。だけど、マイナーで不毛そうな雑用に関しては研修医の先生の学ぶ気力や体力を削ぎそうなので、変な負荷がかからないよう注意している。上が軽い用事と思って口頭で出した指示が、下にとって相当の負担になっていることがしばしばあるわけで、研修医の先生に何かを指示する時はミスリードしないよう、事前に必ず2回はイメージトレーニングしている。

 

 Off the job training

総論的な学習聖路加国際病院から出ている『内科レジデントの鉄則』(医学書院) を1日最低1章分は読んでもらっている。他の医学書は「絶対に読むなー!」と伝えていて、とにかくこの本「だけ」を完璧に身に着けてもらう。というのも、この本に書かれている内容さえ身に着けてしまえば、病棟で起こる大抵のことには対応できてしまうから。Itoもこの本に掲載してある重要事項を一問一答形式で時折研修医の先生に質問して、スキマ時間での反復を促すようにしている。

各論的な学習: 入院中の症例にまつわる英語文献 (8割以上が総説論文) を1日1本は読んでもらっている。初期研修医の初期段階でいきなり英語文献で大丈夫かという問題はあるが、ノー・プロブレム。自分自身に差し迫っている問題に関しては、そうでない問題よりも理解が10倍も進みやすいわけで、こういう状況下では初期研修医の先生であっても簡単に英語のハードルを乗り越えていく。読む英語文献の選定は、最初はItoが行うが、初期研修医の先生が慣れてきたら今度は自分自身で文献を探すところからやってもらう。なお、英語文献の読み方や調べ方のコツは、初期研修医の先生と横並びになってかなり丁寧に教えるようにしている (経験上、ここが一番の挫折ポイントなので)。

対外的な学習: なるべく茨城県外の学会や症例検討会に出てもらうよう促して、初期研修医の先生に自分自身の立ち位置を認識してもらうようにしている。「同年代の医者の活躍に心惑わせるな」という教訓があることはItoも重々承知なのだが、「自分自身が世界のどのレベルまで通用するのか」を絶えずモニタリングすることも、気質によっては意欲に結びついて有益と考える。さらにオプションとして、自分の力を世界に問う営みとして、野心的な初期研修医の先生には論文を最低1本、病院総合内科ローテ中に書いてもらっている (今のところ、論文を書きたいとItoに言ってくれた初期研修医の先生は全員PubMedデビューしている)。

残業をしない訓練: 午後17時以降の時間の使い方に上達してもらうよう、促している。他科の嫌がるトラブル・ケースや高齢者の診療に携わることの多い病院総合内科は、急変や緊急入院なども予想しにくいため、昼過ぎまでに仕事が終わっていないようではロクに患者さんの命を守ることができない。午前8時30分から午後17時15分までが勤務時間と定められているが、この時間をフルに使って仕事をするのではなく、なるべく早めに仕事を終わらせて残りの時間を緊急事態に備える必要がある――このことを徹底するよう指導している。その心構えで仕事してはじめて、予期せぬ事柄に遭遇しても負けないような診療ができると信じている。余裕をもった時間配分で体力を温存することも大事で、肉体的にも精神的にも健康な状態を維持して勤務することの訓練にもしている。医者になった途端に不養生になる人がいかに多いことか…… (嘆)。

 

こんなメニューを初期研修医の先生にやってもらっていて、「今のところは」問題なくトレーニングできているように見えるのでホッとしています。既に『内科レジデントの鉄則』を通読してしまったみたいだし (驚)。ただ、初期研修医の先生にとって歪なくらいボリューミーなメニューになっているのも事実で、顔色を見て疲れ具合を見計らいながら、時には初期研修医の先生の意見も聞きながら負荷を調整していこうと思っています。客観的に見ると凄い負荷になっているんですよね、だから初期研修医の先生が折れそうになる前兆を見つけて素早くキャッチするのもItoの責務になるわけですよ。もちろんItoにかかる負荷も結構キツいのですが、自分自身一緒に学べている気がしていてなかなか面白いものです。これで4週間後にどんなふうに仕上がっているか、Itoとしてはとても楽しみにしています (最初の2週間が山場で、そこを乗り越えたらあとは容易い)。初期研修医の先生方には、学ぶことの楽しさを病院総合内科で是非再発見してほしいですね!

研修医の先生に一番伝えたいと思っていること

こんにちは、Itoです。暖房を使っていたのが、最近は窓を全開にして扇風機を回すようになりました。季節の変わり目を実感しますね。変わったこととして、ItoはUp to Date®のヘビーユーザーであることを自認しているのですが、Up to Date®を運営するWolters Kluwer社から文房具やトートバッグなどの入った文房具セットが送られてきました。ロゴ入りのボールペンがカッコいいっす……。

 

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Up to Date®特製文房具!

 

さてさて、新しい年度ですね。研修医の先生がローテしてくれていることですし、今回は教育にかける意気込みをちょっと綴ろうかと思います。

 

病院総合内科はまだまだ創業間もない零細診療科です。だから、研修医の先生や学生さんがローテートすることも他の診療科に比べると少ない。あるいは、敢えて希望しないとローテート出来ない診療科という扱いなのかもしれません (管理職でないので分かりませんが)。それでも、年間に数人程度の研修医の先生がローテートしてくれるので、病院総合内科で何を教えられるかを真剣に考えることが多いです。たった3-4週間で何を教えられるだろう、と。

 

病院総合内科には様々な疾患の患者さんが入院します。肝硬変の患者さん、心筋症の患者さん、脳出血の患者さん……だけど、肝硬変のマネジメントは消化器内科で学べばいいし、心筋症や脳出血ならそれぞれ循環器内科や脳神経外科で学べばいい。畢竟、医療の各論的な話は各診療科に任せておけば十分であろう。では、病院総合内科では何を教えればよいのだろう。マルチモビディティの話? 地域全体でのケアの話?

 

この問題に対して、Itoは他の先生方と少し違う意見を持っているのではないかと自分自身感じています。すなわち、Itoは病院総合内科をローテートする研修医の先生に「学問とはどんなものか」(what it is like to learn something) を知ってほしいと思っていて、それが達成できれば細かい知識は何を習得しようが些末なことだと考えています。段階的に、少し具体的に説明していきます。

 

ひとつめ。学問を嫌いにならないでほしい。——体感的に、ではありますが、自分の周囲ではどうも学問の力が過小評価されているような気がしてなりません。学問なんてしなくても「マニュアルに書いてある通りにやればいい」とか、「上司の指示通りにやればいい」とか、「他の誰かがきっとやってくれる」とか……そんなふうに考えて学問の機会を逃してしまっている人が多い気がします。だから、学問することに慣れていない人が結構いる。そして、その次に来るのは学問に対する食わず嫌い。だけど、学問の力を借りることで「あんなにもコントロールに難渋していた▲▲が一瞬で治ってしまった」みたいなことって結構あるんですよ。一見遠回りに見えるけれども、学問には圧倒的な威力があることを、まずは力説したい。

 

ふたつめ。学問の方法を身に着けてほしい。——この世は大変生きづらい。情報は溢れているし、人の言葉も信義を欠いて信用ならぬものです。何を信じたらいいか分からないわけですよ。嫌らしい人間関係上の闘争だって日常茶飯事で、まことに汚らわしい。専門家の意見なんて嘘にまみれていますし。だけど、そんな醜い世の中でもひとつだけ信じるに値するものがあります。それが、学問の力に裏打ちされた確固たる自己。「謀多きは勝ち、謀少なきは負ける」という言葉がありますが、この資本主義社会は知らざる者が知る者に搾り取られるように出来上がっています。だからこそ、研修医の先生方には早いうちに学問の方法を確立してもらって、伝統という名の大嘘 (!) などから自分の身を守れるようになってほしいと思います。そのためにも、各論的な知識なんていちいち覚えなくていいから、各論的な知識をゼロから生成できるような、広い意味での学問の地力を身に着けてほしい。実際にどう身に着けるかは丁寧に教えるからさ。

 

みっつめ。学問を好きになってほしい。——学問を続けていると知識が増えていって、そうすると逆説的ですが、却って知らないことが増えていきます。「自分には知らないことが多い」ということが分かると、少し心がわくわくしてくるものです。「自分の目に映っている世界にはまだまだ伸びしろがある」ことを意味しているわけですからね。「勉強しても勉強しすぎることはない」という安心感と高揚感が同時にやってくるわけですよ。ここまで来ると、「学問は一生の友」と噛み締めるように言えるのではないかと思います。今の日本はとっても暗い国で、自殺者が多いのも当然だよなとItoは感じているのですが、それでも個人的には、学問がある限りはこの世に生きてステイするのも悪くないかなと思っています。学問は、絶望の世の中における微かな希望であり、心を燃やす火種でもあるのです。

 

こういったことは、聖路加病院の出している『レジデントの鉄則』に書かれている事柄なんかよりもウンと基本的な話になってくるのですが、この部分が弱すぎる人が多い気がするんですよね。まぁ、身に着けなくても何とかなってしまう部分ではあるのですが。でも、そんなんで本当に仕事楽しいですか? 医者の仕事って辛いことばかりだから、好奇心がなかったら100歳まで続けられないと思うんですよ。だからこそ、病院総合内科をローテした研修医の先生には医学を好きになってもらいたい。そのための援助も惜しみたくないと考えています。

 

最後にさらっと宣伝。医学書院の出している雑誌「medicina」の4月号に、病院総合内科から研修医教育に関する記事を出しています。内容を一言でいえば「いかに教育を面白くするかのコツ」です。感染症教育は世界史と連動させることで一気に面白くなるんですよね。今回は3ページくらいのちょっとした記事で、語りたいことのすべてを語れているわけではありませんが、書店を訪れた際に立ち読みでもしていただけたら嬉しいです。

お得に日本内科学会総会に参加できる件 (後期研修医まで)

みなさん、こんにちは。Itoです。有給消化をサボりまくった結果 (この1年間は以前と違って有給を取得しないといけないほど体調を大きく崩すことがなかった)、3月にまとめて有給休暇を取得する羽目になりましたが、無事すべて消化することができました。少し崩れ気味だった体調も有給でしっかりと休むことで回復させることができました。そろそろ年度初めを迎え、日本は春の学会シーズンですね。この週末は日本循環器学会が開催されているようです。

 

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晴れた日に外でお弁当を食べるのも悪くない!

 

コロナ禍でオンライン中心だった学会も、最近はライブの要素が復活しつつあるようです。ここでItoが学生さんや研修医の先生に伝えたいことのひとつとして、積極的に学会に出なさい、というものがあります。確かに、わざわざ学会に出なくても、自宅で論文を読み漁っていれば十分すぎるほどの知識を手に入れることができます。ただ、論文はちょっとした事柄にも論拠を求めることがあって、大雑把に全体像を俯瞰するには向いていないことがあるんですよね。著者目線で「書きたいけど (根拠を揃え切れないために) 書けないこと」って結構あるんです。対照的に、学会では基本的に口頭で知識が語られるので、各先生の解釈モデルを聞くことができて、頭が整理される良さがあります。偉い先生方のレクチャーを聞いていると時々胡散臭いなと感じるのですが、論文とは違った良さがあるので、定期的に学会に参加するのも意義深いかと思っています。

 

とはいっても、学会参加費は高い高すぎる筑波大学附属病院の場合は学会関連費として年間3万円から5万円くらい出していただけるのですが、それでも診療科によっては足りないことがある (特に外科系は複数の学会所属が当たり前ですよね)。高すぎる日本の学会参加費が、研修医の先生方の学びの妨げになっている現状は大問題です。参考までに、感染症分野最大の祭典であるID Week (米国) はオンラインでよければ1万円弱で参加できます。逆に学生さんは基本的に無料なので、アドバンテージを生かしてどんどん学会に参加してもらった方がいいと思います。学会の講演内容をほとんど理解できないと思いますが、早いうちから一流に触れて、どうすれば自分がこれを越えることができるか逆算して、日頃のトレーニングに取り入れていくべきです。

 

さて、内科学会総会も4月に開催されます。ここで研修医の先生方に是非知っておいていただきたいことがあります。日本内科学会総会には、数年前から「医学生・研修医の日本内科学会ことはじめ」というセッションが付随しているのですが、こちらは参加費が一切かかりません。Excitingな症例検討会「実践内科塾」が毎年開催されることもあって、参加申し込みしておくことを強くお勧めします。それと、2021年度は叶いませんでしたが、2022年度の「ことはじめ」には病院総合内科から学生さんか、初期研修医の先生に演題を出してもらおうかなとも考えています (学会ネタの捻出は、症例数の多い病院総合内科なら容易です)。Itoの学会デビューが2018年に京都で開催された「ことはじめ」だったこともあって、少しばかり思い入れがあるのです。

 

ちなみに、実はこの「ことはじめ」に参加申し込みすると、後期研修医まで限定ではありますが、日本内科学会総会そのものへの参加費が免除になります (日内会誌 第110巻 臨時増刊号 p.23)。ちょっとした裏技ですね。というわけで、学生・研修医の皆様、貴重な学問の機会をどうか無駄にすることのないように。

他流試合

今年度ずっと有給をいただきそびれ、臨床研修センターからの指示で3日間の有給をいただいているItoです。ちょうど有給の2日前に舌潰瘍ができてしまい、痛みのあまり喋ることも水を飲むこともできない有様だったので、上手く休暇を養生にあてられて幸いでした。ビタミンB群、ビタミンC、半夏瀉心湯、生理食塩水でのうがいなど、ありとあらゆる治療をしていて、あと数日もあれば完治するのではないかと思います。健康には人一倍気を遣っていても、果物を一切食べられないところが栄養面でのハンデになっていそうです。

 

今日は東京の感染症内科医で集まって症例検討会 (オンライン) をしていたのですが、やはり刺激的で良いですね。張り合いがあるというか。今の感染症業界を牽引している先生方は、少なくともIto目線では怪物揃いなのですが、久しぶりにその議論に参加して心が震えました。参加したと言っても、Itoは今回は一切発言しませんでしたが…… (舌が痛くて悶えていました……)。今回は2症例の検討会だったのですが、偶然2症例ともHIV/AIDS症例の播種性Histoplasmosisでした。Itoは両症例とも最初からずっと播種性MAC症 ± 悪性リンパ腫/カポジ肉腫あたりだと思っていたので、綺麗にやられた形ですね (なお、Histoplasmosisが鑑別診断に挙がった後も「暴露歴がしょぼいんだよな……」と半信半疑でした)。

 

さて、症例検討会をした後は手元に手書きの議事録が残るわけですが、Itoの経験上、書いた議事録を見返すことは二度とない。これまで自分が出席したIDATENの議事録は全て保管しているのですが、埃をかぶってしまっていますね。だけど、こんなに貴重な症例を忘れ去ってしまうのももったいない。どうしたらよいものか悩ましいところですが、今回は新しい試みとして、播種性Histoplasmosisの総説のPDFをダウンロードして、そこに症例検討会で出てきたポイントをマーキングしてPubMed Cloudに落とし込む方法で対応しようと思います。PubMed Cloudに落とし込みさえすれば、きっとどこかで今日得た知識を役立てることができるんじゃないかと思うのです。


ちなみに、Itoが忘れたくないと思った知識を羅列すると、

HIV/AIDS患者のHistoplasmosisはWHOのガイドラインを参照。また、CDCのホームページに概念図がたくさん掲載されている。

❷ 流行地域への滞在がたとえ数年前でも、たとえ数日間の滞在でも、鑑別からは除外不可。アメリカのイメージが強いが、タイなど幅広く分布しているので、油断せず流行地図を毎回見るようにする。

❸ 他真菌やニューモシスチス肺炎ほどではないがbeta-D glucanが少しだけ上がる。LDHやフェリチンが上昇したり、汎血球減少が見られたりもするが、それは「播種性」と名の付く疾患ではだいたい当てはまるので特異的とは言い難い。

❹ 診断は培養だが、biosafetyの確保が必要。尿中抗原検査が存在はするが、日本ではcommercial baseで不可。日本で早期診断する方法がないかと思いきや、buffy coat検体中に酵母様真菌を探す方法が残っている。

❺ 播種性Histoplasmosisは播種性MAC症/結核と病像が被る (セットで鑑別に挙げる)。播種性Histoplasmosisはseptic shockを起こすが、播種性結核はさほど起こさないので、治療の優先順位は前者が上位。なお、関係ない知識として、造血器腫瘍患者におけるアデノウイルス感染症もseptic shockを起こす感染症として覚えておく。

❻ ❺に関連して、骨にも播種することがあるため、悪性リンパ腫も重要な鑑別診断になる。生検で検出されなかった場合のことを常に念頭にマネジメントを考える (経験的治療としてL-AMB (3-5 mg/kg) の投与を躊躇しないなど)。

❼ Coccidiosisは、Histoplasmosisよりも髄膜炎や皮膚病変が多いとはされている。これらの情報だけで鑑別するのは危険だが、参考にはなるかもしれない。

 

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白血球中のHistoplasma (Kauffman CA. Clin Microbiol Rev 2007; 20: 115-32)

 

症例検討会に出てきたこれらの知識を論文中に確認する作業をして、論文中に見つけられたらハイライトしてPubMed Cloudに保存しておくわけです。口頭で語られた知識が本当に正しいのかは、たとえ相手が大御所でも検証しておかないと、自らの血肉とすることはできません。それに、論文を読む時間をとることで、似た症例と遭遇した時のイメージトレーニングを無意識下に行えるメリットもあります。

 

それにしても、ID Week 2020に参加して以来の、本当に心震えるひと時でした。自分もこういう議論ができるようになりたい。世界に挑戦するというのは、こういった怪物のような先生方と渡り合うことを意味しているのだなと再確認できたのも非常によかったと思います。思えば、これまでNEJMやJAMA、Lancetなどのいわゆる「ジャーナル四天王」に挑戦して一度として勝てたことがありませんでしたが、自分の実力ではまだまだ及ばない域なのでしょう。もっと鍛錬して、自分も上を目指したいと思った次第です。どう鍛錬するかについては、温めてきたアイデアはあっても予算 (設備) がないので、そこは休み明けに臨床研修センターに相談……ですかね。

ホスピタリスト、ただいま査読中!

こんにちは、Itoです。NHK語学講座の長寿番組「実践ビジネス英語」が終わってしまうと聞いてショックを受けています。このラジオ講座はもちろん英語の勉強にもなるのですが、いま海外で生きている人々はどんな風に物事を考えているかを知るにも良い教材でした。「実践ビジネス英語」を聞いていると、10年後の日本人はこんな価値観を持っているのかなぁ、もしそうだとすれば日本の未来も捨てたもんじゃないかもしれないなぁ、なんて感じるわけですよ。英語の勉強というよりは、未来の生き方の予習 (わくわく)。東大医学部の同期も何人か聞いていて、テキストで扱われている話題のことで盛り上がったこともありました。発売日に生協書籍部に行くと、同期も買っていて「お前もかよ!」って。そんな教材が日本に存在していたこと自体が奇跡的だったわけですが、いやぁ、まことに残念。

 

さて、仕事はというと、COVID-19流行の酷かった2021年1月上旬はフルパワーを越えて稼働していて、そんな全力疾走状態も少しずつ落ち着いてきたかと思っていたのですが、COVID-19の流行が下げ止まらずにまた少しずつ悪い流れになりつつあるのかな、と感じています。Itoの本業は病院総合内科での診療ですが、このような危機的な状況を受け、感染対策室からの要請で再び感染対策のロジスティックス業務に戻ることになりました (年度初めにも数か月ばかり感染対策室に所属していた時期があった)。感染者が発生した場所でのゾーニングとか、感染疑い症例の疑い度合いの評価とか、感染者との接触者の洗い出しとか、色々なことをやるわけです。あとは物資の確保……日本人が苦手とする仕事ですよね (第二次世界大戦の本とか読んでいると、ね)。ただし、病院総合内科も人手が間に合っていないので、病院総合内科での診療も継続、二足の草鞋を履いている状態。結構大変ですが、10年後に別の病原体が流行した時に指揮を執るのはItoの仕事なので、ここでのダイナミクスを自分なりに解釈を持ちながら目に焼きつけておきたいところです。

 

ということで、仕事が落ち着いていない状態なのですが、仕事以外も全く落ち着いていない。査読の嵐なんでございます。査読というのは、他の人が書いて雑誌に投稿した論文を読んで、論評して採用か不採用かを雑誌編集部に意見するコト。要は医学雑誌の門番。

 

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文法ミスの多い論文の査読はイライラする! (画像はイメージです)

 

病院総合内科では今年度から積極的に英語論文を出していて、だいたい24本くらいPubMed収載誌に通しているのですが、10本越えたあたりから査読依頼が来るようになっています。なお、「だいたい24本」のところはもう数えるのを諦めているので正確である自信ありません。それで、2020年夏頃から査読依頼が月1本くらいで来ていたのですが、秋を過ぎたあたりから2週間に1本に増え、最近は1週間に1本はやってきます。とにかく多くて大変。最初の頃は症例報告の査読とかで、多くは20ページくらいの論文だったので割と気楽だったのですが、このところはliterature reviewとかmeta-analysisの査読が増えてきて、1回あたり100ページ近く読み込んでいます。ボランティアでね。

 

査読のやり方? そんなの知りません。お師匠様と1回だけ一緒に査読したことあるけど、上級医の監督下でやったのはその1回だけです。それ以降20本くらい査読していますが、完全に試行錯誤。そもそもItoのような駆け出し研修医に査読依頼が来る時点で色々とオカシイ。だけど、「やったことがない」というのは挑戦しない理由には多分ならなくて、むしろ未知を楽しむくらいの心構えでやっています。それに、「普通」から逸脱していく自分を想像するのってなんだか愉快じゃないですか? 今後は初期研修医の先生たちも交えて査読やってみたいなと思っていますが、もう少しItoの経験値が上がってからでしょうね。まだ教えられるほどのレベルになっていないので。

 

査読には良い面・悪い面、どちらもあります。基本的には面倒臭い仕事をボランティアでやるので合計マイナスな気分ですが、好奇心さえあれば合計ちょいプラスに振れるかもしれません。良い面としては、最新の研究成果を半年早く知ることができること、ロジックや英作文の練習ができること、でしょうか。悪い面としては、ボランティアでギャラが一切出ないこと、忙しい中で数時間程度持っていかれること、ですね。要するに、好奇心が勝らなければただただ面倒臭いだけのお仕事です。

 

そんなわけで、査読を拒否する方も結構いるみたいです。ただですね、自分も論文を出す時にたくさんの査読者の方にお世話になっているわけですよ。だから、恩返しという意味で、Itoにとっては査読しないという選択肢はないのかな、なんて思っています。最近はジャーナル側もそれなりに対策してくれているみたいで、査読することで自分の研究者IDと査読実績を紐付けしてくれるような動きもあるようです (e.g., publons)。うーん、履歴書に書ければいいんだけどなぁ、ほら、留学する時に使えるように、とかさ。

 

最近はBMJとか、Medical Virologyみたいなハイレベルのジャーナルからの依頼も来るようになりました (どちらも縁もゆかりもないハズだが……)。我らが病院総合内科、まだ日本では認知度が低いようですが、世界からは少しずつ認識されつつあるのかな (言い過ぎ!)。年度初めは英語のメールが来たと思ったらハゲタカジャーナルからの迷惑メールだったというのが大半でしたが、最近の英語メールは病院総合内科宛ての正式な仕事の依頼が1-2割くらい混ざるようになってきました。査読よりももっと重大な仕事のメールも何通か受け取っていますが、その話はある程度こちらの目途が立ち、交渉がまとまってから公表することにします。何か凄いことが起こりそうなのですが、何も起こらない可能性もあるので…… (というか、何も起こらないでしょうね)。