つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

2022-01-01から1年間の記事一覧

絶望の国の絶望の時代のミドルマネージャー

新しい職場でどうにもならない医療現場をどうにかしようとジタバタしている今日この頃、昔からお世話になっている大先輩からメッセージをいただいた。なんでも、茨城県で自分なりに今の医療に問題意識を抱いている若手を集めて「地域医療構想調整会議」なる…

Prolonged infusionでの抗菌薬投与

はじめに 2022年8月19日の「抗菌薬物語 I + II」(復習編)で幾つもご質問をいただき、そのうち「低アルブミン血症ではセフトリアキソンの効果が減弱するのか?」「セフトリアキソンは1 g, 12時間毎 点滴静注と2 g, 24時間毎 点滴静注のどちらが良いのか?」…

セフトリアキソンの投与量(non-CNS dose)

セフトリアキソンの投与量についてご質問いただく機会が結構あって、さらに「抗菌薬物語 I + II」(復習編)でもご質問いただいたので、この機会に文献を紹介しようと思います。具体的には、「セフトリアキソンを1 g, 12時間毎 点滴静注(2 g/日)で投与する…

アルブミンと抗菌薬の用量

はじめに 「抗菌薬物語 I + II」(復習編)を2022年8月19日にレクチャーさせていただきましたが、裏番組がジブリであったにもかからわず850名もの方にご参加いただきました。今回ご参加いただいた皆様はきっと「となりのトトロ」を犠牲にして今回のレクチャ…

臨床における問いの立てかた

はじめに つまらない臨床業務 いちど医者になると、毎日ひたすら臨床業務に追われることになる。患者さんが入院すると、病気を治療して、患者さんが退院していく。また患者さんが入院して、治療を挟んで退院して……という、割と同じことの繰り返しだ。実のと…

思いのほか難しいキャリアパス(大学院と博士号)

珍しく(?)、大きな悩みの話…… 東京医大に来てからポストに就いていると言うと「え、ポスト!? 出世早すぎない?」みたいな反応が返ってくることが多くて、さぞかし順調なイメージがあるようなのだが、当の本人としては自分のキャリアパスが見通せなくて…

尿路感染症に対する予防的抗菌薬投与

はじめに 「抗菌薬物語Ⅲ」のレクチャーをした時に様々な質問をいただいていて、「キノロンの使い分け」とか「頭頚部手術の周術期抗菌薬の延長」とかに関しては回答させていただいていたのですが、「尿カテ長期留置 or 膀胱瘻の症例における尿路感染症予防の…

自己決定権という名の主人公補正

筑波大学から東京医大に異動して2週間目が終了した。カルテの扱いは慣れてきたし、患者さんも何人か退院まで持っていけたわけだが、それでもまだ居心地が悪い。理由として、これまで「カルテが富士通製でなく使いづらい」とか「ベッドコントロールをしていな…

周術期抗菌薬は術後24-48時間まで

はじめに Dr.'s Prime Academiaで「抗菌薬物語Ⅲ」をレクチャーした際に色々とご質問をいただいたのですが、その中で周術期抗菌薬に関するものがあったので、今回の記事ではそのあたりを取り上げようと思います。手術部位感染症を予防するために、術直前から…

キノロン嫌いによるキノロン談話

はじめに Dr.’s Prime Academiaで連続レクチャー「抗菌薬物語」をさせていただいておりますが、皆様のおかげで打ち切りとならずに第3回を迎えることができました。初回「ペニシリン系」が参加者50名、第2回「セフェム系」が250名、第3回「経口βラクタム系と…

入院病床の適正化という課題

新しい職場に赴任してから2週間目。いろいろと設備面などで仰天することばかりであったが、「何があっても驚くまい」という心構えになっていくうちに、段々と心身ともに慣れてきたような気はする。しかし、慣れてきた上で今の職場が働きやすいかと言われると…

腸球菌について少しだけ

Dr.'s Prime Academiaで抗菌薬のレクチャーをしているのですが、直近の回では参加者が250名にも達していて、正直驚いております。それだけ抗菌薬のレクチャーに需要があるということを再認識するとともに、観ていただいている皆さんにとって有意義な時間とな…

劣悪過ぎる通勤路を本気でハックしてみた

通勤路は生活リズムを考えるにあたって、極めて重要な要素だ。以前の職場である筑波大学附属病院は自宅から割合近く、ママチャリを全力で漕げば10分で到着する距離だった。しかし、いまの職場である東京医大茨城医療センターはつくば市からのアクセスが非常…

良くも悪くもお部屋を賜ってしまった件

2022年8月1日を以って、東京医科大学臨床助教に任じられた! ……なんて言ってしまうと、まぁ、直前までレジデント(研修医)の身分ではあったこともあって、なんとなく新鮮な心地がしそうなものである。しかし、実際のところはやる仕事が大きく変わるとも思え…

抗BDCA2抗体 Litifilimab

日々論文を読むのをルーチンにしているが、基本的に論文は世界四大ジャーナル(NEJM, Lancet, JAMA, BMJ)とClin Infect Disから出ているものを選んで読んでいる。感染症専門医の世界にはインフルエンサーがいて、彼らがTwitterで推奨している論文も片っ端か…

発熱外来という名の戦場よな

これはもう地獄絵図である。COVID-19の流行状況がまたピークに向かっていく中で、患者が発熱外来に殺到しており、医療機関が機能していない。200床規模の病院にちょくちょく発熱外来のアルバイトで行っているのだが、直近のアルバイトでは、勤務を開始する前…

ドクプラで初レクチャーします【資料リンクあり】

筑波大学附属病院 病院総合内科の知名度を上げようと、茨城県外でも色々と宣伝活動を行っていたのですが、それをきっかけにDr.'s Prime Academiaからレクチャーのお声がけをいただきました。医師のアルバイト事情として、各病院が救急車を断らない全診療分野…

異動後の初仕事は「選択と集中」の徹底かな?

「常勤医2名で入院患者25名ですね」という言葉に唖然としたのが、2022年7月15日の話……。8月1日から新しい職場に赴任予定ということで、診療体制がどうなっているのか聞いたところ、上記の返事が返ってきたのだった。筑波大学附属病院 病院総合内科では、専攻…

時に恋しい濃厚ディスカッション

自分は世間的には感染症科医と認識していただいているようだが、実際のところは6年間の医師生活のうち感染症診療に専従していたのはたった1年間に過ぎない。しかし、この1年は自分の中に「専門家、プロフェッショナルとは何ぞや」というイメージを醸成するに…

心電図オンチによる心電図学びなおし反省会

この間ブログでも書いていたように1か月くらい前から心電図を学びなおしていたのだが、ようやく自分でも納得のいく仕上がりになってきた。回診の時に心電図を議論することが多々あるのだが、パッと心電図が提示された時に注目するポイントがだいぶ増えたよう…

病院総合内科を一旦辞めることについて

2022年7月末をもって筑波大学附属病院の病院総合内科(レジデント)を辞して、同年8月から東京医科歯科大学茨城医療センターの総合診療科へと異動する予定である(正式な辞令が来ていないので、ポストに関する情報公開は控えさせていただく)。茨城県南の地…

クロネコは凄い

衝撃的な銃撃事件から参議院選を経て、また何事もなかったかのように1週間がはじまった。参議院選をみていて、野党が驚くほど受からなくなっている現状が気になった。「政党の体力がなくなってくると、ベテランしか受からなくなって、次世代が育たずにジリ貧…

歴史の転換点

安倍元首相の銃撃・訃報に衝撃を受けている。時代の流れの、不可逆のスイッチがついに押されてしまった。そんな気分だ。これまでも時代が悪い方向に流れている感覚があったわけだが、それが確定してしまったような……。 最近行った草津温泉。日本がどんなに壊…

即席知識@臨床

なんでも屋(総合内科医)として臨床をやっていると、時にまったく経験のない疾患を診療しないといけないことがある。本来であれば、そういった疾患を抱えた患者さんはプロフェッショナルに紹介しないといけないところなのだが、あいにく医者は忙しい。例え…

やっぱ "No. 2" が大事なんだろうな

コロナ禍はまだ続いており、新型コロナウイルス感染者数もいったん落ち着いたかと思えば、この1~2週間で再度増加に転じている状況だ。クリニックなどで内科外来をやっていると感染者数がまた増えてきたなという肌感覚があるし、院内の小クラスターも以前の…

我らが足元の「少子化」対策

医療機関にとって、梅雨明けは専攻医向けの新歓シーズンが到来したことを意味する。筑波大学附属病院も例外ではなく、各診療科が競うように院内にポスターを貼っては新歓に力を入れてきている状況だ。某内科は某大河ドラマをパロディーにした派手なポスター…

心電図を学びなおすのだ!

実は最近、こっそりと心電図を学びなおしている。というのも、筑波大学附属病院の病院総合内科では循環器内科出身の指導医が患者さんの心電図を読まれていることもあって、自分はあまり真面目に心電図を読んでいなかったのだが、新しい職場は総合内科医ばか…

《内科専門医試験》血液内科まとめ

白血病総論 ★・MPO染色 >3%:AML(ただし、M0、M5、M7は時に <3%)・MPO染色 <3%:ALL・特異的エステラーゼ染色陽性:骨髄系M1~M4・非特異的エステラーゼ染色陽性:単球系M4・M5※ これらの染色所見の組み合わせでMの何番かを問われる・B細胞系はCD10・CD19…

『せん妄診療はじめの一歩』、再読

医師年数が5年を越えてくると、初期研修医時代から繰り返し読んできた書籍でも「もうそろそろ手元になくても大丈夫かな」と思えてくるような医学書が増えてくる。医師の部屋は学会誌などで常に圧迫されているもので、少しずつ書籍を手放していかないと、歩く…

《内科専門医試験》代謝・内分泌科まとめ

CYPを誘導する薬物・嗜好品・代表的なものは、リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール、セイヨウオトギリソウなどで、ステロイドユーザーにこれらの薬剤を使用する場合はステロイド増量を要することも・喫煙はCYP1A2を誘導・エタ…