つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

たとえ「良医」になれずとも

聖路加のベテランの先生の書かれた、患者さんとの心温まる交流の物語集『内科医の私と患者さんの物語』(医学書院)を読んだ。がん末期の患者さんが家族の結婚式に参加したいということで、聖路加国際病院の中で模擬結婚式を挙げた話などを読んでいると、自…

抗MRSA薬のお値段

先日のDr.'s Prime Academiaで、抗MRSA薬のお値段のお話をさせていただいたのですが、バンコマイシンやダプトマイシンのお値段を失念しておりましたので簡単に補足させていただきます。腎機能が正常の患者さん(体重 60 kg)の場合の各薬剤の投与方法は、以…

茨城のレンコン農家

茨城県は日本有数の米どころであり、その生産量(重さ)は平成30年の農林水産省のデータによると都道府県全体で8位にあたるようだ。いつも食べている茨城県産コシヒカリ、これはなかなか美味いもので、自分も色々な場所に旅したり下宿したりしているものの、…

"きれいな" 臨床のコミュニケーション

最近、YouTuberとしての活動もはじめてみたのだが、実に不思議な気分である。というのも、チャンネル登録者数は案の定、2桁を少し越えたところで止まっているし、アップロードした動画の再生回数も3桁に届かない。しかし、色々なYouTuberの書籍を読んでいる…

スタチンによる横紋筋融解症

Lancetを読んでいたら、プライマリケア領域に少なからず関わってきそうなメタアナリシス論文を見かけました。スタチン使用に伴う横紋筋融解症(筋肉痛や筋力低下など、定義はかなり広そう)の発生率に関するメタアナリシスで、ここに含まれている研究の条件…

回診1回、握り飯1つ

現在の職場における最大の問題点は、いうまでもなくベッドコントロールの不在である。総合診療科の患者数は今や40名に迫っている状況なのだが、その患者さんがあらゆる病棟に散在してしまっている状況だ。大英帝国は七つの海を支配したが、大総合診療帝国も…

Taylor先生の思索:善き医療とは如何なるものであろうか

医者に限らず、医療従事者には様々な性格がある。医療従事者にとって「医療とは何か?」と聞かれたら、とりあえずは「仕事」ということになるのだろうが、医療従事者と医療との距離感も人それぞれではないだろうか。例えば、「医療とは自分の人生そのもので…

生ワクチンの奇妙な副効果

【注意】本記事は副効果を期待しての生ワクチン接種を推奨するものではありませんので、その点はご注意ください! Lancet Infectious Diseasesを普段から読んでいるのですが、なかなか興味深い記事を見かけたので紹介したいと思います。COVID-19流行の割と初…

キノロン系の中で自分が使ったことのないやつ

はじめに 参加者の皆様に大感謝! 2022年8月26日に「抗菌薬物語 III」(復習編)をDr.'s Prime Academiaで行いましたが、120名もの方にご参加いただき、とてもありがたいことだなと思いました。初回の「抗菌薬物語 III」の参加者数が750名で、その後の「抗菌…

昭和時代の二人の賢人

図書館にほぼ毎日通っては本を借りて、故人を含むいろいろな人の考え方を学んでいるのだが、個人的に読んでいて爽やかな気持ちになれる著者を挙げるなら、小倉昌男さんと中野孝次さんだと思う。小倉昌男さんは、ヤマト運輸で「宅配便」を生み出した伝説的経…

絶望の国の絶望の時代のミドルマネージャー

新しい職場でどうにもならない医療現場をどうにかしようとジタバタしている今日この頃、昔からお世話になっている大先輩からメッセージをいただいた。なんでも、茨城県で自分なりに今の医療に問題意識を抱いている若手を集めて「地域医療構想調整会議」なる…

Prolonged infusionでの抗菌薬投与

はじめに 2022年8月19日の「抗菌薬物語 I + II」(復習編)で幾つもご質問をいただき、そのうち「低アルブミン血症ではセフトリアキソンの効果が減弱するのか?」「セフトリアキソンは1 g, 12時間毎 点滴静注と2 g, 24時間毎 点滴静注のどちらが良いのか?」…

セフトリアキソンの投与量(non-CNS dose)

セフトリアキソンの投与量についてご質問いただく機会が結構あって、さらに「抗菌薬物語 I + II」(復習編)でもご質問いただいたので、この機会に文献を紹介しようと思います。具体的には、「セフトリアキソンを1 g, 12時間毎 点滴静注(2 g/日)で投与する…

アルブミンと抗菌薬の用量

はじめに 「抗菌薬物語 I + II」(復習編)を2022年8月19日にレクチャーさせていただきましたが、裏番組がジブリであったにもかからわず850名もの方にご参加いただきました。今回ご参加いただいた皆様はきっと「となりのトトロ」を犠牲にして今回のレクチャ…

臨床における問いの立てかた

はじめに つまらない臨床業務 いちど医者になると、毎日ひたすら臨床業務に追われることになる。患者さんが入院すると、病気を治療して、患者さんが退院していく。また患者さんが入院して、治療を挟んで退院して……という、割と同じことの繰り返しだ。実のと…

思いのほか難しいキャリアパス(大学院と博士号)

珍しく(?)、大きな悩みの話…… 東京医大に来てからポストに就いていると言うと「え、ポスト!? 出世早すぎない?」みたいな反応が返ってくることが多くて、さぞかし順調なイメージがあるようなのだが、当の本人としては自分のキャリアパスが見通せなくて…

尿路感染症に対する予防的抗菌薬投与

はじめに 「抗菌薬物語Ⅲ」のレクチャーをした時に様々な質問をいただいていて、「キノロンの使い分け」とか「頭頚部手術の周術期抗菌薬の延長」とかに関しては回答させていただいていたのですが、「尿カテ長期留置 or 膀胱瘻の症例における尿路感染症予防の…

自己決定権という名の主人公補正

筑波大学から東京医大に異動して2週間目が終了した。カルテの扱いは慣れてきたし、患者さんも何人か退院まで持っていけたわけだが、それでもまだ居心地が悪い。理由として、これまで「カルテが富士通製でなく使いづらい」とか「ベッドコントロールをしていな…

周術期抗菌薬は術後24-48時間まで

はじめに Dr.'s Prime Academiaで「抗菌薬物語Ⅲ」をレクチャーした際に色々とご質問をいただいたのですが、その中で周術期抗菌薬に関するものがあったので、今回の記事ではそのあたりを取り上げようと思います。手術部位感染症を予防するために、術直前から…

キノロン嫌いによるキノロン談話

はじめに Dr.’s Prime Academiaで連続レクチャー「抗菌薬物語」をさせていただいておりますが、皆様のおかげで打ち切りとならずに第3回を迎えることができました。初回「ペニシリン系」が参加者50名、第2回「セフェム系」が250名、第3回「経口βラクタム系と…

入院病床の適正化という課題

新しい職場に赴任してから2週間目。いろいろと設備面などで仰天することばかりであったが、「何があっても驚くまい」という心構えになっていくうちに、段々と心身ともに慣れてきたような気はする。しかし、慣れてきた上で今の職場が働きやすいかと言われると…

腸球菌について少しだけ

Dr.'s Prime Academiaで抗菌薬のレクチャーをしているのですが、直近の回では参加者が250名にも達していて、正直驚いております。それだけ抗菌薬のレクチャーに需要があるということを再認識するとともに、観ていただいている皆さんにとって有意義な時間とな…

劣悪過ぎる通勤路を本気でハックしてみた

通勤路は生活リズムを考えるにあたって、極めて重要な要素だ。以前の職場である筑波大学附属病院は自宅から割合近く、ママチャリを全力で漕げば10分で到着する距離だった。しかし、いまの職場である東京医大茨城医療センターはつくば市からのアクセスが非常…

良くも悪くもお部屋を賜ってしまった件

2022年8月1日を以って、東京医科大学臨床助教に任じられた! ……なんて言ってしまうと、まぁ、直前までレジデント(研修医)の身分ではあったこともあって、なんとなく新鮮な心地がしそうなものである。しかし、実際のところはやる仕事が大きく変わるとも思え…

抗BDCA2抗体 Litifilimab

日々論文を読むのをルーチンにしているが、基本的に論文は世界四大ジャーナル(NEJM, Lancet, JAMA, BMJ)とClin Infect Disから出ているものを選んで読んでいる。感染症専門医の世界にはインフルエンサーがいて、彼らがTwitterで推奨している論文も片っ端か…

発熱外来という名の戦場よな

これはもう地獄絵図である。COVID-19の流行状況がまたピークに向かっていく中で、患者が発熱外来に殺到しており、医療機関が機能していない。200床規模の病院にちょくちょく発熱外来のアルバイトで行っているのだが、直近のアルバイトでは、勤務を開始する前…

ドクプラで初レクチャーします【資料リンクあり】

筑波大学附属病院 病院総合内科の知名度を上げようと、茨城県外でも色々と宣伝活動を行っていたのですが、それをきっかけにDr.'s Prime Academiaからレクチャーのお声がけをいただきました。医師のアルバイト事情として、各病院が救急車を断らない全診療分野…

異動後の初仕事は「選択と集中」の徹底かな?

「常勤医2名で入院患者25名ですね」という言葉に唖然としたのが、2022年7月15日の話……。8月1日から新しい職場に赴任予定ということで、診療体制がどうなっているのか聞いたところ、上記の返事が返ってきたのだった。筑波大学附属病院 病院総合内科では、専攻…

時に恋しい濃厚ディスカッション

自分は世間的には感染症科医と認識していただいているようだが、実際のところは6年間の医師生活のうち感染症診療に専従していたのはたった1年間に過ぎない。しかし、この1年は自分の中に「専門家、プロフェッショナルとは何ぞや」というイメージを醸成するに…

心電図オンチによる心電図学びなおし反省会

この間ブログでも書いていたように1か月くらい前から心電図を学びなおしていたのだが、ようやく自分でも納得のいく仕上がりになってきた。回診の時に心電図を議論することが多々あるのだが、パッと心電図が提示された時に注目するポイントがだいぶ増えたよう…