つくばホスピタリストの奮闘記!

つくば市在住の感染症内科医・総合内科医によるブログ。臨床現場での雑感、感染症などの話題、日常生活について発信します。2019年は東大の感染症内科、2020~2022年は筑波大の病院総合内科に所属、2022年8月からは東京医大茨城医療センターの総合診療科で臨床助教をやっています。ここでの記載内容は個人的見解です。

忙しいんだか、忙しくないんだか

年度が変わり、病院総合内科の体制が大きく変化した。このことは前々から繰り返しこのブログでも書いてきたことではあるのだが、年度が始まってからGWに差し掛かるまでのこの3週間の変化は、病院総合内科はじまって以来なのかもしれないと感じている。規模的…

資本主義下のchoosing wisely

産業革命以来、世界は主に資本主義というシステムによって動かされている。正確に定義する自信が全くないのでWikipediaを貼り付けると、資本主義とは「生産手段の私的所有と利益のための運用を基本とする経済システム」とのことで、「私的所有」と「利益」が…

シロスタゾール

病院総合内科で患者さんの治療方針を決める際は、なるべく海外文献をもとにディスカッションすることを心掛けていますが、そうしていると日本で古くから行われているけども海外では基本的にやらないようなプラクティスが目に付くようになります。そのうちの…

新しい診療科の形を再考してみる

「総合診療科」や「総合内科」という部門が何をやっているのかは、医師以外に対してはなかなか説明しがたいところだなと思います。最近「ドクターG」などの番組を通じて、専門科を横断して難しい病気を診断するところなんだと世間一般から思われているような…

競争ぎらい(ゆとりミレニアル世代の代弁)

今週の1冊。値段が価値を歪め、社会を壊した —— まぁその通りかと思います 論文を毎朝10本読み込んで、得た知識を実臨床の中で検証していく。臨床研究を矢継ぎ早に実施して、ひたすら論文を書いて出していく。抗菌薬のレクチャーなど、教育もバッチリやる。……

ひとくぎり

突然ですが、最近やって面白かった腸球菌の研究のお話をさせてください。腸球菌は、名前の通り人間の腸の中に生きている丸っこい細菌です。人間の腸の中にはほっそりとした大腸菌など他の細菌もたくさんいて、腸球菌は比較的マイナーな方の細菌ではあるので…

メダカの越冬チャレンジが成功したようです

我が家では200尾のメダカをベランダの池で飼育している。もともとは3年前に4尾くらいだったのが、爆発的に繁殖しては大量絶滅を繰り返して、およそ200尾くらいで安定している。メダカを屋外飼育していると、必ず問題になるのが冬越しである。家の中に入れて…

我が家の世界史ブーム

少し前から、我が家では世界史ブームだ。自分がCNN10を欠かさず視聴するようになったのは1~2年前くらいからだと思うが、妻もある日を境に日本のニュースを見なくなり、代わりにCNN10を見るようになった。妻は妻で、自分とは独立に日本のニュースの質の低さ…

大動脈解離によるCRP上昇 — 治療対象か、否か

最近、病院総合内科からInfectious Diseases Now(旧:Médecine et Maladies Infectieuses, IF 2.152)に臨床研究をひとつ出しました。もともとはoriginal articleとして出すつもりでしたが、テーマが新しくてdiscussionを充実させづらかったという事情もあ…

唐突ながら、チューリッヒ

病院総合内科は、これまで臨床研究、症例報告、オピニオンなどを数多くpublishしてきましたが、その多くが単施設、それも病院総合内科だけに限局した内容でした。国際共同研究どころか、国内多施設研究すらやってこなかったわけです。ところが、実は現在、病…

師匠探しにはタイミングがある

人生は一生勉強。勉強という言葉に「面倒臭い」とか「だるい」とかネガティブなイメージを持つ人もいるとは思うが、実際に手を動かし始めてみるとドパミンが出てきて勉強する前の気怠さもどこかに飛んで行ってしまうものだし、新しい知識を習得して新しい考…

ビジョナリー・カンパニー

大学生時代からかなり強く意識していたものの、なかなかきっかけを掴めず読めずにいた本をついに読むことができた。「ビジョナリー・カンパニー」—— ぼくと同世代の医者で東大医学部出身なら、某先生の愛読書ということで知らぬ者のいない本だと思う。この某…

通訳と報酬

およそ2か月前から、とある言語を毎日勉強するようになりました。大学病院である関係上、筑波大学附属病院には他の病院が診たがらないような事情を抱えた患者さんが集まってくるのですが、日本語も英語も話せない患者さんが入院していて、その人の話す言語に…

とんかつ漫遊

日々玄米を食べるくらいに健康意識の強い自分にも、不摂生がふたつある。ひとつは、珈琲。珈琲をたくさん飲むと大腸癌を予防するかもしれないと言われてはいるが、あまりに飲み過ぎると胃に悪い。それでも1日に3~4杯は飲んでしまうので、慢性的なカフェイン…

新型コロナワクチン、3回目

「新型コロナワクチン」と聞くと、用語的に適切なのか気になってしまうのは感染症内科医の性質ゆえだろうか。「インフルエンザワクチン」とか「風疹ワクチン」と言うので、「病名 + ワクチン」という呼称は間違っていないのだろう。しかし、「肺炎球菌ワクチ…

舅との対話

現代日本において「反知性主義」という言葉をよく見かけるようになったのは、東日本大震災のあった2011年以降のことだったように記憶しているが、読書する人がめっきり減ってしまったことには寂しさを感じている。本気での会話を楽しむためにはやはり、背景…

なぜ哲学書を読むのか

新年早々ではあるが、新型コロナウイルスもオミクロン株への変異を遂げて日本で流行し始めている。蔓延防止措置法が再度出され、緊急事態宣言も今後出されるだろうから、この年末年始が外出などのできる最後のチャンスだったと言っても過言ではないだろう。…

専門家は事態の裏で何をしていたのか

今年もコロナ禍が完全には収束することなく終わりを迎えようとしています。自分はあまりの寒さにガタガタ震えながら家で過ごしているくらいで済んでいるので良いのですが、世界的にはオミクロン株の流行への対応が物凄くキツいようで、最近はヨーロッパの先…

ピーターの法則

東京に出稼ぎに行ってなんか変なものを見てしまった…… むかしから能力について疑問に思っていたことが2つある。ひとつめ、ロールプレイングゲームなどで強敵として立ちはだかってくるキャラを倒して仲間にすると、今度は異様なまでに弱体化していて全く役に…

臨床現場における効力感をどう引き出すか

臨床現場におけるティーチングはなかなかに難しい。特に自分自身が教える立場であり、かつ教えられる立場であるからこそ、その難しさを肌身で感じるわけである。自分がちょうど30歳手前であり、教える相手の年齢が大体20~25歳。自分も後輩も子供ではないわ…

医者が買われる時代

家に届く雑誌やチラシにはざっと目を通すことにしている 正直なところ契約した記憶が全くないのだが、大学5年生あたりから自分の住んでいるところに毎月民間医局からDoctor's magazineなる薄めの雑誌が送り届けられている。この雑誌には毎号臨床推論の漫画が…

派を越えて —— 思考訓練としての <宗教>

これまでも何度もこのブログで称賛してやまないのだが、つくば駅前の市立中央図書館は学問への玄関口といった趣きで、足を運ぶ度に面白い本に出会うことができる。面白い本に出会うということは、面白い世界へと誘われるとも言い換えることができる。そんな…

ぽっどきゃすと? それは美味しいのかい?

コロナ禍をきっかけとして、生活のあらゆる面に電子媒体が入り込むようになってきた。1日を過ごす中で画面をのぞき込んでいる時間も飛躍的に増えた気がしていて、特にスマホの「画面を見ている時間は先週から10%増加しました」という表示を見ていると「自分…

祝! 病院総合内科に新しい仲間が増えます!!

実は亀田総合病院に憧れているところが結構あります(初版です) 初代科長が栄転されてから病院総合内科は新体制に移行しているわけですが、嬉しいことに来年度から病院総合内科フィックスの後期研修医の先生が2人入ってくれることになりました。病院総合内…

グルテン・フリー・ダイエットはカラダに良いのか?

芝生の匂い × 屋台の匂い = 少年時代のワクワク感覚! @流山でお仕事後 自分は胡散臭い健康情報が大好きである。なんというか、全く信用していないのだけれど、健康情報を見かけるとつい自分の生活に取り入れて役に立つかどうか検証してしまう癖がある。こ…

メダカの越冬チャレンジが始まりました

辛いものを食べると幸福を感じるらしいと聞き、中辛で食べた @柏の葉 最近とても寒くなってきていて、ついに自分も半袖を諦めて長袖を着るようになった。そんな時期に差し掛かると、毎年困る問題がひとつある。メダカの越冬である。5年ほど前に4尾のメダカ…

漢方薬は面白いんだぞ!?(総論っぽい何か)

半年ぶりの流山おおたかの森、一層栄えていました……(つくば駅からTx 10~20分) おおたかの森に来ると必ず食べるAgoraのハンバーグ。大好きだー! 今日はItoの数多ある趣味のうちのひとつ、漢方の話をさせてください。漢方薬と聞くと、「本当に効くのか分か…

医療現場におけるシフト制の問題

本日の質問:毎日お米をタッパーで持参しているのはなぜ? 回答:職員食堂でご飯1杯にかかる70~80円が勿体ないから。1か月でだいたい1,500円くらいの節約になるので、月3回くらいは休日の1,000円ランチを1,500円ランチに格上げできてちょっぴり幸せになりま…

医療現場でのロジックの限界

最近よく聞かれる質問:意外と少食ですか? 回答:Yes. 食後の眠気がしんど過ぎるので食事量は控えめ。同じ理由で、お菓子も自分から購入して食べることは殆どない。 因みに大学時代の同期で「天才」と呼ばれていた某氏は茶碗7-8杯の白米を食べるのがデフォ…

ナッジとスラッジ

行動経済学という学問分野がある。人間の行動様式にはクセがあり、例えば夏休みの宿題を先延ばしにしてしまったりとか、災害に巻き込まれた時に大丈夫と高をくくって手遅れになるまで自宅に待機してしまったりとか(現在バイアス)、そういったものを扱う学…